アンタレスで驚くのはNASAのロケット自爆の意思決定が意外とローテクなこと

2014.11.03 08:00
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現地時間28日夕のアンタレスロケット爆発では「NASAは必要とあればロケット爆破するんだな」という部分で反応した方も多いと思います。

爆発後の記者会見でNASAは、打ち上げの何秒か後に「異常」行動が始まり、NASAの安全担当官が「フライト終了システム」なるものを発動していたことを明らかにしました。異常なまま高度を上げ過ぎても被害が及ぶので、その前に打ち上げをやめる緊急措置を発動した、というんですね。

「そんな推定2億ドル(216億円)もするもの簡単に爆破していいの?」
「秒刻みの状況でいったい誰が判断するの? 」
「どんな情報で判断するわけ?」

と、疑問が無尽蔵に湧いてしまうわけですが、それを一挙解消する記事がナショナルジオグラフィックスに出ました。タイトルは「なぜNASAは打ち上げ直後にロケットを爆破したのか?」、書いたのはBrad Scriber記者。アンタレス爆発はワロップス島の記者席で眺めていました。


判断するのは2人


なんでもScriber記者によると、NASAのロケット打ち上げでは毎回必ず2人の安全担当官にこの重大任務を任せるのだそうな。 「判断を早まっても何百億円もの研究・機材を無駄に燃やしてしまうし、壊れたまま飛行を続行すると付近住民に危険が及ぶ」、「どっちに判断を誤っても地獄」な任務を担うのが、たったの2人!

事故の翌日Orbital Sciences広報は「自爆がロケット搭載の自動システムにより発動されたものなのか、宇宙管制センターから発動されたものなのかはわからない」と言っていましたが、Scriber記者はアンタレス爆発は安全担当官がフライト終了システムからシグナルを送った後に起こったと書いてます。爆破したのは、爆破してOKなトラブル(10通りある)が検知されたから。あのまま飛んでも地球に墜落していた可能性は高いだろうし、正しい判断だったと評価してますよ。


肉眼が頼り


さて、これだけ重要な決断なんだから、クルーに囲まれてレーダーで見守ってるんだろうなって思いますよね? 違うんです。見張り要員は打ち上げ台のクルーの詰め所とはすこし離れた野外でポツネンと立って見張ってるんです、肉眼で。

打ち上げ直後の何秒かは地上に近いため木や建物の干渉があり、レーダーや他の監視システムが正確に作動しない。そのため見張り要員は木枠にガイドワイヤーを張った観測用フレームを通して打ち上げを見守る。ワイヤーの外にロケットがはみ出すと、それは軌道を逸脱している証拠なので、安全担当官2人に中断指示の警告を送り、避難するのだ。


で、ボタンはどんなもの?


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たとえばこれはスペースシャトルの自爆装置発動ボタン。発射場安全担当の舞台裏を取材して2008年にポピュラーメカニックスが書いた記事にあったものです。思ったよりレトロですね。

記事によると打ち上げ中止のコールが出せるのは最初の2分で、「発射台を発ってから異変が起こった場合、(対応に)与えられた時間は数秒だけだ」とシャトル元司令官でNASA発射場安全対策トップのBryan O'Connor氏は話してます。

さらにスペースシャトルの場合は、2分経過後も飛行禁止区域を出ると、ボタンを押して大西洋に捨てることになってました(補: クルーは高度6kmで脱出します)。


いや~人類最先端のテクノロジーの現場でまさか肉眼がこんなに大きな役割りを演じていようとは…二度驚きですねー。発射直後のロケット爆発といえば1962年には発射専用コードに1個だけハイフンの入力ミスがあったがために6000万ドル(当時)が火だるまとなり、「史上最も高くついたハイフン」と呼ばれましたが、レーダーより目の方が確かだなんて、人力も捨てたもんじゃないなあ。


top image by AP Photo/NASA, Joel Kowsky
source: National Geographic

Kelsey Campbell-Dollaghan - Gizmodo US[原文
(satomi)

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