なぜねじは右回りなの?ねじの歴史

なぜねじは右回りなの?ねじの歴史 1

DNAが右巻き螺旋であるように、ねじも大体は右巻き螺旋ですね。

6つの単純機械(物を動かす道具)といえば、

・ねじ(screw)

・くさび(wedge)

・てこ(lever)

・滑車(pulley)

・輪軸(wheel and axle)

・斜面(inclined plane)

ですが、中でもねじは真ん中に軸があって、その周りにつるまき状にねじ山をつけただけの単純極まりない道具です。

今でこそ標準サイズで出回ってて、時計回りに回すと締まって、反時計回りに回すと緩まる構造が定着してますが、これって割と最近の発明だって知ってました? 一見単純な発明。だけどこの誰でも容易に想像がつく発明に辿り着くまでには実に2000年もの長い年月がかかったのでした。

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ねじを発明したのはプラトンの友人で、ターレスの名士アルキタス(Archytas: 428 BC - 350 BC)とされます。時代は紀元前400年前後。

ねじの持つ、ものを繋ぎ合わせる能力、水を汲み上げる能力(水ねじ)に最初に気づいたのは、後世のアルキメデス(Archimedes: 287 BC - 212 BC)たちでした。

手でカットしたねじを最初に開発したのはローマ人です。使った素材は銅、銀。初期の頃はオリーブオイル絞り、運河灌漑、船底の汚水排水といったものに、あらゆるサイズのねじが使われました。 もちろん、ものを繋ぎ合わせる用途でも使われていました。

しかし初期のねじはいかんせん全部ハンドメードだったので、ねじ山が正確なことも滅多になくて、職人の好みで寸法もまちまちでした。

それを変えたのが16世紀半ば、ネジ切り旋盤を発明したフランスの宮中数学者ジャック・ベッソン(Jaques Besson)です。

しかし普及したのはそのまた100年後。1797年に今の実用的なねじ切り旋盤を実現したイギリス人のヘンリー・モーズリー(Henry Maudsley)の出現を待たなければなりません。一介の鍛冶師として頭角を現し「工作機械の父」と呼ばれるまでになったモーズリーの発明のお陰で、ねじ山もものすごく正確に削れるようになったのですね。

なぜねじは右回りなの?ねじの歴史 2

「一分の狂いも許さん」という風貌のモーズリー

ただ、ねじのサイズとねじ山の仕様にはまだ統一基準はありませんでした。これを解決したのがモーズリーの工場で働いて修行したジョセフ・ホイットワース(Joseph Whitworth:1803 - 1887)准男爵です。氏は1841年にねじ統一規格を提唱する論文をイギリス土木学会に発表しました。提言の内容はシンプルです。

1. ねじ山の角度は55度で統一

2. ねじ山は1インチあたりの山数を統一(但しねじ直径に応じて山数は変える)

まあ、この頃には「右巻きでねじは締まる」という法則は既に定着していたようですけどね。どうして右巻きなのか? 世の中の大多数の人は右利きで(70% - 90%)、右利きの人は時計回りに回す(回外)方が力が入るから、というのが定説です。

ともあれホイットワースのアイディアは大好評でたちまち世界初の国内ねじ統一規格誕生と相成ります。俗に「ウィットねじ(British Standard Whitworth: BSW)」と呼ばれる規格(ウィットねじなんだから人名もウィットウォースで統一した方が本当はいいんでしょうけどね)。こうして谷底が丸くて、ギザギザのピラミッド型に山が入るねじが、1860年代までにイギリス全土から、遠くはアメリカ、カナダでも採用されたのです。

しかしながらウィットねじは「3種類の切削と2種類の旋盤がないと作れない」ため、製造は容易ではありませんでした。

このウィットねじ(BSW)よりもっとラクに製造できる規格はないものか、と考えた男がいました。アメリカ人のウィリアム・セラーズ(William Sellers:1824-1905)です。1864年に氏が発明したのは、谷底も平らなら、山も平らなねじ山規格です。たったそれだけの違いなのに、これなら「1種類の切削と1種類の旋盤だけ」あれば作れます。早く安く簡単に製造できるセラーズねじは米国で人気を呼び、鉄道会社の規格にも採用されます(うち2社はちょうど大陸横断鉄道を建設中だったことも普及を加速した)。

英国はしばらくウィットねじで留まってました。それでも無問題だったんですが、そのうち第2次世界対戦が勃発し、イギリス、カナダ、アメリカの軍が共同で機械と部品を出し合う流れになって、やっぱり規格がふたつではマズいということになりました。そこで1949年、3国で話し合って統一することで合意したのが「ユニファイ規格ねじ(Unified Thread Standard)」、インチねじで山の角度60度のねじ規格です。

やがて英国は1960年メートル法を導入し、国際単位系(International System of Units:SI)に移行、これに合わせてISO(国際標準化機構)が1958年に制定した三角ねじ山形「ISOメートルねじ規格」を採用します。これも山の角度は60度です。

現在、世界では右回りのメートルねじが標準です。まあ、アメリカでは未だにねじの約60%はユニファイ規格のインチねじのまんまですけどね。

【おまけ by 訳者】

・日本人が初めてねじを見たのは、種子島の火縄銃の後ろ。ねじ模作といえば若狭姫ですが、あれはどこまで実話なんでしょうね?

Image: Shutterstock/Joao Seabra

*本稿はTodayIFoundOut.comメルマガFacebook YouTube)初出の原稿を許可を得て再掲しました。

Melissa - Today I Found Out - Gizmodo US[原文

(satomi)