人工甘味料は体にいいの悪いの、どっちなの?

人工甘味料は体にいいの悪いの、どっちなの? 1

ダイエットコーラ、無糖スナック…ウェスト周りを気にしたくない甘党にとって人工甘味料は救世主ですけど、パデュー大学のスーザン・スウィザーズ教授のように「ダイエットソーダ飲む方が太る、体に害」って言ってる人もいるし…ねえ、どっちが本当なの? 

どこまでがデマでどこからが実証データなのかさっぱりわからない人工甘味料。一度きっちり整理しておきましょ~。

人工甘味料って何?

人工甘味料とは、厳密には「ノンカロリー人工甘味料(NAS:non-caloric artificial sweeteners)」と呼ばれるものです。砂糖が高カロリーなのに対し、カロリーはゼロに近く、ゼロのものもあります。

米食品医薬品局(FDA)が認可している人工甘味料は、アセスルファムK(acesulfame-K)、アスパルテーム(aspartame)、アドヴァンテーム(advantame:今年5月に認可されたばかりの新顔で、甘みは砂糖の2万倍)、サッカリン(saccharin)、スクラロース(sucralose)、ステビア(stevia)の計6種。

一番広く使われているのはサッカリンとアスパルテームですが、後味の悪さをカヴァーするため他の人工甘味料と一緒に使われることが多いです。たとえばダイエットコーラとコカ・コーラ・ゼロはどちらともアスパルテームとアセスルファムKを一緒に使ってます。

FDA認可の6種の中身をダッと見ていきましょう。

サッカリン: アメリカのレストランには必ずと言っていいほどある「Sweet & Low」も、シュガーレスガムの草分けトライデントガムもコレ。甘みのもとが砂糖一辺倒だった時代は1878年、ジョンズ・ホプキンス大学の化学者コンスタンチン・ファールバーグ(Constantin Fahlberg)が日がなコールタール誘導体を触って帰って手を洗わないでパンを食べ偶然サッカリンを発見した時に終焉を迎えました。サッカリンはヴィクトリア時代後期から市販化され、現在でも広く使われています。「ダイエット」と名のつくものにはほぼ全部入ってると言ってもいいぐらいです。

FDAの種別では人工甘味料で、甘みはサクロース(食卓用のお砂糖)の300倍ありますが、栄養エネルギーはゼロです。

なぜ甘く感じるのか? 原因は科学者の間でもまだよくわかっていませんが、どうもサッカリンの分子は味蕾の受容体部位で甘みを感じとれるカタチらしいんですね。「その証拠に、このカタチを少しでも変えると(たとえば窒素のHをメチルに変えたり)甘みはたちどころに知覚されなくなる」のだと、エルムハースト大の化学のヴァーチャル教科書にはありますよ。

サッカリン特有のちょっとメタリックな後味もたぶん、この分子のカタチで説明できるのかも。

アスパルテーム: コカ・コーラZERO、ペプシマックス、Orbitシュガーレスガムに入ってるのがコレです。市場デビューは1980年代後半、一連のマウス実験でサッカリンと膀胱がんとの関連性が取り沙汰された反動から広まりました。サッカリンほど甘みは強くはなく、砂糖のたった200倍。エネルギーもゼロではなく、1グラムあたり4 kCalあります。が、微量でソーダ1缶を甘くできるので、ノンカロリー人工甘味料(NAS)に区分されます。味覚の構成としては、サクロースに最も近いとされます。

アセスルファムK: 専らサッカリンやアスパルテームの補佐で使われる人工甘味料。「サネット(Sunett)」のブランド名で知られます。

アドヴァンテーム: 最近登場した人工甘味料。まだ市場には出回っていません。

スクラロース: 通称・スプレンダ。

ステビア: 天然の植物から抽出する甘味料。NOWフーズのスレンダースティック(無糖ドリンク粉末)はコレ。ビタミンウォーターは今年ステビアに切り替えたんですがファンから後味が不評で元に戻しました

以上6種はいずれもFDAの安全性試験をクリアした甘味料で、病気・疾患リスクの広い領域を網羅する研究がおのおの100以上行われています。 にも関わらず、人工甘味料には昔から健康上の不安が常につきまとってきました。

「1980年代から人々はずっと人工甘味料が体に害になるのではないかという不安に怯えてきました」と、冒頭で紹介したスウィザーズ教授はScience Newsに語っています。「フェイクのケーキを食べて、それで平気なわけがないってみんな思ってきたんですね」。いかんせん研究で実証しようにも結果はマチマチで、「人工甘味料の会社が出資した研究では健康にいいという結果になるし、砂糖の会社が出資した研究では健康に悪いという結果になる」、一筋縄ではいかないのだといいます。これは日本でも同じかもしれませんね。

【朗報】がんにはならない

「ダイエット」食品でお馴染みのサッカリンは登場以来、禁止されたり、禁止されかかったり再検査で結果が二転三転してきた波乱の歴史があります。1908年には米農務省トップの化学者であるWiley博士がセオドア・ルーズベルト大統領にサッカリン禁止を訴えて首になり、キャリアを失った黒歴史もあります。大統領はそのとき博士にこう言い返したと伝えられます。「サッカリンが体に有害だとは、たわけたことを言いよる。Rixey医師に每日もらってるこのワシはどうなるのだ」。天下のテディ・ルーズベルトがなんともないと言ってるんだからなんともないのだ、と。

それだけならまだしも、サッカリン不安がピークに達したのは1970年代、一連のマウス実験で膀胱がんとの関連性が指摘された時です。論文が発表されるや否やアメリカ人は集団ヒステリーに陥り、米議会は安全性調査を義務付けるとともに、調査を行う間、サッカリンを含む全食品にこんな警告の表示を義務づけました。「この食品は健康を害するおそれがあります」

安全性調査の結果、サッカリンを大量に常用すると確かにマウスの膀胱がん発症率は高まることが確認されましたが、人間には誘発は確認されませんでした。この結果をもとに2000年、米国国家毒性プログラム(NTP)は政府公認発ガン性物質のリストからサッカリンを除外、翌2001年には議会決議で警告ラベル表示義務が解除されました。

アスパルテーム(コカ・コーラ・ゼロの甘味料)も、1981年にFDAの検査をパスしたにも関わらず、がん誘発の疑いがかけられてきた甘味料です。きっかけは1996年にアメリカ国立衛生研究所(NIH)が論文で、1975年から1992年までの間の脳腫瘍発症率の上昇にアスパルテームの使用(ほぼ同時期に始まった)が絡んでいる可能性があると指摘したこと。しかしその後、アメリカ国立がん研究所(NCI)の統計を調べてみたところ、神経系がんの増加傾向が始まったのはそれより2年前で、アスパルテームが市場に現れる20年近く前だったことがわかりました。

さらに、発がんリスク増加で最も大きな影響を受ける年齢層は70代以上の高齢者で、その多くはアスパルテームとまったく縁のない人たちだということもわかってます。そんな次第で、FDAのサイトでもアスパルテームのことは「FDAがこれまで認可した食品添加物の中では実験・調査を最も徹底的に行ったもののひとつ」であり、これまでの記録を見る限り安全性には「一点の曇りもない」と書いています(2007年当時)。

【悲報】でもたぶん体には良くない

ただ、直接の死因ではないにせよ、思わぬ方向で害になることもあるようです。Nature9月号掲載の新しい研究では、 スクラロース(スプレンダ)を大量摂取すると胃腸のバクテリア(細菌)の働きに悪影響が出て、肥満の原因になり、糖尿病リスクが高まることがわかっています。肥満・糖尿病対策で糖分カットしてる人は「な、なんだってー!!!」ですよね。

デューク大学が毒物学・環境衛生の専門誌に発表した研究成果でも、スプレンダを大量摂取するとげっ歯類の腸内バクテリアの微生物叢に悪影響が出るという同様の結果が出ています。

2012年に臨床栄養学の専門誌に掲載された研究でもやはり、ノンカロリー人工甘味料(NAS)を摂取したヤングアダルト(18-30歳)はメタボ(代謝系)リスクが上昇するという結果。2008年に肥満専門誌に掲載された論文でも人工甘味料の飲料を摂取すると長期的には肥満を抑制するどころか太る、という結果が出ています。

じゃあ、人工甘味料は必ず太るのかっていうと、そういうことでもないんですよね。2010年の研究では、食事の直前には普通の砂糖よりステビアやアスパルテームを摂取する方が食事の量は減ることがわかってます。2008年の肥満研究とは逆に、2012年に医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに載った研究では、子どもの場合、人工甘味料ドリンクだけ飲んだ子より砂糖のドリンクを飲んだ子の方が18ヶ月後には太っていたそうなので、全部ひとくくりに効果ゼロと断定するのも無理がありそう。

本当に科学的検証も矛盾する結果だらけで、ノンカロリー人工甘味料(NAS)が不活性で体にいいと言ってる人もいれば、病気の元だと言ってる人もいる。絶対と言い切るには、もっと研究が必要みたいですね。当座はメキシコのコーラ(砂糖)でも飲んで待つとしましょうか。

Lead image: Konstantins Visnevskis/Shutterstock

source: Science News - Saccharin - ChemHerithage - The Economist - Elmhurst College - Time - NCI - Wiki 1, 2

Andrew Tarantola - Gizmodo US[原文

(satomi)