新タイプのSNS「Ello」が広告ゼロでいられる理由

2014.10.31 12:30
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会社形態もニュータイプ。

広告ゼロ」を信条とするSNSのElloは、米国バーモント州発のスタートアップです。上の絵はその印象的なロゴ。このネットの世界で、広告収入なしで運営するなんて長期的には無理じゃないの?と思う人もいるかもしれません。でも彼らは、それを実現するための策をすでに講じ、その計画も発表しました。嘘みたいに思われるかもしれませんが、でも嘘じゃないはずなんです。

広告ゼロをうたう企業はこれまでにもありました。でも、たいてい成長するにつれてだんだん広告が入ってくるんです。だからElloだって約束を破って、結局広告を売り始めるんじゃないかって思われても無理はありません。

でも、スタートアップの経営に詳しいUnion Square Venturesのパートナー、Albert Wenger氏によると、そうはならないようです。Elloは最近、会社を「Public Benefit Corporation(PBC、Benefit Corporationとも)」にしたと発表しました。PBCとは、彼らがブログで説明したところによると、「米国(訳注:うち一部の州)における営利会社の一形態で、ただ投資家のために利益を出すのではなく、社会全体にとっての便益を生み出すために存在する」組織のことです。

Elloの設立許可書には、同社が広告やユーザーデータの販売からは絶対にお金を稼がないことが明記されています。しかももしElloが会社ごと売却されても、次のオーナーもこの条件に従う必要があります。

上記のWenger氏はこのPBCの創設を求めて活動してきた人物で、この方法で会社を作るということは、そのミッションが設立許可書に直接書かれるということだと言っています。設立許可書は文字通り会社が設立される基盤であり、投資家もそれに最初から同意しています。「設立許可書は、重要な企業文書です」と彼は米Gizmodoからのインタヴューで語りました。「それは、単に壁に貼っておくものじゃないんです。」

Elloを含めてPBCが設立許可書を変えたくても、それには株主の90%の承認が必要です。つまり、Elloが回れ右して広告やユーザーデータの販売をしたくなったら、Elloにお金をくれた人10人のうち9人の了解をとらなきゃいけません。そして今Elloに出資している人たちは、広告のないElloにこそ新たなSNSとしての可能性があると思っているはずです。

そんな企業の作り方ができるなんて新鮮ですね。これまで、寮の部屋からガレージプロジェクトへ、そして巨大ドルビジネスに成長したあらゆるSNSは、成長につれて会社のミッションが劇的に変わっていきました。でもElloは法的に違うタイプの会社なんです。同様の企業としては、KickstarterEtsy、そしてメガネブランドWarby Parkerなどがあります。最近PBCが注目されているのは、表向きは顧客重視をうたいながら裏側では株主の利益を追求している株式会社のあり方に対するアンチテーゼなのかもしれません。


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日本でもじわりじわりと、少しずつ広がってきている印象


そんな従来の会社といえば、ツイッターが良い例です。2009年、まだ世界がこのマイクロブログサービスの可能性に気付き始めたばかりの頃、共同創業者のビズ・ストーン氏は「ツイッターには広告を入れない」と公言していました。彼はあるカンファレンスで「広告を入れたくない理由はいくつかある。ひとつは、僕らにとってそれほど面白くないってことだ」と言っていました。「ツイッターには広告のことをわかっている人も、広告の仕事をしている人もいない。だから、広告を入れようと言い出したり、外から言われてもそうしようとする人はいない」

でも結局、ツイッターは広告ビジネスを知っている人物を見つけてきました。ストーン氏の上記の発言はややオフレコ的だったのですが、その後彼は公式ブログで、投資家への配慮からなのか、「広告もそんなに悪くない」と態度を変えました。そして2年ほどすると、ツイッターは広告を売り始めました。そして今、そこには大量の広告が流れ、さらに増えようとしています。

とはいえ、Elloだってどこかの時点でお金を稼ぐ必要があります。インターネット最大の妄想は、すべてがいつでも無料ってことです。ただ、彼らがどうやって稼ぐのかはわかりません。前出のWenger氏は、Githubのようにプライヴェートグループからお金をもらうのもいいかもと言っています。彼は「それがプライヴァシーにお金を払う良い例だ」と言っています。「私がElloだったら、まずそれを試すでしょうね。」

もちろん、今までいろんなSNSが広告なしで便利なサービスをしようとして、挫折してきました。事業として立ち行かなくなるか、ツイッターのように従来とは違う(でも結局は広告である)広告手法を編み出すか、どちらかでした。すでにElloのアカウントを持っている企業も、たとえばNetflixやウォールストリート・ジャーナルなどがあります。でもだからって、Elloがいつか約束を破って広告を載せるようになるとは限りません。


image by Ello
source: Ello, Continuations

Adam Clark Estes - Gizmodo US[原文
(miho)

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