「保育器」がダイソン・アワードを受賞した理由

「保育器」がダイソン・アワードを受賞した理由 1

これでたくさんの赤ちゃんを救えるかも。

保育器の値段ってご存じでしょうか。未熟児の赤ちゃんを寝かせる、ケースみたいなものです。あれが実は4万5,000ドル(約520万円)くらいする場合もあって、先進国ならともかく、発展途上国の病院とか助産院さんが買うには難しいものでした。そこで従来の100分の1以下の価格で手に入る保育器がデザインされ、見事ダイソン・アワードの国際最優秀賞を受賞しました。

「西側諸国は、保育器を当然のものとしています」とジェームズ・ダイソン氏も言っています。「我々は、従来の保育器の非効率的なデザインが発展途上国や災害地域でいかに使いにくいかを考えてきませんでした。」ダイソン氏は画期的な掃除機のデザインで知られていますが、若い発明家を育成するための非営利団体「ダイソン財団」を運営し、その一環として年1回実施しているのがこのダイソン・アワードです。

今年の国際最優秀作品は、発展途上国での出産に関する統計から着想を得たものです。世界保健機関(WHO)によれば、毎年1,500万人の赤ちゃんが未熟児として生まれていて、そのうち100万人が未熟児であるために起こりやすい症状、特に低体温症で亡くなっています。たとえばウガンダでは、入院する赤ちゃんの85%が低体温症です。難民キャンプだけでみると、毎年27万5,000人の赤ちゃんが保温環境の不足で毎年亡くなっています。

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そこで23歳のイギリス人大学生、ジェームズ・ロバーツさんが保育器「MOM」を作りました。MOMはふくらませて使う保育器で、小さくたためるデザインになっています。両端は固いプラスチックで、ふくらませるとアコーディオンのように広がり、中に赤ちゃんを寝かせるためのプラスチックのベッドができているという仕組みです。通常の電源のない場所でも使えるように、車のバッテリーなども電源にできるようになっています。

MOMの価格はたったの400ドル(約4万6,000円)です。ロバーツさんは最初のワーキングプロトタイプを作るために自分の車を売りましたが、ダイソン・アワード受賞によって3万ポンド(約550万円)を受け取り、このプロジェクトをさらに前進させられるようになりました。ちなみに彼の所属する大学にも、賞金1万ポンド(約180万円)が授与されます。

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ロバーツさんの保育器の他にも、発展途上国の乳児の健康状態改善を目的とする安価なデバイスはいくつかあります。たとえばCo.Existが8月に紹介していたEmbraceはスタンフォード大学の学生チームが作った保育器で、制作費はさらに安い25ドル(約2,900円)、すでに実際使われ、いくつもの賞を受賞しています。Embraceは病院だけでなく出産するお母さんたち自身もユーザーに想定していて、価格だけで比べるとMOMも見劣りするかもしれません。

ただEmbraceは、とにかく価格を安くすることに極限までフォーカスした保育器です。それに対しMOMはちょっと違う使い方を想定していて、お母さんたち本人ではなく、何百万円もの保育器には手が出せない助産院や病院がターゲットです。また単に赤ちゃんの体温を保てるだけでなく、温度・湿度コントロールもあり、さらに黄疸治療のための特殊なライトも搭載しています。

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小児科医・新生児科医のバーニー・マーデン博士は、「この保育器が役立つのは、必ずしも発展途上国だけとは限りません」と言っています。「イギリスで地域の助産院をサポートしたり、家庭での出産をフォローしたりといった使い方が想像できます。」

今年のダイソン・アワードには、他にも色々な良いアイデアが出されていました。ただこのMOMの恩恵を受ける赤ちゃんたちはこれから何百万人にも上る可能性があり、リーチという意味でそれに匹敵するものはなかなかありません。他の作品も含めたトップ20がこちらから見られるので、チェックしてみてください。

source:ジェームズ ダイソン アワード

Kelsey Campbell-Dollaghan - Gizmodo US[原文

(miho)