「オバマネット」は正しい。で、これからどうなる?

「オバマネット」は正しい。で、これからどうなる? 1

専門家は大賛成、批判は的外れ、あとはFCC次第。

アメリカのオバマ大統領が、ネット中立性をプッシュする強力な一手を繰り出しました。FCC(連邦通信委員会)に対し、ネット中立性強化のためにインターネットサービスを電話と同じ「公共サービス」として扱い、提案する声明を出したんです。一部の日和見政治家が見当違いの批判をしていますが、オバマ氏のプランは具体的だし的確です。

ネット中立性についてこれまで興味があった人もそうでない人も、大統領の自由でオープンなインターネットのプランには多少疑問を持たれたかもしれません。少なくとも、健全な一定の懐疑はあるはずです。ネット中立性をめぐる議論は長くて複雑なので、それも当然です。

ざっくり言うと、3つの疑問があると思います。ひとつめは、オバマ氏の声明が単なる政治的ポーズなのか、それとも実質的な意味があるのかということ。ふたつめは、反対派の声は聞くべきなのかということ。そして3つめは、この声明に本当に効果があるのかということです。

そこで米Gizmodoでは、何人かの専門家に聞いてみました。彼らの話によると、オバマ氏のプランは適切です。

とにかく具体的

まず3つめの疑問からいきましょう。大統領のイニシアチヴというのはそもそも政治的なのですが、良いニュースはオバマ氏のプランが実質もきっちり伴っているということです。

オバマ氏は自由でオープンなインターネットの維持を大統領候補の頃から主張してきました。さらにこの数ヵ月、ホワイトハウスはFCCのネット中立性保護に関する議論に対しアグレッシブな姿勢を強めてきました。だから大統領がこの声明を出したのもそんなに驚きはありませんでした。でも驚いたのは、それが想像以上に具体的かつ的確だったということです。

「あれはまさに、我々がずっと言い続けてきたことなんです。」オープンなインターネットを保護するための組織「パブリック・ナレッジ」のヴァイス・プレジデントで、ネット中立性のために長年戦ってきたハロルド・フェルド氏は言います。「大統領のプランは、誰もが考えていた以上に具体的です。」

オバマ氏の声明の最重要部分であり、多くの人が予想だにしていなかったのは、「インターネットを電気通信法のTitle IIの下で『公共サービス』に分類し直す」という部分です。これでインターネットが生活に不可欠なサービスとして正式に扱われるようになり、ユーザーが保護されます。この声明はまた、大統領がFCCに対し新たなルールに盛り込むことを求めているポイントを列挙しています。すなわち、ウェブサイトやサービスのブロックなし、速度調整なし、低速レーンなし、そして透明性の強化です。

ただ最後のポイントの「透明性強化」っていうのがちょっと曖昧で、このプランの中の不完全な部分の一例です。「透明性強化」とはやたら幅広い概念ですが、大統領はここでも具体例を挙げています。「消費者とISPの間の接続、いわゆる『ラストマイル』だけが、一部のサイトが特別な取り扱いを受けうる場所ではありません」と声明にはあります。その「特別な取り扱い」って何じゃと思いますが、実は今も存在しているんです。

フェルド氏いわく、これは基本的にNetflixとインターネットプロバイダーのComcastの契約みたいなもの、つまりインターネットプロバイダーがコンテンツプロバイダーを脅してお金を払わせ、その分ユーザーには高速アクセスを提供するというスキームを指しています。しかもそんな契約の存在は、ユーザーからは見えません。オバマ氏がこの点をそこまで具体的に表現していないのは、インターネット企業が将来的にどんな契約をするかは誰にもわからないからです。でも何であれ、今はユーザーから見て不透明なその手の条件をはっきりさせることには意味があるはずです。

オバマ氏の表現がここまで具体的であるというだけでも、批判的な議論もある程度退けられます。保守派の一部は「オバマはネットを過剰規制しようとしている」「そんなことしたら経済成長の崩壊だ!」と叫んでいますけどね…。

でもそんな批判は的外れです。インターネットはその設計上、自由でオープンであり、だからここまでの経済成長を可能にしたんです。インターネットという場はフラットで、革新的なアイデアを持った人は誰でもそこでビジネスを始め、成功することができます。それは非常にアメリカ的でもあります。オバマ氏は、そんなインターネットをユーザー保護と両立しながら維持しようとしているんです。ユーザーは経済成長にとって非常に重要、ですよね。

料金規制はしない

オバマ氏が声明を出して間もなく、インターネットプロバイダーたちは案の定自己弁護的な反応をしてきました。自分たちはオープンなインターネットを支持すると言いつつ、VerizonやComcastといった企業は、1934年の電気通信法でインターネットを規制するのはバカげていると言いました。1934年の法律なんて、と。でもそんな反応もバカげています。

80年前の法律で未来の通信技術を規制するのが心配かもしれませんが、大統領はそこにも配慮しています。彼の声明には、短いながらも重要な一文があります。「そのためには、料金規制やブロードバンドサービスにはふさわしくない条文に関しては控えつつ、FCCが消費者向けブロードバンドサービスを電気通信法のTitle IIに分類し直すべきだと私は考えます。」

まず、オバマ氏がFCCにブロードバンドを公共サービスとして扱うことを求めているのが重要です。電気通信法のTitle IIに分類されている公共サービスの典型なのが電話です。でもオバマ氏は、ブロードバンドインターネットに対し電話とまったく同じ規制を求めているのではありません

それが上の「料金規制やブロードバンドサービスにはふさわしくない条文に関しては控えつつ」って部分です。つまり条件さえあえば、電気通信法の一部を特定の事業者に対し適用しなくてもいいということです。

言い換えれば、80年前の法律にブロードバンドに合わない部分があるなら、そこは使わなくていいということです。たとえば電気通信法の条文には、フリーダイヤルの仕組みについて指定するものがあります。それがブロードバンドと関係ないのは明らかなので、その部分の適用をFCCが「差し控える」のは問題ありません。またオバマ氏は料金規制はしなくていいと明言しています。だからこのプランに基づいて政府がインターネットの価格を指定することはないのですが、反対派はそれを無視して見当違いな批判をしています。

電子フロンティア財団(EFF)の知的財産権ディレクター、コリン・マクシェリー氏は「大統領が『差し控え』に言及したのは非常に重要だった」と言っています。「(FCCは電気通信法の)Title IIの部分を見て、21世紀のインターネットに対し意味がある部分を確認し、それ以外の当てはまらない部分については適用を差し控えるでしょう。」

オバマ氏のネット中立性プランはアメリカにとって重要です。それは、今までインターネットが機能してきたのと同じやり方で機能するために最善の方法です。インターネットを自由でオープンに保つための規制を強化しつつ、技術の進化に柔軟に適応できます。またこのアプローチは、ユーザーを保護して企業に利用されないことも意識しています。VerizonやComcastが気に入らないのも無理ありません。

FCCが聞く耳を持つかどうか

ネット中立性をめぐる政治的議論がバカげているのは、インターネット・プロバイダー以外(またはそんな企業に選挙費用を払わせている政治家以外)は、みんながオバマ氏が言ったのと同じものを求めているということです。我々はインターネットに自由でオープンであり続け、コミュニケーションや買い物のツールであってほしいのです。オバマ氏はまた、我々がインターネット・プロバイダーの独占によって搾取されないようにしたいとも考えています。

実はアメリカにはインターネット・プロバイダーが非常に少なく、3人にひとりは選択肢がひとつしかありません。一部のインターネット・プロバイダーはその独占状態にあぐらをかいて利益を得ています。政治的にどういう立場であろうと、こんなのは良くありません。

保守派が、大統領はFCCに過剰な規制を強いているんじゃないかと心配するのはまあ理解できます。インターネットの専門家も同じことを考えています。「FCCの過剰規制には我々の多くも懸念しています」とEFFのマクシェリー氏も言っています。「我々が求めているのは必要最低限であり、それが得られればもう(それ以上の規制を)止めなくてはいけません。」

でもオバマ氏のプランが素晴らしいのは、それが必要最低限であることです。大統領に噛み付いた電話会社や反対派の政治家たちは、大統領の提案の意味がわからなかったか、何でもいいから文句を言いたかったかのどちらかです。「オバマネット」は、今あるインターネットと根本的に変わりません。でもそれによってネット中立性がよりしっかり保証され、消費者が守られるんです。オバマ氏のプランは、インターネットを箱庭にせず、基本的なサービスへのアクセスに入場料を取られたりしないこと、それを目指しているんです。

もちろん、提案しただけでは政策は実現しません。今後はFCCのトム・ホイーラー委員長たちがこのプランを盛り込んだルールを作るかどうかにかかってきます。マクシェリー氏はこう言います。「我々は法廷から明確なメッセージを受け取りました。大統領からも受け取りました。インターネットユーザー数百万人からも受け取りました。そして今委員長がすべきことは、彼らが我々の声を聞いたと示すだけです。」

ホイーラー氏がオバマ氏を無視するとは考えにくいです。委員たちもルールに投票する必要がありますが、それは結局各委員が属する政党の方針次第になってきます。フェルド氏は、このプロセスは12月にも始まるだろうと言っていますが、FCCがオバマ氏の勧めるアプローチを取った場合は法廷にかけられるだろうともしています。

だからまだまだ安心はできません。でもうまく行けば、インターネットはこれからもっと良くなっていくかもしれません。

Image by Michael Hession

Adam Clark Estes - Gizmodo US[原文

(miho)