IKEAが頑丈な家具を作ったら、地球規模のプロジェクトになりました

2015.02.21 12:55
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IKEAは世界一大きな家具メーカーであり、世界有数の企業のひとつでもあります。これほどまで大きな企業ともなると、商品の製造方法や原産地をわずかに変更するだけでも一大事業。まさにその大きなプロジェクトに取り組んでいる最中のIKEA、その裏側を少しだけのぞいてみました。

先月、IKEAがアメリカ国内で無垢材製の新しいラインを発売すると発表しました。無垢材とは、一本の原木から角材や板を直接必要な寸法に切り出したものを言い、IKEA従来の合板製の家具とは異なります。

新しいラインはNornäsという名前で、IKEAによれば、原産地である北スウェーデンの森にインスパイアされているのだとか。

なぜIKEAは製品の生産方法を変えるのでしょうか? それはズバリ、顧客が求めているからです。顧客は以前よりも購入するものの原産地に興味を持つようになり、自分の持ち物が何でできていてどこから来ているのか、より注意を払うようになってきています。そのためIKEAは数年に渡る一大プロジェクトとして、無垢材を使った製品を増やしているのです。

それがどうしたの?と思う人もいるかもしれません。でも、IKEAは世界で供給される木材のおよそ1%を使っていることを考えると、これ、非常に大きなニュースです。IKEAの木材スペシャリストHenrik Anderssonさんによれば、IKEAの製造工程におけるどんな小さな変化でも、地球規模の影響があるのだそうです。

少年時代を森で過ごしたというAnderssonさん。現在はスウェーデン、ロシア、中国など6ヶ国17ヶ所の無垢材製品工場を監督する部署のマネージャーをしています。Anderssonさんのチームは、木が成長する様子を見守るところから、伐採して製材・加工、そして非常に軽くて頑丈な家具を組み立てるところまで密接に関わっています。


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シンプルさの複雑性

IKEAの無垢材を使った新しい取り組みの背景は、効率性です。シンプルですが、実施するのは簡単なことではありません。Anderssonさんは米Gizmodoへのメールにこのように書いています。

「IKEAは森林を所有してはいませんが、それに近いと言っていいですね。Nornäsシリーズはスウェーデンの北部から来ています。」

使われている木材は、ほぼ全てがスウェーデンパインです。パインの木は伸びるのが遅く、その美しさと頑丈さで人気があります。そのうちほとんどは北スウェーデン産で、森から製材所、家具工場への輸送費を削減するため、製造施設は可能な限り森に近い場所に建てられています。

さらに驚くべきは、木材を選び、カットする繊細な技術です。IKEAが木材を最大限に利用するポイントは、1本の丸太の異なる部分を、それぞれ異なる家具のパーツに使うことです。より多くの無垢材を使ってパルプの利用を減らすためには、1本まるごとの木を購入することが理想的です。また、Anderssonさんは次のようにも語っています。

原材料を最大限に利用することは極めて重要です。サステナビリティ(持続可能性)のためだけでなく、よりたくさんの人が購入できるように、最終的な販売価格を抑えるための前提条件でもあります。

そしてこれがIKEAならではのポイントです。従来のIKEAの合板製家具では、ほぼすべてがパルプに変わるため、無垢材に対するパルプの割合は、特に大きな問題ではありませんでした。通常、合板の家具は表面がベニヤで加工されています。しかし、Nornäsシリーズは、木材板が塗装されずに見える状態で仕上げられるため、良い木を選ぶことがとても重要です。


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タイミングがすべて

木の節はちょっとやっかいです。それには樹齢や木材の鮮度が密接に関わっています。古いスウェーデンパインの木には濃い色の節ができやすいのです。そして、濃い色の節が家具の表面にあると、あまりカッコよくないんですよね。

そのため、節の色が薄く、周りの幹の部分とほとんど色が変わらない樹齢の若い(60年以下)木材は非常に人気が高いのです。

でも、そこにちょっとしたポイントがあります。古い木を買っても、木材の下の方はほとんど節がないので見える部分に、上の方は節が多いけれど強度が高いので負荷をサポートするパーツに、と使い分けることができます。事前によく計画を練ることがポイントです。

予めタイミングを決めておいて、木ができる限り強い時に伐採することもできます。初夏に成長する木は、速く伸びる分密度が低くなります。夏の終わりから秋にかけて成長する木は、よりぎっしりと詰まっていて、強くなります。IKEAはこの強い木を使います。

では残りはどうなるのかというと、家具として使われなかった分はリサイクルされます。Anderssonさんによると、IKEAは製材の時に出るおがくずやパルプなどを製紙業界に販売し、木の皮は乾燥窯の燃料として使っているそうです。ここでも効率性が最も重要視されています。


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木からテーブルのデザインへ

こういった努力のすべては、それを活かすデザインがなければ意味がありません。IKEAの家具が安いのは、IKEAが大量に木材を購入するからだけではありません。デザインにも秘訣があります。

NornäsシリーズのリードデザイナーMarianne HagbergさんとKnut Hagbergさんの兄妹チームは、見た目だけでなく、ひとつひとつのパーツが、木そのものからどのように作られるかに注意してデザインしたと語っています。

それは、すべてのパーツが木材からどのようにカットされるかだけでなく、家具が完成したときに、最終的にどのように組み合わされるのか計画することを意味しています。


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2人はNornäsシリーズのデザインについて、次のように言っています。

北スウェーデンのパイン材の伝統的な印象と、現代的なデザインを兼ね備えた、長持ちする家具を作りたかったのです。そのために、エッジを斜めにしたり、伝統的で頑丈な作りになるテクニックを使って、すべてのパーツを職人的にデザインしました。すべてのパーツは、色を塗ったり、素材を染めたりして、さらにカスタマイズすることもできます。

これがIKEAのデザイナーの発言だと思わなければ、全く普通に聞こえるんですが。まあ、何百万という人によって製造され、購入されていく会社の発言だと思うと重みがありますよね。

巨大企業IKEAの家具を、塗装したり素材を染めたりしてカスタマイズできるというのは、なかなか新しくて面白い取り組みです。平べったいIKEAのパッケージから本物の木片が出てくるというのも新鮮。


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最終的にはやはりIKEAですから、最後の1円までコスト削減するんでしょうけど、無垢材で作られた家具は合板の家具より頑丈で長持ちします。IKEAといえば、引越しするなら古い物は捨ててしまって、また新しいのを買いなおせばいいや~という使い捨て家具のイメージを持つ人も少なくないと思いますが、これはちょっと面白い方向転換です。

もしかしたら、IKEAのコーヒーテーブルを孫の代まで残す、なんていうこともあるかもしれませんね。


Image by IKEA

Adam Clark Estes - Gizmodo US[原文
(山田まり)

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