まるでルパンにでも出てきそうな大戦時のアート保存計画

まるでルパンにでも出てきそうな大戦時のアート保存計画 1

ルパン三世に出てきそう。しかし、ホントなんです。

これまで世界各国の政府は、自国のアートを他国に破壊されないよう見つからない場所に隠す秘密プロジェクトを計画していたってご存知でしょうか? その努力の痕跡は、墓地に隠された貯蔵庫や採石場など、あらゆるところに見ることができます。そして、これまで極秘とされていた文書が公開されたことで、冷戦時代におけるアート保存計画に注目が集まり始めているのです。

冷戦時代、西洋社会はソビエトの脅威に対してパニック状態となりました。その一端は、イギリスの国立資料館が、1980年代に核戦争の脅威から自国の歴史的芸術作品を保護しようとした計画の資料により垣間見ることができます。

このようなアイディアが浮上したのはこれが初めてのことではありません。1962年にキューバ危機が起こった際も、イギリス政府は自国の価値ある芸術作品をウェールズのマノッド炭鉱に隠そうとしていました。

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photo by Getty/Fred Ramage.

このことに関してガーディアン紙は、もし爆弾が落ちてきたら芸術作品はどうなったかを次のように報じています。

国の芸術遺産を保護するのに必要な時間はわずか6時間だ。指令は日中に出され、軍と美術館のスタッフが派遣され、美術品を乗せた大型トラックも到着することになっていた。数時間後、ターナーやティントレットの歴史的名画がウェールズの炭鉱に運ばれる見込みだ。そうすれば、たとえイギリスの街が撃破されようと、芸術作品は生き延びることができるはずだ。もっとも、その絵を見る人がいなくなってしまうかもしれないが…。

もちろんこれは実際に起きませんでした。しかし、80年代の初頭に核戦争の危機が再び再燃した際、今度は美術館側が助けを求めたのです。その保存計画のアイディアは、政府のトップ・シークレットだったウェールズ北部にある化学兵器“マスタードガス”の貯蔵庫に芸術作品を置こうというものでした。

実際に何の絵画が隠される予定だったのでしょうか? なんと、キューバ危機の際には14世紀の偉大な作品である「ウィルトンの二連祭壇画」がリストに含まれていました。

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さらに驚くべきことにゴッホの「ひまわり」やモネの「睡蓮」のような現代絵画の名作も含まれています。

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ブルームバーグの報道によると、これは計画性に欠けるパニくったプロジェクトだったようで、実行されるにはいたりませんでした。いかに西洋の国が核戦争に際して判断を血迷っていたかが伺われますよね。なにせ、人の命よりも芸術作品の保存を優先させようとしたくらいですから。

パニック状態に陥った国はイギリスだけではありません。第二次世界大戦中のアメリカも同様で、ヨーロッパの偉大な芸術作品がヒトラーに破壊されないよう、政府は歴史家やキュレーターを含む救援軍をヨーロッパに派遣しています。このことに関しては、ジョージ・クルーニーが「ミケランジェロ・プロジェクト(原題:“The Monuments Men”。日本では直前に公開中止)」のタイトルで映画化させたことで知られています。

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アメリカの場合、ヨーロッパだけでなく、自国の文化遺産を守る計画も練っていました。スミソニアン博物館は最近、歴史的な芸術作品をワシントンDCに隠そうとしていた決定的な証拠を発見しました。それはなんとアメリカ史を代表する名判事、オリヴァー・ウェンデル・ホームズの、その当時できたばかりの墓の下。そこに、芸術作品の貯蔵庫を作ろうとしたのです。

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議会は、その予算が1941年の時点で500万ドル(現在価値100億円超!)もしたために却下したのですが、アメリカ政府はパールハーバーの日本軍の攻撃に慌てふためいたか、その後、DCにあった貴重な歴史遺産をDCの外に出すことを試みます。ジャーナリスト、ブライアン・ダニエルズのレポートによると、議会図書館は、1941年12月26日に独立宣言書と合衆国憲法、イギリス政府からのリクエストでマグナカルタのコピーをフォートノックスへ送り、翌年1月1日に国立芸術ギャラリーは79点もの作品をノース・カロライナに送ったそうです。

スミソニアン博物館も熟考の末、シェナンドー国立公園に隠し場所を見つけ、42年に星条旗などを送っていたとのことです。

そして、今日のアメリカ政府も同じようなことを考えています。それは「運命の日倉庫」といって、来るべき滅亡の日に備え、植物10万種を北極にあるスヴァルバード島に送っています。これまで話してきたアートプロジェクトに比べると派手さはないですが、人類が生き延びるためには役に立つものです。

これらのプロジェクトは実行されなかったものの一部に過ぎません。こうしたプロジェクトが実行に移されるような世界情勢にならないことを願うばかりです。

Kelsey Campbell - Gizmodo US[原文

(沢田太陽)