スマートホームって、バカなの?

スマートホームってなんでこんなにバカなんだ!?」そう叫ぶのは米GizmodoのAdam記者。エアコン1つとってみても、家電や家の事情というのは国によって大きく異なります。Adam記者が嘆く、アメリカのスマートホームの現状とは?何がどうバカで、どんな問題で雄叫びをあげているでしょう。

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数週間前のこと、友達が数人家にやってきて、出来の悪いSF映画を見ることになった。映画鑑賞にあたり、友達の1人が「部屋、ちょっと暗くしない?」と提案し、部屋のスイッチに手を伸ばした。が、僕はそれを止め、おもむろにポケットの中のスマートフォンを取り出した。待ちに待った瞬間、見よ、これが我が家のスマートホームだ!

過去6ヶ月、自分の家をスマート化しようとWinkのパーツを使ってあれこれ作業した。6ヶ月かけた照明プログラム、センサー設置、ハブアップデートなどなど。スマート化し、すべてを手元の端末からコントロールする。みんなビックリするかなー、すげーって言うかなー。

スマホをアンロックし、ホームスクリーンからWinkアプリを立ち上げた。照明セクションをだし、「リビングルーム」の項目をタップ。明るい表示のアイコンが暗くなった(この間6タップくらい)。よし、ついに!

…何も起きなかった。

「リビングルーム」の項目をもう1度タップ、アイコンは暗い表示から明るく。さらにもう1度タップ、明るいアイコンが暗く。でも、部屋の照明はそのまま。気のせいかいつもより明るい気すらした。

友人たちはニヤニヤ。「ガジェットブロガーが何人いれば、部屋の照明消えるわけ?」「あれ、スマートホームだと思ったけど?」

僕は友人に向ってスマホを投げて、立ち上がって壁のスイッチへと向った。パチ。1タップ、部屋の照明は消えた。

夢のようなお手頃価格のスマートホーム

こんなはずじゃなかったのに。昨年夏、SoHoエリアのリッチなロフトで目にしたQuirkyが発表したWinkシステム。ものすごく期待が湧いた。プラグ&プレイフラットフォームは、どんな家でもWi-Fiと幾つかの端末を使うことでスマート化するという。Quirkyは、Winkを独立して立ち上げHome Depot(米国大手のホームセンター)と提携を結んだ。これは、誰しもがWink関連製品を買いやすいようにとの配慮。Quirkyの長年のパートナーであるGEですらも、このプラットフォームに乗り気でWink対応製品を作った。野心を感じる流れ、ものすごく魅力的。でも、そんなの無茶だったんだ…

ロフトでの発表会では、役員の人がスマートホームのデモだと僕にいろいろ見せてくれた。見ながらも、僕はこのシステムがどうしたら一般人用のスマートホームになるのかと思わずにはいられなかった。僕の意見では、連携する家電というのは高級なものだと思っていたから。Nestのサーモスタット、フィリップスのHue Lighting System、どれも確かにすごいし未来を感じる、ただ高い。セキュリティ会社が提供する高性能なホームシステムは、さらに値がはる。つまり、スマートホームとは今までの流れを考えれば、普通は手がでない高価な高価なシステムだったのだ。

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青いライトは、Winkハブが順調に動いているサイン。

が、Winkが提供するスマートホームは今までとはちょっと違った。SoHoのデモハウスで見たGE Link連携のLED電球は15ドル、さらに50ドルのWinkハブに接続させればスマートフォンからのコントロールが可能。電球たった3個だけの非常にベーシックなスマートホームかもしれないけど、それでも壁のスイッチをおすことなく部屋の照明をコントロールできれば、友人に自慢するには十分だ。

お手頃価格でシンプルなスマートホームのアイディア、まるで夢のような話。僕の住むアパートは古くて試せるプロダクトに限界があるため、以下のプロダクトでスマート化を試みることにした。まずは照明、そしてエアコン、ブラインド、ドア、窓センサーなどなど。

Winkハブ50ドル

Wink Relay タッチスクリーンコントローラー300ドル

GE Link電球15ドル

Cree接続LED電球15ドル

Lutron Serena RCシェード350-1250ドル

Quirky+GE Tripperセンサー50ドル

Quirky+GE Pivot Power Genius60ドル

Quirky+GE Aros エアコン300ドル

Leviton プラグインランプモジュール55ドル

このすべてが届いた時、めちゃくちゃ興奮した。僕のスマートホームの夢はついに現実になる!

お手頃価格のスマートホームの現実とは

Winkハブが届くやいなや、問題は発生したといっていい。初めに感じたワクワクはあっと言う間にイライラに変わった。Wink製品どれ1つとして、説明されたようには動きやしなかった。

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赤いライト(その他あれこれの色も)は、Winkハブが上手くいっていないサイン…。

何がどう問題だったかリスト化してやろうかとも思ったが、生産的ではないのでやめた。代わりに、自身の体験を90年代に流行った「Home Improvemnt」というドラマと比較することでなんとか溜飲を下げた。これでいうと、僕はドラマのTim Taylorだ。何か修理をするぞと言い出してやってみては、騒動を引き起こす役どころ。WinkサポートセンターはWilson、フェンス越しに指示をだす賢い隣人。彼は賢くて役に立つが故に、こっちは何から何まで頼ってしまう。Winkサポートはこれと同じで、とにかく1ステップ進むごとに僕はサポートの手助けが必要な頼りっぱなしな状況になっていた。

もちろんこれはWinkのせいだとは言い切れない。Wink製品がダメだということでもない。Wilsonであるサポートセンターと数時間話せば問題は解決し、ちゃんと動いたプロダクトもあった。結局、僕のハブは欠陥品であることがわかり、代わりの品が送られてきたのだが、やはりこれでも上手くいかず、またサポートとあれこれ何時間も話をするハメになった。Wi-Fiネットワークを設定しなおし、端末をあちらこちらへと移動させ、スマートホームの神様にお祈りすると、まだバグが見られるものの、やっとこさハブが動いた。この後、さらに使用する端末を全部セットアップしなおした。1日がかりの作業。

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左がCreeの電球、右がGE Wink電球。どちらも連携機能を考えなければいい電球。

GE Link電球は、特に悪夢だった。その理由の1つは、Winkアプリのデザインの悪さにある。いくらうちが狭いと言っても、17個もの電球を必要とする。ハブ交換によって、これらすべて1つずつリセットしなければならなかった。ぜーんぶサーキットから外してリセット。これをやり終えて、さぁいよいよとアプリからコマンドを入力、なのにノロノロとして上手く動かない電球を見たときには悲しくなったほど。GE Link電球は、確かに市場でも最も安いスマート電球だが、それでもWinkのアプリも助けにならずどうにもこうにも。

よく考えたら、家のスマート化のためのセットアップが簡単なんて誰も言ってなかったし、もともと僕だって簡単だと思ってなかった。しかし、Winkが言ったんだ、スマート化が簡単になると。Winkの企業コピーは「A simpler way to smarter home. (よりシンプルにスマートな家へ)」だ。Wink製品を使ったイチ消費者の目線で言わせてもらえば、シンプルだったのはお金を払うパートだけ、購入するとこだけだった。

Lutronのブラインドだけは信用できる。友達が来ると必ずやってみせる、Winkの中でこれだけは50%の確立で動いてくれるから。

スマートホームの定義

SoHoでプロがインストールしたWinkのスマートホームを見てから、実際に自分でセットアップしてみて台所の床が焦げるまで、もう何をやろうとしていたのか自分でもわからなくなっていた…。ただ、未来的な電気スイッチを体験してみたかっただけなのに。

玄関開ければ魔法のようにLEDライトがついてほしかった。寝室に入ればブラインドがさっと上がってほしかった。エアコンはすでに運転してて部屋の温度は快適状態、さらにエネルギー効率を考えて節約もしててほしかった。ルームメイトが窓を開けたらプッシュ通知がきて、出掛ける前に窓締めるの忘れないようにと注意を促してほしかった。スマートホームのダッシュボードとしてタッチパネルで今日の天気を教えてほしかった。僕がしたかったのは、そんな未来ぽいシンプルなこと

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ミニコンピューターが壁に内蔵されているとはなんとも未来的。でも、そもそもそのコンピューターが上手く起動しなければ使えないだけ。

つまり、僕が求めていたのはちょっとした家の自動化。Winkはこれを簡単にやれますと謡っていた。Winkのアプリを使えば、ロボットと呼ばれるスマートホームを自動化する仕組みを作ることができる。例えば、ジオフェンスを家の巡りに設定すれば、GPSを使い、ユーザー=家主の帰宅をWinkが感知。それに従いロボットが電気をつけ、ブラインドを開け、エアコンを起動させるということができる。まさに未来、でもこれはその通りに動けばという話。Winkの位置情報は、これまたイマイチなので頼りにならない。

絶対素晴らしいだろうジオフェンスの考えは早々に諦め、Tripperセンサーをインストールしてみた。こっちの方が上手くいくかな、と。結果、玄関開けたら電気がついてブラインドがあがる仕組みは、基本成功した。「基本成功」とは、まぁよく言えばで、全部の電気がつくつくまでにかなりタイムラグはあるのだが。一度にパッとつくわけでもなく、ランダムにつくのだが。うち1つはまったくつかないことも多いのだが。

これは、Winkスマートホームの成功例。とはいえ、電気は1度につかないし、内1つはまったくつかないけど。

ドアが開くとプッシュ通知を送るロボットも作った。これは問題なく動いた。が、このロボットの問題は、僕が帰宅してドアが開いたのか、友達が映画を見に遊びに来たからドアが開いたのか、その違いがわからないところ。ロボットにプログラミングして、何時から何時まで起動状態と設定することはできるけれど、それだと自分の生活が制限されてしまう。

セットアップ段階で、センサーを1つ壊してしまったことにも触れておくべきだろう。壊れたセンサーは2度と使えない、開いてリセットしてもダメだった。Wisonであるヘルプセンターに聞けばよかったかな。

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オープン。信じられなかもしれないけど、Wink Tripperセンサーのリセットにはこれが必要。開けなくちゃダメ。それでも、内1つはリセットされず動かなかったけど。

焦げと爆発と敗北感

試したプロダクトの中で、どうしても1つ自分でなんともならなかったのがあったので、Wilson=サポートに連絡した。それは、Wink Relay。

発表当時、Wink Relayは「宇宙家族ジェットソン」のリビング的存在だと思っていた。が、今は「Home Improvement」のネタみたいなものだと思う。「見て、Timが壁にスマートフォンをくっつけたよ!スマートホーム化だって」「あら、じゃぁ電気のつけ方がわかった人に100ドルあげるわ」ここで、笑いが起きる、そんな感じだ。

まさにこれがRelayという端末。簡単に言えば、これは壁に内蔵された小さなAndrodベースの端末。プログラム可能なボタンが2つ。この2つのボタンは、直接的ではないが壁の電気のスイッチに取って代わるものだ。プログラム次第では、このボタンでブラインドを開けつつ、キッチンの照明調整もできる……はず。Wink曰く、Relayのインストールは、従来の電気スイッチをインストールするのと同じくらい簡単だと。…いいえ、それは違います

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ホームスクリーンには、なんと誤字脱字も…。デフォルトでこれだったのだが、修正方法がわからない。

Relayこそ、Winkのいうスマートホームシステムのシンプルさ、信頼性がミスリーディングとなり危険だと思う最たるもの。300ドルの端末は、コミカルなほどぼんやりした説明書がついてくるだけ。

僕は電気技師ではないけれど、図表には強い。壁の電気スイッチを外して見る前に、どんな風にワイヤーが繋がっていてどこにどう伸びているのか、どこにRelayのコネクションが行くべきなのかを説明書の図表でチェックした。やっとインストールした時、スクリーンは点いたものの何も動かなかった。Wilson=サポートと1時間電話して、どうやら不良品だったと判明。送り返した。代替品が届いた時、もしこれでもダメなら、電気技師さんに電話して配線を修理してもらうしかないと思っていた。Wilsonもそうすべきだと言ってたし。

午後中かかった作業の詳細はここで省くとして、結果、火花散り、爆発があり、悪臭が発生し、ちょっと焦げた…。Winkは簡単にスマートホームができると言ったのに、結果、これは家を焦がすのに最も複雑な方法だったわけで。

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爆発はRelayの配線が原因ではなくて、ドライバを壁にさしたままうっかりしてしまった自分のバカミス。この写真は、Relayの取説にあった図の再現。本当こんな簡単な図しかなかったの。

(従来の)電気スイッチの美しいまでのシンプルさ

Winkのスマートホームの夢は、無数の複雑な波でできてはいるものの、ぱっと視界が開ける瞬間もあった。タッチスクリーンのコントローラーのインストールに失敗し、家の自動化に苦しみ、何時間という時間と膨大な忍耐力を家のテクノロジー向上のためにつぎ込んだ。片手に300ドルの壁取り付けコンピューターを持ち、もう片手に3ドルの電気のスイッチを持って、僕は気がついた。視界が開けた瞬間だ。

インストール行程での悲しみやバグはさておき、スマートホームやらは簡単なものじゃない。従来のスイッチをひっぺがして、電球のスマート機能を使う。ひっぺがした代わりに、スマートフォンやタブレットの画面から照明を操作する。それは、本当に便利か?確かに、仕事場から家の電気を消すことができる、だからなんだ、生活は良くなるのか?スマートホーム化で友人を驚かし自慢することができる、でも上手くいかないことが多く恥をかくことも多い。SF映画鑑賞会の日のことは今もチクチクした思い出になっている。

デザインがいまいちなアプリを使ってスマートフォンから照明をコントロールしていると、どんなに従来の電気スイッチが恋しくなることか。

なにも、スマートホームがバカだと言いたいわけじゃない。より効率的な家が、ユーザーのニーズにだんだんとあっていくのは素晴らしい。ただ、Winkのような手の届くテクノロジーでは、まだその段階に至っていないスマートホームへのシンプルな道だなんてマーケティングの口上に過ぎないのに、Winkは21世紀の家の発展は実に簡単なものだとみんなに思い込ませようとしている。まったくダメなわけじゃなく、ラッキーな時にはたまにちゃんと動く。しかし、僕の体験では、僕が夢見た手の届くスマートホーム革命は微塵もなかった。

数ヶ月のイライラの末、僕の体験をまとめにはいると、僕のスマートホームは常にバカなわけじゃない。Winkだって、ソフトウェアアップデートでバグをいくつか解決していくだろう。だが、その努力はもっと前にすべきだった。Home Depotの棚に並べて、ほーら簡単にできるよと言い回る前にすべきだった。悪いプロダクトじゃない。ただ、まだ早かったというだけ。

従来の電気スイッチを見るとどうだろう。その真のシンプルさの裏には、1世紀もの開発、デバッグ、ユーザーテストがあった。暗い中帰宅し、スイッチを押せば必ず点く。クラシックな昔ながらのやり方だけど、お手頃で信頼できる方法だ。

これと同じくらいエレガントで信頼のおけるスマートホームテクノロジーを考えなければいけない。それを成すのは、アップルかもしれない、グーグルかもしれない。間違いなく言えるのは、Winkはもっと熟考していかなければならないということ。

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プロダクトノート

最後に、僕が試したプロダクトに対する感想一口メモ。プロダクトリストは、前述のものと同じ。

Winkハブ:購入価値なし。Winkシステムを試したいのなら、このハブではなくてあれこれパーツを買った方がいい。ハブを使って何か失敗すると、システム全体がダメになるという罠があるから。

Wink Relay タッチスクリーンコントローラー:却下。デザインもいいし、発送もいい。ただ、電気スイッチとしては信用できない。

GE Link電球:連携機能はさておき、値段のわりにいい電球。

Cree接続LED電球:Link電球の方が見た目はかっこいいけど、こっちの方が若干使い勝手、信頼性あり。

Lutron Serena RCシェード:最高、でも高い!信頼性も高く、例えWinkが使えなくなっても他のリモコン操作で動かせる。僕のカスタマイズブラインド(5個)は、なんと3,500ドル、高い。セットアップはけっこう面倒。

Quirky+GE Tripperセンサー:壊さなければ、上手く動く。価格がこの半分なら申し分なし。

Quirky+GE Pivot Power Genius:良いけど高い。ただ、WiFi機能がよくわからん。いや、機能はわかるんだけど、どこで使っていいのかわからん。

Quirky+GE Aros エアコン:ラブ!市場にあるエアコンの中でダントツかっこいい。ただ、他のWinkシステム同様にコネクションに問題あり。でも、やっぱりかっこいいから好き。

Leviton プラグインランプモジュール:すごく高い文鎮。1回だけ完璧に動いたことあり。せめて、ライトを全部同時につけることさえできれば…。

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なかなかタフな経験をしたAdam記者。手の届くところにスマートホームの世界はまだない、と。IoTが叫ばれ注目される昨今ですが、まだそれは私たちの生活を便利にするまでには至っていないようです。従来の電気スイッチと同じくらい簡単で電気が必ずつくと頼れる存在でない限り、スマートホームが取って代わろうなんて調子にのっていたのかも。

スマートテレビがCESを賑わせては、いまいち大衆に受け入れられなかったように、私たちの求めるものは複雑なものではないのです。100のことができても、それが複雑なものならば、多くの人はいらないのです。「スマートさ」とはなんでしょう。

今からそう遠くない未来、スマートホームは一般的なものになっているかもしれません。その時は、スマートさが何なのかはっきり答えがでている気がします。ただ、まだその時ではない。

Adam Clark Estes - Gizmodo US[原文

(そうこ)