0コンマ以下への挑戦。ビールの世界に隠されたイノヴェーションとは?

2014.12.04 11:00
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ビールの世界にも進化とイノヴェーションがあるんです。

ガジェット好きの方なら量販店で衝動買いをしたことが一度はあると思います。そのスペックや機能につられて思わず買ってしまったことありますよね。突然ですがつい先日、コンビニで見かけた発泡酒でも似たような経験をしたんです。

それがキリンの「淡麗プラチナダブル」という発泡酒。


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この発泡酒はプリン体0.00(※1)、糖質0(※2)の「高機能系発泡酒」とも呼ばれています。まずビールや発泡酒の世界にも「高機能」という表現があることに驚きました。なんでもキリンによる世界初の特許技術(※3)で100ml当たりのプリン体0.00と糖質0を実現。このプリン体0.00&糖質0が高機能と呼ばれるカテゴリなんです。

さらに淡麗プラチナダブルはダブルの0を実現しただけではなく、アルコール度数も5.5%。単に「高機能」なだけではなく、「飲みごたえ」や「うまさ」も諦めない発泡酒なんです。最近はお腹も出てきたし、自分のカラダを気にする方にとってはこの淡麗プラチナダブルは高機能かつ、飲みごたえもある実用的な発泡酒といえます。これは試さないわけにはいかないというわけで思わず衝動買いしてしまったのです。

自宅で飲みながら高機能系発泡酒を調べてみると、最近はやはり「プリン体0&糖質0」の高機能系発泡酒が人気になっているのだとか。以前から99%カットの発泡酒は出ていましたが、両方ゼロを実現できたのって、ここ最近の話らしいんです。

ビールの世界もガジェットと同じで、年々進化しているんだなーと実感しました。そういえばiPhone 6もiPhone 5sと比べて0.7ミリ薄くなりましたよね。たった0.7ミリですが、手にしただけでその薄さを実感できたし、そこには明らかな違いがありました。その0.7ミリの薄型化には並々ならぬ企業努力やイノヴェーションがあったんだと思います。

ということはですよ、ビールだって、プリン体0.00を実現するためには、きっと何らかのイノヴェーションがあったんじゃないかと思うのです。技術の進化とイノヴェーション、これはギズモードとしても追いかけないわけにはいきません。

ということで、ゼロ系発泡酒の中でも人気の高い「淡麗プラチナダブル」を発売しているキリンビールに突撃取材してきました。この高機能系発泡酒をひとつの最新ガジェットと見立てて話を聞いてみようと思います。


発泡酒とガラケーに共通点あり


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今回、インタビューにお答えいただいたのは、淡麗プラチナダブルの開発当初から携わってきたというキリンビール株式会社マーケティング部 商品担当の久保育子さんです。

ギズ:そもそも発泡酒からプリン体をカットする流れはいつ頃から始まったのですか?

久保:2003年に弊社が発売した「淡麗アルファ」という商品があるのですが、それが「麒麟 淡麗<生>」と比べてプリン体を90%カットした発泡酒でした。これが初めてプリン体をカットした発泡酒となります。当時の技術では90%が限界でしたね。

ギズ:90%でももう十分にすごいと思いますよ。

久保:ありがとうございます(笑)。その後は、95%・99%とカット率を増やしていき、2009年にはワインポリフェノールで飲みごたえをさらにUPした99%カットの淡麗ダブルを発売しました。

ギズ:もはや技術者の方の執念を感じますね…。それほどまでして糖質とプリン体のカット率にこだわっていったのは、やはりニーズがあったからですか?

久保:実は、淡麗アルファを発売したときは、それほどプリン体カットという概念は一般的ではなかったんですよ。ただ、カラダは気になるけれど、それでもビールを飲みたいという声はありました。全体に対する割合は決して多くはないのですが、プリン体に悩んでいる層には確実にニーズがあったんです。

ギズ:一部に強いニーズがある飲み物だったわけですね。

久保:そうですね。飲んでいる人数自体は決して多くないのですが、飲む人はそれこそケース買いして飲むような、狭く深いニーズのある商品でした。ただ、最近はゼロ系発泡酒が話題になったり、糖質だけでなくプリン体オフの商品も増えてきたので、昔よりも気にする人が増えてきていると感じています。

ギズ:プリン体を気にすることがメジャーになりましたよね。…プリン体が何なのかよくわからず、雰囲気だけで避けとこうかって思っている人も多そうですけど。

久保なくてもいいなら、ない方がいいよね、くらいの軽い感覚でゼロ系発泡酒を飲まれている人も増えていて、市場が活性化しつつありますね。

ギズ:ちなみに海外にもこうしたプリン体カットの発泡酒は存在するのですか?

久保:あまり聞いたことはないですね。そもそも海外はビール自体が安いので、日本のような発泡酒もあまりないと聞いてます。発泡酒は税制の関係で生まれて進化した、日本ならではのカテゴリーとも言われています。以前に聞いたことがあるのですが、海外の方にプリン体オフの発泡酒を飲んでもらって、コンセプトを説明したら「信じられない!」と言われたこともあったとか(笑)

ギズ:発泡酒はまさに日本独自の飲酒文化なんですね。そういう意味では、ガラケーにも通じるものがある気がします。あれも日本独自で進化していった端末でした。そういう世界でも類を見ない独自の進化ができる土壌が日本にはあるのかもしれませんね。


プリン体をカットする技術は、偶然の産物だった。


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ギズ:ところで、ニーズがあるわりにはプリン体カット発泡酒の歴史はわりと新しいですよね。2003年以前には、どうしてそうした商品が出なかったのですか?

久保:それは、プリン体をカットすること技術自体が、偶然の産物で生まれたものだったからなんです。

ギズ:偶然の産物?

久保:2000年に弊社が発売した「クリアブリュー」という商品があったのですが、これは若い人をターゲットにした無色透明な発泡酒でした。スタイリッシュな外観や味覚など、これまでのビール類にない、新しい価値を提案する商品でした。

ギズ:ああ、たしかにビールのあの色って、若い人にとってオヤジっぽく感じることがあるかもしれませんね。

久保:その「クリアブリュー」を透明にするのに、吸着材を入れることで色を吸着して取っていたのです。ところが、吸着材を発泡酒に入れたところ、色だけでなく、プリン体も一緒に取れていることがわかったのです。これは使えるのではとなって研究がスタートし、3年かけて「淡麗アルファ」を発売したというわけです。


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ギズ:最初からプリン体をカットすることが目的ではなく、色を取ったときの副産物だったわけですね。現在もその方法でプリン体をカットしているのですか?

久保:ええ。詳しいことは企業秘密なので言えないですが、吸着材でプリン体を吸着し、取り除いて作っています。

ギズ:少し前まではカット率が99%だったわけですよね。そこからプリン体0.00にできたのには、どんなイノヴェーションがあったのでしょう。

久保:実はプリン体だけをカットするのは難しいのです。プリン体を取り除こうとすると、一緒にうまみ成分も抜けてしまいます。そこで、よりプリン体だけを取り除ける吸着材の素材を探しました。

ギズ:そして、見つけたわけですね。

久保:そうです。より効率的にプリン体を吸着除去できる素材に進化・強化することで、淡麗プラチナダブルのプリン体0.00が実現できたのです。

ギズ:ガジェットでも、そうした困難な両立を達成したときにイノヴェーションが起きています。たとえば、ちょっと前まではデジカメの画素数が多いと高感度が弱くなると言われていましたが、現在はセンサー技術の進歩で高画素と高感度の両立が可能になってきています。それこそがイノヴェーションなのかもしれませんね。


機能だけでなく、味も追求


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ギズ:プリン体カットのお話ばかりになってしまいましたが、淡麗プラチナダブルの味わいについても教えてください。

久保:爽快でキレのある飲み口で淡麗ならではのうまさが感じられる味だと思います。

ギズ:そもそもキレとコクの定義がよくわかっていないのですが……。

久保:味覚の分析や研究を行なうAISSY社によると、キレは後味がどれだけ早く消えているかで定義されています。コクは、「味の厚み」と考えていただければわかりやすいと思います。

ギズ:なるほど。iPhoneとAndroidの違いを、よく「ぬるぬる」と「サクサク」という言葉で表現するのですが、「キレ」や「コク」に関しても、これまではなんとなく言葉のイメージだけで捉えていました。きちんとした定義があったのですね。


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久保:ただ、こうしたデータだけで味を決めているわけではないんですよ。実際には、試飲して最終的に味を決めています。

ギズ:やはり最後は人間なんですね。ギズモードでもよく新しいガジェットのスペックを紹介したり比較したりするのですが、実際に使ってみると必ずしも数字通りではないこともあって、やはりデータだけでは判断できない部分はあると感じています。そういえばアルコール度数も5.5%とビールと同じくらいで高めですよね。これは理由があるのですか?

久保:飲みごたえ、満足感を担保するためビールと同等のアルコール度数である5.5%としていますね。

ギズ:これくらいの度数があると、たしかに「飲んだぞ」という気になりますよね。そういえば気になったのですが、なぜ商品名に「ゼロ」という言葉が入っていないのですか?

久保:商品名に関しては社内でもものすごく議論がありまして、仰る通り、ゼロとつけた方がわかりやすいのではないかという意見もありました。ただ、"ゼロ"とついているものを毎日飲みたいかというと、それはどうだろうと考えたのです。

ギズ:たしかに買うたびにゼロという文言が目に入ると、「自分が今飲んでいるのはゼロの商品なんだ。ゼロだから飲んでいるんだ」という気持ちになりそうですよね。そうじゃなくて、「おいしいから飲んでいるんだ」と思いたいです。

久保:従来の商品でいうと、「淡麗グリーンラベル」がまさにそうでした。糖質70%オフなんですが、機能だけでなく、飲んだときの爽快感・気持ちよさを伝えるために、機能をつかわない名前をつけたんです。ただ、そうはいっても二つのゼロという機能がついていることは訴求しなければいけません。そこで、健康価値と本格的なうまさを両立したプラチナスペックの発泡酒ということで、プラチナダブルという商品名になったのです。


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ギズ:なるほど、よくわかりました。ところで、プリン体0.00を達成してしまったわけですが、今後はどういった方向を目指されるのでしょうか。

久保:プリン体に関しては0.00になりましたが、味の面は今後も追求していきます。お酒は嗜好品ですから、お客様の満足度をより上げていかなくてはいけません。それに、かつてはプリン体のニーズがここまで高まるとは思っていませんでした。ということは、これから先、5年後10年後にどんなニーズが出てくるかはわかりません。今後も新しい価値を付加するという可能性もあるのではないでしょうか。

久保さんのお話で、ビールの世界にも最新のテクノロジーを用いた0コンマ以下の攻防があることがわかりました。たった1%を乗り越えるために、今日もビール会社は試行錯誤と研究開発を重ねているのです。イノヴェーションと、それを起こす人間の努力と閃き。ガジェットの世界もビールの世界も、そういう点では同じなんですね。

改めて、「淡麗プラチナダブル」がこれまでの発泡酒の集大成的な商品であることがわかりました。発泡酒の中でももっともイノヴェーティブなこの一本を飲みながらだと、何かいつもより仕事も捗る気がしますよ。


source :キリンAISSY

(山田井ユウキ)

※1 100ml当たりプリン体0.005mg未満を「プリン体0.00」と表示しています
※2 栄養表示基準による
※3 プリン体カット製法 特許番号:第3730935 号

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