テロリスト監視で、言論の自由は守れるのか? EFFが問題提起

テロリスト監視で、言論の自由は守れるのか? EFFが問題提起  1

プライバシーがあってこその自由、と。

フランスで、イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載した週刊誌「シャルリー・エブド」の事務所をイスラム教過激派が襲撃し、12人が死亡する事件が起こりました。言論の自由を暴力で抑えようとした過激派に抗議の声が集まる一方、テロリストに対する監視やネット検閲をさらに強化すべきだという議論も起き、各国政府が監視強化に動いています。

が、ネットにおける言論の自由保護を訴える団体「電子フロンティア財団(EFF)」は、そんな政府の動きに懸念を表明しています。以下は電子フロンティア財団のWebサイトに掲載され、Creative Commonsライセンスによって米Gizmodoに転載された内容の翻訳です。

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テロ事件のあと、政治家や当局が監視強化を訴えるのは珍しいことではありません。悲しみや恐怖からは安易な解決策を求めてしまいがちですが、それは重大な結果を招く可能性があります。すでに指摘したように、世界でもっとも厳しい検閲や法制度の一部は、このような悲劇のあとに生み出されたものなのです。

そのため、シャルリー・エブド事件直後の今入ってくる情報が我々には不穏に感じられるのです。先週金曜日、フランスのマニュエル・ヴァルス首相が、テロの脅威に対し「より踏み込んだ手段を取る必要がある」と発言しました。でも、フランスの情報機関はテロ容疑者に関し大量の情報を収集しており、昨年11月には厳格な対テロ法が成立したばかりなのです。我々のドイツの仲間は共同声明で、フランスはヨーロッパで最も厳しい安全策をすでに備えていると指摘しています。

ただヴァルス首相は「性急な法整備をしてはならない」とも言っています。でもフランスの政策提案グループ「La Quadrature du Net」によれば、シャルリー・エブド事件後、政府はLOPPSI(訳注:インターネット監視に関するフランスの法律)の下、テロリズムを扇動・美化・正当化するウェブサイトを法的審理なしでブロックする意志を(法で定められた通り)ブリュッセルに通知しました。その結果緊急の名目で、フランス政府は彼らが不適切だと考えるウェブサイトを何でも削除できることになりました。

その隣のイギリスでは、MI5トップのアンドリュー・パーカー氏が、過激派対策としてスパイの権限拡大を要求しました。木曜日、パーカー氏は「プライバシーが絶対的かつ神聖だという雰囲気のせいで、我々に害をなすテロリストでも誰でも、発見される恐れなく秘密裏に安心して動くことができている」と危機感を表明しました。BBCによれば、デービッド・キャメロン首相も月曜日、彼がもし次の選挙で当選したら「当局が通信やコンテンツの詳細にアクセスできる権限を拡大する」と発言しています。

パーカー氏はまたインターネット企業の協力も求めています。イギリスでは、インターネットプロバイダーはすでに司法機関と協力体制にあり、テロリスト的なコンテンツを通報するボタンの導入にも合意しています。それでもイギリス政府は、業界からのさらなる協力を要請しています。

一方イタリア当局では、シリアに渡ってイスラム国に参加しようとする意図が疑われる人物のパスポートを政府が押収できる新たな法制度を検討中です。内務大臣のアンジェリーノ・アルファーノ氏は金曜日、イタリアにも「過激派同士のオンラインでの会話に対するアクセス拡大」が必要だと述べています。そして政府が脅威となる人物のブラックリストを作るために、インターネット・プロバイダーが必要なデータを政府に引き渡すことを求めています。

米国の政治家たちも、シャルリー・エブド事件を利用して従来の監視プログラムを正当化しようとしています。National Journalの報告書は、共和党議員からの公式発言をまとめています。たとえばリンジー・グラハム議員はこのように言っています。

我々の諜報能力は、このような攻撃が我々の国土で起こることを防ぐために作られていますが、それが急速に損なわれていると懸念します。この種の攻撃を未然に防ぐために作られた我々の安全保障インフラが、危機にあるのです。

市民監視は我々のプライバシーを侵害するだけでなく、言論の自由をも奪うものです。最近のPEN Americaの研究では、世界の文筆家にとって、監視は言論を殺す影響があります。監視について知ったり、認識するだけであっても、文筆家はある問題について書くことについて二の足を踏んでしまいがちになるのです。

シャルリー・エブド事件はたしかに悲惨ですが、これを当局による監視強化の機会として利用すべきではありません。言論の自由は、プライバシーの権利とともにあることで花開くのです。

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以上、EFFのJillian York氏でした。安全と自由の折り合いをどう付けるかという難しい問題ですが、今欧米政府は安全を取る方に傾いているということですね…。

Jillian York - EFF - Gizmodo US[原文

(miho)