彗星着陸機フィラエ、眠る前に生命の起源に迫るデータを送信

彗星着陸機フィラエ、眠る前に生命の起源に迫るデータを送信 1

おつかれさま、しばしおやすみ!

彗星探査機ロゼッタとともに彗星67P/チュリュモフ・ゲラシメンコに到着し、無事その地表へと降り立った着陸機フィラエ。機器の故障で着陸は100%想定通りにはできず、彗星の上で横倒しになっていました。また着陸地点が日の当たりにくいところだったため、彗星上でフィラエの電力源となる太陽光パネルで十分な充電ができず、11月15日、フィラエは電力切れで休眠状態に入りました。

そんなわけでわずか数十時間しか彗星ライフを楽しめなかったフィラエですが、その短い時間にも史上初の偉業を成し遂げてしていました。彗星表面の岩石を削り、そのデータを地上に送信していたんです。欧州宇宙機関(ESA)はフィラエが彗星表面から取得したデータをすべて受け取ったそうです。フィラエは何を見つけたんでしょうか?

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フィラエにはCOSAC(Cometary Sampling and Composition experiment、直訳:彗星サンプル採取・組成実験)なる機器が搭載されています。それは、彗星の岩石を分析して、有機分子の存在を探すための装置です。もし彗星上で有機分子が見つかれば、それは生命体、または生命の素となるものは、広い宇宙を移動して地球にやってきたとする「胚種広布説」の裏付けになりえます。

胚種広布説とは?

基本的に胚種広布説とは、生命やその大元は銀河や惑星の向こうのどこかで発生して、彗星や小惑星に乗って宇宙を旅してきたものとする仮説です。荒唐無稽なアイデアみたいにも思えますが、NASAの惑星科学者のクリス・マッケイ氏がこれをio9の記事でちゃんと説明しています。

1.地球初期の生命体の地質学的証拠は非常に早い年代、後期重爆撃期の終わりからすぐを示している。35億年前に地球上生命体がいた証拠は十分あり、38億年前でも間接的な証拠がある。後期重爆撃期の終わりは38億年前である。

2.遺伝子的証拠から見ると、全生物の共通祖先(last universal common ancestor、LUCA)はだいたい35億年前のものである(ただし不確実性が高い)ことが示されている。またLUCAは代謝的にも遺伝子的にもかなり洗練された生命体だった。

1、2からは、地球上の生命体は生存に適した環境ができてからすぐ出現したらしく、最初からかなり発達した状態だったという印象を受ける。まるでゼウスの頭からアテナが完ぺきな姿で生まれたように。

3.火星の岩は地球に移動しており、移動時の岩の内部温度では内部の菌が死滅していなかった。つまり原則として、火星から地球への生命体の移動は可能である。

4.火星には、大きな衛星ができる要因となるような大きな衝突がなかったが、もしそれがあったら地球での初期の生命発達に悪影響だった。

3と4からは、初期の太陽系では火星のほうが生命体に適していたらしいこと、生命が小惑星を経由して地球に運ばれた可能性もあることが示唆される。

5.有機分子は彗星や小惑星、星間物質に広汎に存在している。

6.彗星はその形成後すぐ、放射性アルミニウムの崩壊で発生する内部熱によって、地下水環境を持ち得たかもしれない。

7.彗星が地球のそばを通るときにはちりが発生し、地球の大気に混ざりこんでくる。

5、6、7からは、生命が星間物質内か、彗星のような小さな天体上で発生し、その後彗星のちりによって地球に運ばれてきたという示唆が導かれる。

つまり胚種広布説は科学的仮説として有効であり、今後さらなる調査が必要である。

フィラエはどうなった?

フィラエは着陸後すぐにバッテリー不足の懸念があることが発覚し、少しでも太陽光パネルに日が当たるよう角度を変えたりの対応がなされてきました。また電力があるうちになるべく多くのデータを取得すべく、彗星の地表に穴を空けてサンプルを採取、分析していました。その結果、フィラエが取得した全データは無事地球上に送信できたようです。

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以下はフィラエが休眠状態に入ったとき、ESAから出された声明です。

バッテリーがなくなって再充電に十分な太陽光もないため、フィラエは「休眠モード」に入った。長い沈黙となる可能性がある。このモードでは、全機器とほとんどのシステムはシャットダウンされている。

「沈黙に入る前、フィラエは第一サイエンスシーケンス中に集めた全科学データを送信できた」とESOCのメインコントロール室にいたフィラエのマネジャー、DLRのステファン・ウラメクは言っている。

「このマシンは厳しい条件で素晴らしい活躍をした。我々はフィラエがもたらした成功を誇りに思う。」

コンタクトが途絶えたのは世界協定時0時36分、中央ヨーロッパ時間1時36分だった。それは、ロゼッタが地平線の下を周回するため、どちらにしても通信が途切れる予定だった時間の少し前だった。

今後、フィラエを復活させるのに十分な電力を生成できる十分な太陽光が太陽光パネルに届かない限りコンタクトは不可能となる。だがその可能性は、管制官がフィラエを回転させたために高くなっており、回転によって太陽光に当たるパネルの面積が増えた可能性がある。

…というわけで眠ってしまったフィラエですが、ESAは意外と楽観的なのかもしれません。フィラエの最後のツイートはこんなものになっています。

私の彗星ライフは始まったばかりだ。新たな家、彗星#67Pについては近いうちにもっと話そう…zzzzz#CometLanding

一方ロゼッタもこんなツイートをしています。

OKフィラエ、まずは受け取ったよ。よく休んで…

フィラエは眠ってしまいましたが、ロゼッタのミッションはまだ続きますし、フィラエもそのうち復活するかもしれません。引き続き見守っていきたいです。

Jesus Diaz - Gizmodo SPLOID[原文

(miho)