90年生まれのアーティストtofubeatsさん「URLが現実をエンパワーしてるのが今」

2014.10.01 19:00
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10月2日(トーフの日)にニューアルバム「First Album」をリリースするtofubeatsさんは90年生まれの23歳。中学生のころよりDTMとネットに親しみ、国内最大級のテクノフェスであるWIREに史上最年少出演を果たした経歴を持つアーティストです。さらに大学に通いながらリリースした「水星」はメジャーレーベルのバックアップなしでは異例のiTunesの総合ランキングで1位を獲得。昨年、ワーナーミュージックと契約を果たし、森高千里さんや藤井隆さんとのコラボレーションでも話題をかっさらった時代の寵児的存在でもあります。

常に「今、欲しい音楽」を与え続けてくれる、そんなtofubeatsさんに話を伺ってきました。


ネットはリアルを加速させてくれるもの


マルチネレコーズのイヴェント「東京」でのアクト(2014)


ギズ:現在でも自宅からUstreamでDJのストリーミングをされたり、しかも15歳のときには磯部涼さんとイルリメさんのネットラジオに音源を送って「本当に高校生なの?」と話題になったそうですが、ネット以後以前で変わったことってなんでしょう? そもそもtofuさん的にネットが始まったのはいつですか?

tofubeatsさん:中学生の時からPCをいじっていたけど、個人的には2006年くらいのYouTubeの登場ですかね。YouTubeって越境的存在で、ワールドプラットフォーム的っていうのかな…動画をそこに置いておくだけで世界中の人が見てくれるんですよね。たとえばスカンジナビアの人とか。海開けたなぁって思いましたね。


イギリスのBBCラジオで特集された際に流れたmix。海開いてる…。


ギズ:SNSはどうなんでしょう? mixiとか。

tofubeatsさん:mixiはYouTubeと違って掲示板の延長ですね。音楽やってる友達はできたし、実は今のマネージャーともmixiで出会ったんです。高校2年生の時だったので最初は断ったけど(笑)。mixiメッセージでいきなり「○○社の者ですが…」って嘘に決まってんじゃんみたいな。本当にそうだったんですけどね(笑)。

ギズ:ネットってそれこそ世界各国のプロアマ問わず、見切れないほど音楽やら動画があがってますが、この中で埋もれないようにするのって大変そうですよね。

tofubeatsさん:僕はすごくラッキーな時期にネットをやっていて。具体的に言うとP2P全盛期、マイスペ黎明期、ニコ動、YouTube、Twitterの立ち上げ時。まだ作り手のユーザが少なかったんです。

ギズ:ネットって可能性を広げてくれる一方、同時に自分の限界が可視化されてしまう気がします。たとえば「このアイディア超新しい!」って思って検索したら先人が考えてたパターンから、この人の実力には到底及ばない…みたいなものまで。

tofubeatsさん:実際、同世代に天才がいっぱいました。でもそこで残念、終了というわけではなくて、逆に掲示板で教えを請うたり、MSNメッセンジャーで曲を送って添削してもらったりフリーソフト情報の交換なんかもしてました。自分は神戸に住んでいるけれど全国各地に同世代の繋がりができていって、お互い刺激し合ってました。実際に面識なんてないのに。僕は、現実を加速させるツールとしてネットをやっていたんですね。リアルの分断ではなくて、リアルを加速させてくれたのがネットって感じでした。


ネットで音楽をやる意味


tofubeatsさん:マルチネ(※)はそんな中で生まれたんです。社長のtomadは、そのグループの中で「自分は音楽作るのに向いていない。だったら面白いものを集めて配信したい」というスタンスだったので、だったら僕たちは音楽を作ってマルチネにのっけようと思った感じです。

tomadさん


tofubeatsさん:自分より天才な人がいても100%同じじゃない。確かに遠目から見てると似てるかもしれない。でも、やっぱり最終的に突き詰めたい部分は個人で違うんですよね。マルチネみたいなコミュニティに人が集まることで自分の行くべき方向がわかったっていうか。今思うと、そこに自分を育ててもらった部分がありますね。


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マルチネレコーズ。画像クリックでサイトに飛びます。


ギズ:嫉妬したりしますか? 先にやられたーみたいな。

tofubeatsさん:それは「負け」だから仕方ないですね。ネットやってると、さっきのマルチネの話と同じように、100%自分と同じ奴なんていないっていうのがよくわかるんです。だから、他人のことがある意味気にならないっていうか。良くも悪くも自分と同じものを作れる奴はいないから。

ギズ:マルチネもそうですが、tofuさんはsoundcloudはじめフリーで音楽を配信されていますよね。フリーダウンロードってユーザとしてはありがたいのですが、でもそれはtofubeatsさんにはどうやって還元されるんでしょう?

tofubeatsさん:僕は単純に、みんなが聴いてくれて嬉しいって思います。その人の生きてる時間の中に自分の曲が入るってすごいことだから。あとあわよくば買ってくれるかもってことも考えます(笑)。自分がユーザだったら、フリーで曲を聴かせてくれるアーティストのこと好きになると思うんですよね。


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僕のばあちゃんが八百屋やってて、親子連れの子どもにみかんをあげてるんですよ。ばあちゃん曰く、「あれは子どものハートを掴むためにやってんねん。子どもから好かれたら親も来てくれるやろ」って(笑)。地でフリーミアムを実践していて、その原理に似てる。野菜は腐っちゃうので、だったら誰かにあげた方が双方嬉しいじゃないですか。ただ、音楽も腐るんですよね。もちろん古くなっても良い曲はありますが、僕らのやっている音楽にはそういうものもあるので。「音楽を流す」っていいますけど、音楽が水物だからその表現が生まれるのかなと。自分の中で新鮮でなくなるくらいならタダであげてしまった方がいい。みかんも食ってもらった方がいい


ダウンロードする音楽とモノとしての音楽



ギズ:「Don't Stop The Music」の森高千里さんとのコラボもそうですが、普段DJされるときも80年代くらいの邦楽を使っていてびっくりします。過去の作品を探すのはネットでやってるんですか?

tofubeatsさん:子どもの時に見ていたポンキッキーズに出演されていたので馴染みがあったんです。もともとはアイドルのイメージが強そうですが、僕はリアルタイムでその姿を見てないので、純粋にアーティストとして素敵だなと思ったんですよね。


藤井隆さんも子どもの時の印象が強かったんだそう。


tofubeatsさん:過去の作品は、ネットで引っ掛かりを見つけて、あとは足で稼ぐことが多いです。中古で申し訳ないんですけど、当時は高校生だったのでiTunesでも購入ボタンが押せなくて、ブックオフで買いあさりました。品揃えも90年代のものが多くて、自然と手元に懐かしいものが増えてったって感じですね。今でもレコ屋はもちろんブックオフにも行く。ただ、今はダウンロードの方がCDを買うよりも多くなりつつありますね。CDを超える月もあります。


ギズ:どうしてCDを買い続けるんでしょう? 所有のコストがあると思うのですが。例えばCDをおく場所とか、管理とか。

tofubeatsさん:4つあって、エンジニアをはじめクレジットを読むためとモノとして並べたいから。あとは、データはたまに飛ぶ可能性もあるし、なにより廃盤のものはCDで買うしかないっていう(笑)。

ギズ:音楽の価値ってダウンロードだと「弱まる」と思いますか?

tofubeatsさん:弱まるとは思わないですね。データはモノの所有とは違う別体験があるので。たとえば、iTunesで予約してると配信当日勝手にダウンロードされてる。僕は、「最近追加した項目」っていうプレイリストが好きで、自分が知らない間にダウンロードされたものからそうじゃないものまで、項目が刷新されていくのが嬉しいですね。「並べたい」願望に似ているのかな。好きな項目だけをランダムに再生できるのは、データならではの魅力。あと、配信だけの音楽があったりするわけで、それってモノになってないものを「持てて」「聞く権利を与えられた」ってことなのでテンション上がりますね。

ギズ:モノの限界を超える…みたいな?

tofubeatsさん:モノとは全然違うベクトルの所有欲を満たしてくれる感じ。だからダウンロードした楽曲で「モノ的な所有感」が欲しくなったらCD買いにいくこともありますね。


「ライヴ的な体験の音楽が来てる」って言うけれど


ギズ:ライヴとかフェスが盛り返してるっていう話をよく聞きますが、それってある意味ネットでの体験とは逆にあるものですよね。

tofubeatsさん:ネットがあるからライヴが良くなったって思います。自分の話とも重なるんですけど、ネットが現実を加速させたわけですね。ネットは電車みたいな感じで、それができたから人のやり取りが活発になるインフラ。たとえば、ライヴ会場に来た人がリアルタイムでTwitterやってるからこそ盛り上がるっていうのもあるし、地方でライヴやっても人が来てくれるものネットのおかげですね。田舎だと自分と同じ音楽聴いてる奴って絶対出会えなかったんですけど、ネットで出会って現場で答え合わせする感じ。

ギズ:現場で「Twitterの@〜さんいるの? 乾杯しましょー」っていうのありますもんね。「水星」は、ほぼ面識ない人たちがみんなで一緒に歌うのが気持ちいいです。



tofubeatsさん:そうそう。すごく一体感があっていい。だから現場がいいってなるんですよ。そういう快楽に身を委ねる方向に行ってんのかなって思います。ネットの現実加速装置みたいな側面が強くなったってことですかね。ネットをやる人が増えた結果、ライヴの方が楽しいってなった。音楽に直接お金をつかう人減ったけど、やってることは一緒。昔はレコード店だったけど、今はネットがハブになってるって思います。URLがリアルライフをエンパワーしてるっていう。それがいい。インターネット最高って感じ(笑)。





冒頭にもあるように、10月2日にニューアルバム「First Album」がリリースされます。全部ぶっ通しで視聴できるという懐の深さ。まだ予約ですが、こちらからダウンロードできますよ。これはみかん理論ではなく、あれですね味見理論。ちょっと食べたらもっと欲しくなっちゃう…。いちユーザとして、千里眼で見透かされているような気持ちになりました。


※マルチネレコーズ(Maltine Records)…2005年、当時高校生だったtomad社長と開発者syemさんによって発足されたネットレーベル。音楽は全てフリーダウンロードできます。UNITや風林会館、Liquidroomなどで数多くのイヴェントを開催。tofubeatsさんはdj newtownとして在籍しています。
source: tofubeats.com, soundcloud, youtube, ワーナーミュージック, Maltine Records

(嘉島唯)

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