フライング・ロータス来日インタビュー:新しい音楽のルールを作ることがクリエイティヴの第一歩

フライング・ロータス来日インタビュー:新しい音楽のルールを作ることがクリエイティヴの第一歩 1

世界で最も勢いのあるアーティストかもしれません。

今、音楽の世界が大きく変わろうとしています。デジタルテクノロジーが進化してきたおかげで、音楽の聴き方がより消費者のライフスタイルに合った手法に変化してきた影響は、国や文化を越えてリアルな世界まで広がっています。その変革の波にいち早く乗り、クリエイティヴなアイデアを実現させて成功しているのは、実はインディーズアーティストだったりします。

ヒップホップやジャズを織り交ぜた独特のビートミュージックと、最先端技術を駆使しオーディオヴィジュアル一体型ライヴで話題を集めるロサンゼルス出身のアーティスト、フライング・ロータスが、最新アルバム「You're Dead! 」を10月にリリースしました。アリス・コルトレーンの甥、LAビートシーンを牽引するインディーズレーベル「Brainfeeder」リーダーなどさまざまな顔を持つ彼の最新アルバムは、メジャーレーベルのバックアップ無しにも関わらず、ここ日本のiTunesメインチャート2位、エレクトロニック・チャート1位を獲得してしまったほどの勢いです。

コーチェラやSonarなど世界中の音楽フェスを巡ってきたフライング・ロータスは、12月5日に自身初の単独来日公演を行いました。ソールドアウトとなったこのライブが始まる直前の楽屋で、彼に話を伺うことができました。彼のクリエイティヴの原動力から、音楽シーンの今について聞いてきました。

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クリエイティヴなコラボレーションは常に啓示的

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ー 今日はよろしくお願いします。短い時間ですが、お時間を作って頂いてありがとうございます。

フライング・ロータス(以下FlyLo):それはiPhone 6 Plusかい? いいよな。でかいけど、ヴィデオゲームにはパーフェクトな大きさだ。

ー まずお聞きしたいのは、あなたの作品は生楽器やリアルなミュージシャンを使って制作していますが、SoundCloudやYouTube、DTMなどデジタルツールを使ったプロセスも行って、アナログとデジタルと2つの世界をつないでいますよね? 現代のミュージシャンの多くはデジタルツールに依存しがちですけど、あなたにとってこの2つの世界をつなぐことはどういう意味がありますか?

FlyLo:俺が2つの世界をミックスするのが好きな理由は、まず一つに俺のようなやり方をするアーティストがそんなに多くないことだ。それが俺にとっては楽しい。また、その方が考えが古くなったり予想可能だったり、ループに陥ることを避けられる。俺は常に変化やダイナミクスが好きなんだ。

それにミュージシャンと仕事をすると、彼らが予想もしなかった何か新しいものを持ち寄ってくれる。俺がビートをプレイしているところに誰かが音を鳴らしてくる。そんな時「ちょっと待てよ、おい。それ、最高だな」って具合に、そのアイデアがベースになって俺たちに新たな方向性が生まれてくる。

俺にとって誰かとコラボレーションは常に啓示的だ。

ー マイルス・デイヴィスが「ビッチェズ・ブリュー」を作ったみたいですね。

FlyLo:俺がやりたかったのは、あれなんだよ。あれがやりたかった。俺はマイルスがビビるような最高の音楽を作りたかった。誰かがやっていることはやりたくなかった。彼がやったこともコピーしたくなかった。彼だけじゃない。俺が影響を受けた多くのミュージシャン達がユニークと感じる音楽を作りたかったんだ。同じものの繰り返しはしたくなかった。

ー あなたの作品からジャズを発見しているリスナーは多いはずですよ。

FlyLo:本気でそう思うかい? だとしたら俺は正しいことをしているだろうな。そう願いたいね。新しいことをインスパイアすることは俺の活動の中心だからね。なぜなら俺のやることは、物事に対する反応だからだ。俺が何かに反応して作った音楽を聴いて、誰かが音楽やビジュアルを作ったり、論文を書いたりするかもしれない。この関係は興味深いな(笑)。人がクリエイティブな何かを作るプロセスを音楽でインスパイアできる立場にいるってことは。

未来的と言われるのは適切じゃない

ー あなたがライブで使うステージセット「Layer³」(名称はLayerCubed)は、ビジュアル・プロジェクションとパフォーマンスが融合した世界でも前例の無い特殊な演出で、まさに視覚・聴覚的に楽しめるイノベーティヴな音楽体験です。この世に存在しないクリエイティブな何かを体験を作るために、どのようなアプローチをするのですか?

FlyLo:未知の世界を理解しようと考えることだね。それが一番楽しいしね。今まで試したことのない何かを実験することが、最も満足感にひたれる。音楽を作る時も同じだ。例えば思いついた曲のアイデアをスマホで歌ってみる。それをミュージシャンに聴かせて、クリエイティブをキックスタートさせる。そして変化を加えて形にして予想外のアイデアが加わって曲が出来る。それが俺が人生で一番幸せを感じる時だ。

ー 何か新しいものを作る時、2−3年後を考えて作っています?

FlyLo:いいや。できる限り今この瞬間を考えるようにしている。多くの人が俺の音楽は「未来的だ」とか言っている。だけど、俺にしてみれば全てが「リアルタイム」だ。あまり未来を考えるのは好きじゃない。今思いついたことを残したい。それが一番重要だ。

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ー ライブに来る人にはフライング・ロータスをどんな風に覚えてもらいたいか考えますか?

FlyLo:俺がトライしていることを感じてほしい。本当に新しいことに挑戦しているんだ。そのためだけに一生懸命やっている。それが俺の本心だ。遊んでいるように思われたり、スタッフが代わりに全てをやってくれているように思われたくない。

ライブだけじゃなく、全ての面で感じてもらえれば嬉しいよ。この俺が作ったTシャツのデザインだったり、ロゴの位置やフォントサイズも詳細までこだわってきた(笑)。そんなこと誰も基にもしないだろうけど、それが俺には重要に思えるんだ。人にその想いが伝わってくれることを願っているよ。「細部へのこだわり」なんてことまで感じてもらえたら光栄だね(笑)。

「2016年、Magic Leap」それが未来だ

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ー 最近、テック業界やメディアの中でヴァーチャルリアリティについて議論されています。ギズモードでもVR(ヴァーチャルリアリティ)をフォローしています。あなたはVRをどう思いますか?

FlyLo:ギズモードだから教えてやるよ。俺の言うことをしっかり覚えておいてくれ。

2016年、Magic Leap

それだけだ。それが未来だ。2016年にはみんな誰もが驚愕するだろうな。世界を劇的に変えるテクノロジーだ。

ー 音楽の世界だけじゃなく?

FlyLo:ノー。全てにおいてだ。この新しいテクノロジーの話を聞いた時、誰かが俺に初めてインターネットを教えてくれた時と同じくらいの驚きだったよ。ものすごいと言う以外になんて言っていいか分からない。

ー あなたは自分の音楽にVRを取り入れる予定はありますか?

FlyLo:どんなかたちになるかは分からない。だけど俺がやる時は「ヴァーチャル=仮想的」にはならない。なぜならそれは「リアリティ」になるからだ。Augmented(拡張)されてね。現在は存在しないテクノロジーかもしれない。

このインタビューで俺が言ったことを忘れるなよ。

「音楽を作ったことあるかい?」

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ボックス付きの国内限定『You’re Dead!』インストゥルメンタル盤

ー 今の音楽の世界に足りないものは何だと思いますか?

FlyLo:お金…。十分な予算…。それは冗談だけど。俺は音楽を作曲してプレイする「ミュージシャンシップ」だと思う。今ラジオやネットで流れてくる音楽のほとんどは、単純なメロディなものばかりだ。時にはそれもいいけどね。だけど、リスナーの耳はもっといろんな音を聴くことが出来て、音楽を受け入れられると思っているよ。人はもっと自由になっていいし、それを望んでいる。

ー それはキャリアを持つミュージシャンにもそうじゃないミュージシャンにも言えることですか?

FlyLo:そういうことよりも、俺は音楽を作ったことのないやつが初めて作る音楽のほうが今は興味をそそられる。彼らの一曲目。一体何を作るか? 彼らの魂は何を伝えようとしているか? あんたは音楽を作ったことあるか?

ー 「Dr. Sampler」(BOSS SP-303)は持ってましたよ。

FlyLo:パーフェクトだ(笑)。そういう機材で作った人の音が聴きたいんだ。今の時代、誰でも音楽が作れるようになった。だけど、本当に聴いてみたいのは、音楽の作り方を全く知らない連中がトライしながら作る音楽なんだ。好奇心を駆り立てられる(笑)。

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オリジナル盤とインスト盤を収録できる初回生産のみ豪華盤CDセット

ー 多くのミュージシャンが今、無料で音楽を配信することは音楽の価値を下げる原因につながると声をあげています。

FlyLo俺もそう思うよ。絶対にそう思う。音楽はミュージシャンだけじゃなく、ファンやレーベルに支えられている。

例えば俺が自分の作品を日本でリリースする時は、ボーナストラックを付ける。俺はアルバムを完成させたんだ。ストーリーを書き終えた。ビジョンを共有した。でもボーナストラックが求められる。「曲を準備しなければならない」「配信用に曲を提供しなければならない」「無料で配信しなければならない」とかは全て似たようなことだな。作品が完成している事実に関係なくだぜ。

金じゃないんだ。音楽の消費の問題なんだ。だから音楽の価値を下がっていると言える。

不幸なことは、有名なアーティストしかその問題から脱却できないってことだ。そうなってしまうのは本当に残念だ。音楽の未来がどうなるのか、俺も気になる。いつかタダ同然の無料の配信や違法ダウンロードは無くなる日が来ると信じている。Spotifyは残るかもしれないが、分からない。

いつか誰かがブートレッグだの違法コピーだのを止めてくれるだろう。映画業界は多くの被害で苦しんでいる。数億円以上も製作に費やしているのに。いつか誰かが立ち上がって何かアイデアを実現するだろうな。インターネットの規制とか。この話をすると長くなりそうだから、また今度な。

ー 世界中でアナログレコードが人気再発しているけど、フィジカルなメディアへの価値が再認識されていることについてはどう思いますか?

FlyLo:素晴らしいことだね。アナログレコードを作るってことは、誰かが手に取って持つメディアを届けることを意味している。特に音楽ファンにとっては特別だ。Tシャツだったり、手に取ることができるフィジカルな何かが嬉しいんだ。それは音楽に対する愛情表現の証だ。

クリエイティブであることの時代感覚

ー あなたにとっての音楽の価値とは何でしょう?

FlyLo:俺にとって重要な人生の一部だ。ミュージシャンである上に音楽のファンでもあるわけだからね。

(次の質問を確認していると)ノー。メモなんか見るなよ。お前は何が知りたい? 何を考えている?

ー じゃあ音楽の世界について何を考えているか、もう少し本音を聞かせて下さい。今、音楽に対して世界中が悲観的になっている気がします。

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FlyLo:俺もその一人だよ。あまり楽観視できないな。業界のルールが劇的に変化した。ただ、必然的に変わる必要があったけど、個人的にはそれは刺激的なことだ。未来がどうなるかは予想できないけど、過去と同じルールでは生きていけない。今なら俺は自分の作品でメジャーレーベルのアーティストと競争することだって出来る。キャンペーンややり方を工夫することで、それが可能になった。

レディオヘッドのトム・ヨークがいい例だ。彼は彼なりの独自のやり方を模索して、多くのレコードを売った。数百万規模のダウンロード販売を実現して、数百万ドル以上を手にしたんだ。

大きなレーベルがバックアップしたわけでもなく、長期間のPRもなかった。ジャーナリストとのインタビューもツアーもしなかった。だから人にとってインスピレーションだった。「レーベルじゃない、業界構造でもない。俺たちは違う時代にいるんだ」と言った。そして彼は成功して、証明したんだ。

#FYF / Sunday #youredead

flyinglotusさん(@flyinglotus)が投稿した写真 -

「You're Dead!」アルバムローンチ時に出現した巨大ビルボード

レーベルの連中は彼のしたことが好きじゃないだろうね。なぜなら彼が「レーベルは必要ない」アプローチを見せることで、他のアーティストを刺激しているからね。俺は素晴らしいことだと思っている。今の時代、音楽のクリエイターの楽しみの一つは、どうやって音楽を届けるか、どう音楽を消費させるかの手法を考えることだと言える。もっとクリエイティブなキャンペーンを作る自由があるんだ。ルールに縛られないってことはそういうことになると思う。お前はどう思う?

ー 音楽の届け方が変化することは、アーティストだけじゃなく音楽ファンにとっても嬉しいことですよ。

FlyLo:その通り。本当にそう思う。ファンが新しいことを求めている。人に音楽を聴く理由を与える。それを考えることもアーティストの楽しみの一つと感じるよ。

ー 今日はありがとうございました。とても緊張しましたよ。

FlyLo:ハハハ。冗談だろ。楽しかったよ。

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フライング・ロータスのクリエイティヴな精神。それは、ハービー・ハンコック、ケンドリック・ラマー、スヌープ・ドッグなどアーティストとのコラボレーションや、漫画家の駕籠真太郎氏を起用したアルバムジャケットなど、クリエイティヴな側面を徹底して追求することに始まり、それが結果的に話題となって広がり、日本を始め世界中の音楽ファンからの共感を集めているように感じられます。

それはコマーシャル的な話題を使ってPRする従来の手法とは全く異なる「ルールに縛られない」世界です。まずはルールを破ること、それがクリエイティヴへの第一歩。彼の音楽と言葉が再認識させてくれました。

フライング・ロータス(Flying Lotus)最新アルバム情報

タイトル:You're Dead!(詳細

レーベル:Warp Records / Beat Records

リリース日:10月7日(火)

タイトル:You're Dead! [Instrumentals] (インスト盤)(詳細

レーベル:Warp Records / Beat Records

リリース日:12月3日(水)

URL:Beatink

source: Flying LotusBeatink

(鴻上洋平)