サウンドも「Photoshop」する時代

サウンドも「Photoshop」する時代 1

快適に話せるね。

どんなに料理やお酒がおいしいレストランでも、大声を張り上げなきゃ話せないくらい店内がうるさかったりすると、せっかくの食事もリラックスして楽しめませんよね。そうかと言ってあんまりシーンとしているのもそれはそれで居心地悪くて、つい会話も小声になってしまったりして。うるさくはないけれど、にぎわっている雰囲気は感じられるというのがベスト。

この心地よいワイワイ感をハイテクで演出しているレストランがカリフォルニアのオークランドにありました。イタリアンレストランのOlivetoです。Olivetoは昨年改装した時に、マイク、スピーカー、吸音パネルで構成される新しいサウンドシステムを導入。コンスタントに店内の音を録音、加工して理想的な背景音を再現しています。いうなれば店内のサウンドをリアルタイムでPhotoshop加工している感じ。

ザ・ニューヨーカーの音楽批評家Alex Rossさんが、先日このOivetoで食事されたときのことを詳しく記事にしています。Olivetoが導入したサウンドシステムはJohn MeyerさんとHelen Meyerさんの夫妻が経営するMeyer Sound Laboratories社の「Constellation(集合体)」システム。このConstellationシステムが、レストランの不快な雑音をどのように取り除いているのかAlexさんの記事を引用します。

Johnは説明してくれた。「各テーブルはそれぞれの音響ゾーンに入っているんだ。ただし完全に孤立しているわけではない」。そして以前にJohnの同僚が行った取り組みについても話してくれた。その取り組みでは、レストランの雑音を取り除くことに成功したのだが、結果として店内の雰囲気がつまらない活気のないものになってしまったそうだ。「あれは不評だったね。店内の雰囲気は完全に死んだみたいになってしまったよ」。

しかし、Constellationシステムは違う。完全に雑音を取り除く代わりに、Photoshopのような加工を行うのだ。つまり望ましくない要素だけを取り除くというわけ。Johnによると音の響きには2つの要素があるのだそう。

1つ目は初期反射。言葉として意味が理解できるための情報はほとんどこの初期反射に含まれている。2つ目は後期残響。この残響は初期反射に比べると不明瞭である。「例えば今、僕の後ろで大声で話している人たちがいるけど、ここから聞こえるのは話し声の残響だけ。だから不明瞭で会話の内容までは分からない。これはサウンドシステムで初期反射を取り除いているからだよ。声は聞こえるけれども何を言っているか分からないだろ」 つまりうるさくはないけれども活気がある、という効果を狙っているわけだ。

テクノロジーってすごいですね。Olivetoはこのシステムを導入したことで、レストランにおける従来のサウンドデザインを新しい段階に引き上げたと言えるでしょう。

Meyer Sound Laboratories社のサウンドシステムは、もちろんレストランだけでなく、音楽界でも注目を浴びていて、すでにさまざまな場所で導入されています。Alexさんは、サンフランシスコにあるデービス・シンフォニーホールの、小さなリハーサルスペースで行われたカジュアルなコンサートに行ったときのことも記事で触れていて、Constellationシステムの効果に非常に驚きつつも、リアリティにデジタル処理を施すという点で「哲学的な観点から不安にさせられる」経験だったと書いています。確かにどこまでの加工を良しとするのかは、専門家の間でも意見が分かれるところになりそうです。

ただ個人的には、快適な背景音の中、ゆっくりおしゃべりが楽しめるレストランというのは大歓迎です。カフェで隣の席の話が気になって仕事に集中できないなんてこともなくなりそうだし。

image by Ferenc Szelepcsenyi/shutterstock

Source: The New Yorker

Sarah Zhang - Gizmodo US[原文

(mana yamaguchi)