自作ドローンは、10億ドル規模の市場となるか?

2015.02.15 12:00
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自作の魅力。

1970年代、例えばアップルの共同創設者であるスティーブ・ウォズニアック氏のような趣味に熱中する人々の手によって数々の自作コンピューターが組まれ、後にパソコン革命へと繋がっていきました。これに当たる現代の流れとして挙られているのが、自作ドローンムーブメント

Chris Andersonさん、彼にはとある趣味があります。いや、趣味があったと言った方が適切でしょうか。趣味は今や仕事となりましたから。彼が立ち上げたのは3D Roboticsという会社、ドローンの会社です。ある意味、彼はドローン界のスティーブ・ジョブズ氏。しかし、異なるのは、ジョブズ氏がパソコン革命の中で自分の商品をどうマーケティングしようかと頭を悩ませたのに対し、Andresonさんがマーケティングしているのは自社製品ではなく、自作ドローンという市場そのものだということでしょう。

趣味のドローン、無人航空機は2010年代においてまさに最適なテック系DIY。発展するスマートフォン市場の影響で、ここ10年ほど格安なセンサーが出回っています。おかげで、誰でも趣味として比較的安価で空飛ぶロボットを作ることができます。加速度計、ジャイロスコープ、ワイヤレスアンテナ、自動操縦システム、カメラ、プロセッサー。かつて1つ1つが高額だった時代を経て、今はこれをすべてミニサイズの飛行機に載せることができるのですから。しかも、それをスマートフォンから操作できるというね。簡単で安価で、誰でも日曜大工としてドローンを作れる時代になっているわけです。

米Gizmodoのインタビューで、Anderson氏は「典型的な草の根開発の流れ、ボトムアップアプローチだね。草の根イノベーションのスピードは今やますます速くなっている」と語っています。


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DIY市場は、こんな流れが大好きです。誰だって安価で自分だけの空飛ぶロボットが作れるよって言われたら、ワクワクするでしょう。が、この流れに注目したのは自作を趣味とする人たちだけではありません。これはお金になる、そうなればビジネス要素が加わってきます。Andersonさんの3D Roboticsは、まさにこの趣味の流れを今、何百万ドルという市場に育てようとしているのです。


ホームブリュー・コンピュータ・クラブ

趣味としての自作ドローンは、2000年にリモコン操作飛行機のDIYコミュニティから派生したもの。Andersonさんが参加し始めたのもこの頃で、6年前にはDIY Dronesという自作ドローンのコツを教え合うサイトも設立しました。自作コミュニティに欠かせないのが、このようなフォーラム、意見交換の場所です。

今日のドローンコミュニティを語る上で、1975年にシリコンバレーで生まれた、コンピューターを趣味とする人々の団体ホームブリュー・コンピュータ・クラブの存在が大きくあります。このコミュニティがきっかけとなり、パソコン革命が起きたのですから。隔週行なわれたミーティングで、メンバーたちは世界最速のパソコンを作ろうと開発を続けました。この集まりが、スティーブ・ジョブズ氏やウォズニアック氏を刺激し、1976年には初のアップルコンピューターが誕生したわけです。


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さて、アップルが世界でも有数のパワフルでリッチな企業になる前、ビジネスとして成功するためには、自作の要素をふるい落としてしまわなければなりませんでした。Apple Iは、コンピューターキットでしたが、ジョブズ氏は実に早い段階で、大衆はコンピューターなんて自作したくないし、箱からだしてコンセントに繋いですぐ使いたいものだということに気づきました。パソコン趣味の人々はパソコンいじりを続けたものの、アップルが1984年にMacintoshを発売する頃には、パソコンというものはすべて組み立てられた形で工場からやってくるのが当たり前になりました。

これは実に革新的な動きで、この流れがあったからこそ、コンピューター開発はガレージから一大企業の工場へと発展したのです。Anderson氏はこう語っています。「ホームブリュー・コンピュータ・クラブができる前からコンピューターはこの世にあった。でも、極一部の熱狂的趣味人だけのものにすぎなかった」

もちろん、お店で完成品のコンピューターを購入できるようになったからといって、ホームブリュー・コンピュータ・クラブがすぐさま姿を消してしまったわけではありません。今でも、多くの人がコンピューターを自作しています。自作パソコンは、DIYの魅力の根本に今も残っているのです。実用的というよりも、組み立てる楽しさ、自分だけの楽しさ。


ホームブリュー・ドローン・クラブ

今、Andersonさんがやろうとしているのは、まさにホームブリュー・コンピューター・クラブのドローン版。かつて働いていたWiredを辞め、自身で3D Roboticsを企業した頃、手の届く価格帯のドローンが市場に出回り始めました。

「ホームブリュー・コンピューター・クラブととても似ている。彼らにとってはチップ、インテル8080が鍵だった。それが僕らにとっては、センサー類になってる」、そう語るAndersonさん。

ここ10年の流れは、自作ドローンにとって追い風。10年前は1万ドルしたお弁当箱サイズのセンサーが、今や親指の先ほどの大きさで7ドルで9つも手に入る時代なのです。

3D Roboticsの目玉製品はIris+。750ドルのドローンキットです。クアッドコプターとバッテリー、チャージャー、ラジオコントローラー、そして4本脚がセットになっています。まさにお手軽キット。が、お手軽なのはここまでで、ここからあれこれ複雑化します。

このドローンに例えばカメラをつけて飛ばしたいとします。すると、シンバル(回転台)が210ドル、GoProカメラが400ドル、SDカードが20ドル。さらに、空高く上がってもスマートフォンから操作するためのラジオセットが100ドル、予備のプロペラセットが20ドル。あれこれ装備していくのは実に楽しいでしょう。が、その分お金がかかります。上記の装備すべて込みのIris+が1500ドル程度なことからも、自作には大変さとコストの高さがついてまわるのが伺えます。


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3D Roboticsは、自動運転用の無料オープンソースプラットフォームAPMのスポンサーにもなっています。そう、Iris+はドローン界のグーグルNexus。提供するハード、ドローンはAPMを利用してもらうための一手段。いつか、このソフトがドローン市場のスタンダードになればと願っています。昔ながらの自作精神はこのソフトにも生きている。


クラフトブリュー・ドローン・クラブ

多くの趣味人はAPMを使い、そして3D Roboticsからセンサーなどのパーツを購入します。しかし、Andersonさんの視点がユニークなのは、自作ドローンというものにプレミア感を持たせたこと。

わかりやすくするために、AndroidとiOSの構図で考えてみたらどうでしょう。Iris+がAndroid搭載のNexus、DJIのPhantomをiPhoneとしましょう。Phantomは操作が簡単でおばあちゃんでも使えます。基本となるPhantom 1は500ドル以下、一方カメラ装備搭載のPhantom 2 Visionは900ドル。とっても簡単で、ハードを追加することなく上空からの映像をストリーミングできます。Iris+と比べると自主性や多方面への機能はないけれど、でも簡単で使いやすい。みんながみんな複雑な自作を望んでいるわけではないので、これはありがたい話。

あれ…?うすうす感づいてたけど変じゃない?ベーシック機能ついてて、カメラ装備機能つきモデルもあって、箱から出してすぐに誰でも簡単に使えるやつの方が安いの?操作が複雑なやつの方(=Iris+)がなんで高いの?あれ、おかしくない?さぁ、そこに登場するのが、マーケティング、自作のプレミア感です。


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Andersonさんや3D Roboticsが、ホームブリュー・コンピューターの流れ、草の根的開発で学んだことが活きてきます。21世紀のドローンは、まさに1970年代のコンピューター。素晴らしく画期的で、ここから多くのものが生まれていきます。しかし、3D Roboticsが興味を持ったのは、ガレージ開発の要素。自作のプレミア感には、上乗せ数百ドルの価値があると踏んだわけです。誰でも使えるiPhoneよりも、あれこれ自作の物をいれてオリジナルの使い方ができるAndroid。世界中で売れているメジャーなビールよりも、クラフトビール。多少高くても、そこには唯一無二の魅力がある、と。


ドローンという市場

自作には自作の良さがあることはわかりました。しかし、気になるのはドローン市場というものが、まだ未完成で不安定なこと。連邦航空局(FAA)は、商業用小型無人飛行機の利用についてあれこれ制度を考えており、2017年には法制定されるのではと言われています。現段階では商業利用ドローンに限って語られていますが、いつ趣味人のドローンにもその力が及ぶかはわかりません。ドローン操縦には、免許が必要になるなんて噂もあるくらいです。

ドローン市場に特化して見れば不安は残るものの、DIY市場全体として見れば安泰です。イノベーションはそこらじゅうに転がっており、様々な部品が安くなればなるほど、この自作市場に人が流れてきます。なんと大きな市場でしょうか。

Andersonさんの目指す自作ドローン市場は、かつてのコンピューター革命のように、自宅ガレージから飛び出ようというものではありません。「自作」という魅力、ガレージらしさを残すことに大きな市場への鍵があると考えているからです。そうなれば、前述のAndroidとiOSでの例えは的確ではなかったかもしれません。むしろ、Apple IとMacintoshの方がピタリとくる例えでしょう。自作要素を楽しむのならApple IなIris +、箱から出してすぐ飛ばすならばMacintoshなPhantomです。


Image by Jim Cook、Wikipedia、3D Robotics

Adam Clark Estes - Gizmodo US[原文
(そうこ)

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