冷凍卵子の福利厚生で喜ぶのはまだ早い。成功率は38歳でたったの2-12%

フェイスブックに続きアップルも来年から卵子冷凍保存に保険適用を決め、「ワーキングウーマン争奪戦もそこまできたか!」、「卵活が当たり前になったね!」と盛り上がる中、「健康な若年女子に卵子冷凍保存を推奨することは責任ある医師のすべきことではない」とNYタイムズが警鐘をガンガン鳴らしてますよ。

卵子冷凍はもともと、化学療法や放射線治療を施す前にがん患者さんらから卵子を採取・凍結することで妊娠の可能性を残すために開発された技術。アメリカでは10年ぐらい前から婚活・妊活に振り回されたくない女性の間で注目され始め、近年は卵子の老化を気にせず仕事に打ち込みたい女性が高齢出産期がくる前に卵子を冷凍する「卵活」が新たな選択肢として盛んにとりあげられています。

でも解凍卵子の出産事例はまだものすごく少なくて、安全性と効果を裏付ける実証データも不足しているため、一般の人まで広めるのは時期尚早という慎重な意見も一方にはあるようです。以下は、NYタイムズが報じた生データ。

ホルモン注入(卵子採取は1回約100万円。1回で沢山採取できるよう排卵誘発ホルモンをお腹に注射する)と卵子採取が女性に与える健康上のリスクを追跡したデータもなければ、冷凍の工程で卵子に吸収される化学物質の影響も不明であるし、それが細胞の発達に毒かどうかを知る人もいない。入手できる中で最も包括的なデータによれば、最新の瞬間冷凍プロセスを使った場合、生児出生の失敗率は30歳女性で77%、40歳女性で91%だ。

アメリカ生殖補助技術学会(Society for Assisted Reproductive Technology:SART)のデータでは、38歳女性が冷凍卵子1個で生児出生に至る成功率は2~12%とある。医療上の理由なしで冷凍保存する米国の健康体の顧客の平均年齢は37.4歳なので、これは見過ごせない知見だ。2011年の1年間で38歳以上の女性が冷凍卵子で出産したベビーは世界全体でも推定10人だった。

アメリカ生殖医学会(American Society for Reproductive Medicine:ASRM)がまとめた卵子冷凍ガイドラインでも、卵子冷凍に頼るのは医学上の必要に迫られた場合(がん治療の女性患者など)だけにすべきだと明確に述べられている。同学会の卵子冷凍実務委員会が2年前に卵子冷凍に関する論文981本を精読したところ、安全性と効果のデータが盛り込まれた論文はわずか112本であった。このようにクオリティーの高い研究が不足しているため、同学会は2012年、卵子冷凍保存はもはや「実証段階の技術ではない」という公式見解を示したわけだが、その際にも「出産を遅らせるための技術として卵子冷凍技術を宣伝することは、女性に間違った希望を与える行為に他ならない」と断っている。

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ブルームバーグ・ニューズウィークが4月の巻頭特集(右)で伝えた現場の医師たちの推計では、解凍卵子で生まれたベビーは全年齢で累計5,000人、解凍卵子で授かる確率は大体5分の1らしいですけどね。卵子の遺伝子分析を行えば着床の確率は上がるんだけど、それをやると30万から40万円またまた余分にかかって、しかもまだ100%ではないのだとか。

冷凍卵子で米国有数の歴史と規模を誇るニューヨーク大学病院生殖医療センターもハリケーン・サンディのときは全館停電で冷凍卵子のタンクを小型自家発電機の部屋に移動させて急場をしのいだんだそうですよ。

昨春WSJに「私が卵子冷凍した理由」という記事を書いてセンセーショナルを巻き起こしたSarah Elizabeth Richards記者も、今回は過信されすぎてると感じたのか、NYタイムズの社説で「冷凍卵子はアテにするな」と五寸釘刺してます。

いくら会社の保険が効くようになっても、絶対成功するという保証はどこにもありません。ダメ元ぐらいの気持ちがちょうどいいのかも。

source: NYT

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(satomi)