Apple Watchのフィットネス機能に期待するワケ

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なぜApple Watchは他のスマートウォッチと違うのか?

世にスマホと連動するスマートウォッチが姿を現わしたのは、もう何年も前の話になりますよね。ウェアラブル端末の第一線で普及する、スマートフォンやタブレットに次ぐ、新たな世界的ブームの到来~。そんな大きな期待で迎えられたスマートウォッチでしたけど、実際には各メーカーから多種多彩なモデルは出てきているのに、いまいち市場全体では盛り上がりに欠けてきたというのも厳しい現状ではないでしょうか。

きっと今までのスマートウォッチは、通話や通知、アプリやゲームなど、そもそもスマートフォンやタブレットでもできてしまうことにこだわりすぎ、もっと重要なウェアラブルならではの機能にウェイトを置いてこなかったミスコンセプトの呪縛にとらわれていたと思うんですよね。そして、これこそがApple Watchの狙いを定めている攻めのポイントなのでは……。

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Apple Watchのヘルスケア戦略を語る前に、ボクにとって最初のスマートウォッチとなった、ソニーモバイル「SmartWatch MN2」の思い出に触れておきましょう。Xperiaシリーズのスマートフォン向けアクセサリーとして発売されたSmartWatch MN2は、ちょっとしたデジタル腕時計なのかな?そんな第一印象で出会ってしまったのに、いざ購入してBluetoothでXperiaスマートフォンとつなげたときに広がった最初の感動は、いまでも忘れることができません。

カバンにしまったスマホには一切手を触れることなく、通話着信が腕への振動でプルプルっとわかったり、メールやTwitter、Facebookなども腕時計の画面から確認できたり、その情報コンパニオンとしての有用性に新鮮な発見があったこともさることながら、次から次へと自分がほしい機能だけをアプリで選んで追加していけることに喜びを覚えたものです。もしやこのままスマートフォンの画面なんて見ることはなくなって、やりたいことはすべてSmartWatch MN2にアプリをインストールしていけば、いつかスマホから自由になる生活だって可能に!

一時は本気でそう考えて、願いをかなえるアプリやウィジェットを探しまくり、SmartWatch MN2のヘビーユーザーとなっていたのですが、ある新製品と出会ってからは、ピタリとSmartWatch MN2への熱が冷めてしまったのでした……。

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まだスマートウォッチというネーミングすらスタンダードではなく、当初はBluetoothウォッチという位置づけで世に出された「LiveView MN800」を、より洗練されたデザインでスマートウォッチに進化させたSmartWatch MN2。その完成度はなかなかのものだったとも思うんですが、どんなにアプリを見つけてインストールしても絶対にできない技がありました。それは、各種センサーによる単体でのヘルスケアデータの測定! こればかりは本体にセンサーが備わっていない以上、どうがんばってもSmartWatch MN2で計測のしようがありません。

一方、アクティビティートラッカーというヘルスケア端末をベースにしつつ、スマートウォッチの機能を搭載して登場してきたのが、サムスン「GALAXY Gear Fit」でした。全体的なルックスまでウェアラブル・リストバンド風な長方形デザインのディスプレイが採用され、当時(と言っても2014年の話)としては画期的な健康管理に役立つセンサーが満載!

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GALAXY Gear Fitにも、SmartWatch MN2と同じようにアプリの追加インストール機能があり、完全に互換とまではいえませんけど、SmartWatch MN2でできていたことは、ほぼGALAXY Gear Fitでもできるレベルになっていましたね。おまけにGALAXY Gear Fitの1.84インチSuper AMOLEDフルカラータッチディスプレイは、表示エリアが広いだけあって、チェックできる情報量も抜群にアップして、どちらかというとスマートウォッチ機能だけをとっても、個人的にはSmartWatch MN2より気に入ってしまいました。

しかしながら、もっとも心を奪われたのは、ただ身につけているだけで、歩数計から心拍数データ睡眠トラッカーまで、実に豊富なヘルスケアデータの収集が進んでいくことにありました。もう単体の歩数計は必要ないんだなって思いましたね。腕時計は基本的に外出中ずっとはめて歩くものです。ですから、ほぼ自然にウォーキングやランニングの距離、スピード、消費カロリーなどを測定し、あとから一目でチェックできるデータがそろっていきますよ。

ヘルスケアデータ測定としてApple Watchに求められているもの

GALAXY Gear Fitは斬新なコンセプトのウェアラブル端末でしたが、各種ヘルスケアセンサーを搭載する唯一のスマートウォッチというわけではありません。そもそも歩数計くらいの測定データであれば、スマホ本体でも収集可能なモデルが増えてきました。逆にいうならば、基本的なフィットネスデータの計測は、ただのアナログ腕時計とスマートウォッチの差別化を図るためにマストな機能となりつつあるとも考えられるのではないでしょうか。

もちろん、その代償もあります。搭載されているOSの違いなどもあり、一概にヘルスケアセンサーのコストとはよびきれないものがありますけど、BluetoothウォッチのコンセプトからスタートしたソニーのSmartWatch MN2は、本体にヘルスケアセンサーが埋め込まれたAndroidスマートウォッチのGALAXY Gear Fitの半額以下で購入できる低価格が魅力なモデルでした。単純に親機となるスマートフォンやタブレットとペアリングして、通知やアプリを画面に表示させるだけのデバイスから、精巧なアクティビティートラッカー機能も装備するヘルスケアデバイスにまで進化させるうえで、販売価格の大幅アップは避けられないものがありそうですよ~。

まだアップルはApple Watchの正式な価格リストを出してきていないので、現時点では推測の域を出ませんけど、決して低価格では発売されないことには、もうみんなが気づいています。本体に18Kのゴールドを用いる最上位機種「Apple Watch Edition」がトンでもない値段になってしまうのはしかたがないとしても、最低限の機能とデザインを搭載する「Apple Watch Sport」の最小構成モデルの値段でさえ、はるかにGALAXY Gear Fitの販売価格を上回ってしまうであろうことは目にみえていますよね。

ということは、先ほどの比較論を当てはめるに、少なくともGALAXY Gear Fitで実現したヘルスケアセンサーを上回るウェアラブルデバイスとしての付加価値を提唱できなければ、Apple Watchはコストパフォーマンスに見合わないという結論が導き出されてしまいませんか?

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日本では健康計測機器メーカーの最先端と聞くと、体脂肪計、睡眠計、皮下脂肪厚計、アルコールセンサーまで商品化しているタニタを思い浮かべる人は少なくないかもしれませんよね。スマートフォン本体に搭載されている簡易のセンサーだけでは計測しきれない、高度なヘルスケアを実現する活動量計体組成計を、すでに日々の健康管理にフル活用しているユーザーだっているはずです。

たとえApple Watchが高額スマートウォッチでも、こうした医療分野でも使えるレベルの信頼性の高いデータ測定を進められる各種センサーが備わっているとしたらどうでしょうか? 歩数計から体脂肪計、体温計、血圧計などなど、あらゆる医療測定機器を、Apple Watchで1台にまとめられるとしたら?

実はその可能性は十分にあります。例えば海外では糖尿病患者のためのモニターを作っているDexComが、Apple Watchを手首に装着しているだけで簡単に自分の血糖値を計測できるデモを公開したりしています。もちろん、医療機器としての利用には、さまざまな規制をクリアすることが求められるため、初期製造モデルには間に合わない測定エリアもありそうです。しかしながら、将来的には、常に身につけるApple Watchが、自分の健康管理に欠かせない高度ヘルスケアキットとしてバージョンアップを遂げてくるのかもしれませんよね。

Apple Watchのフィットネス分野での課題

日常生活のアクティビティートラッカーとして、いつも肌身離さず身につけるコンパニオンになる……。そんなApple Watchのヘルスケア機能に期待は高まりますが、ここで気になってくるのはApple Watchで最大の弱点としても指摘されているバッテリー問題があります。まめに充電を繰り返さなければならないのは、スマートウォッチ全般の課題に挙げられており、これこそスマートウォッチの普及が進まない最大要因ではないかとまでいわれていますよね。

バッテリーを食うディスプレイを搭載せず、ただリストバンドとして身につけておいて、もっぱら測定データのチェックはペアリングしたスマートフォンやタブレットのみで行なうというフィットネスデータ測定機器は多々あります。でも、すでにディスプレイが標準搭載のApple Watchに関しては、そういうワケにいきませんよね。とはいえ、ヘルスケアキットとして、バッテリー問題は致命的なダメージを与えます。GALAXY Gear Fitで外出中にバッテリーが死んだときなんて、その日は夜までまったく運動していないことになってしまい、後々まで当日のデータはなしのまま過ごすなんてザラでしたからね~。

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考えられるのは、すでにアップルがApple Watchは何日も充電無しで使い続けられるような性能ではないことを重々承知であること。しかし、単に途中でバッテリーが切れたら使いものにならないなんてレベルでリリースしてくることはないと予想します。

例えば、ディスプレイはバッテリー切れで暗くなり何も表示されない状態になったとしても、各種センサーだけは計測を続けて、後ほどバッテリーが充電して復活したときに、これまでの測定データを途切れることなくチェックできるみたいな仕組みかもしれません。

ところで、睡眠トラッカーまで搭載するフィットネスバンドと聞くと、もう1日24時間、寝るときも起きるときも、入浴中でさえ防水性能に頼ってずっと腕にはめ続けるといったイメージがありますけど、このバッテリー問題を考えるだけでもどこまでアップルが24時間体制での利用シーンを想定しているのかは懐疑的です。フル充電から4日間はバッテリーが持つとされたGALAXY Gear Fitでさえ、結局のところずっと身につけていると、どのタイミングで腕から外して充電したものか? 常にそのジレンマと闘い続けましたからね。

「夜は充電しながら、枕元にApple Watchを置いて眠ってください。朝になったら快適に目ざめられるように起こしてあげますから! その代わり、朝起きてから夜眠るまでは、どんなことがあってもヘルスケアデータの計測だけは続けられる工夫が施してあります……」。そんな落としどころこそが、バッテリー問題を解決するために、現状ではベストな選択肢となるのではないかと感じています。もちろん将来的には、もっともっとApple Watchのバッテリーが長持ちして、1週間くらいは充電なんて気にせず使い続けられるようになるのかもしれませんけどね。

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Apple Watchならではのヘルスケア機能

既存のスマートウォッチに共通しているヘルスケア分野の不満は、あくまでも受動的コンパニオンでしかないという現状ですね。1日の運動量もカロリー消費量も、基本は自分で画面をチェックしにいかないと目にすることはありません。まめに日記をつけるようにデータを確認するタイプの人もおられるでしょうけど、せっかく測定してはいても、あまりデータ自体は健康管理に役立てられていないというケースだって少なくないのでは?

でも、もしもスマートウォッチのほうから積極的にユーザーに声をかけてきて、ともすると忘れがちなヘルスケアのアドバイスを送ってくるとしたらどうでしょうか?

例えば、いつもの帰宅ルートをGPSで計測しながら駅に着いたとき、バスに乗ろうかと思った瞬間、歩数計の歩数が目標に達していないので「まだ今日は時間も早いし歩きませんか」とApple Watchが語りかけてくる。それを無視してバスで帰宅し、まずは食事だとイスに座ったとたんに、今日はカロリー消費量が少ないので「今晩はビールを飲んだらダメですよ」だなんて、Apple Watchから、運動をサボった罰としてチクリと小言まで飛んでくる!

実はGALAXY Gear Fitを着けていた時、誰かから電話がかかってきたわけでも、メールが届いたわけでもないのに、腕に振動が伝わってディスプレイを眺め、ニヤッとしてしまう瞬間がありますよ。それは1万歩の目標ライン達成したと知らせてくれるときです。通常は何歩動いているかなんて確認すらしないのに、そのメッセージがGALAXY Gear Fitのほうから発信されてくると、あっ、今日はよく歩いてるんだなって気づかされるタイミングなのです。

こんなふうにヘルスケアデータの測定値に基づいて、節目節目でApple Watchのほうからユーザーに語りかけてくる、まさに健康管理面でトレーナーの役割を果たしてくれるようになったら、アップルの思うつぼなのかもしれませんよ。だって、かかりつけの医者を頻繁に変える人はあまりいないのと同じように、強力なヘルスケアパートナーのApple WatchとiPhoneという組み合わせを捨ててまで、そう簡単には他のAndroidスマートフォンへ乗り換えられなくなってしまうんですから~。

そういう意味では、高度な医療機器かつ健康管理トレーナーにApple Watchを仕立てあげることこそが、アップルにとって最大の野望なのかもしれませんよね。それはユーザーにとって心強いことでもあると同時に、またアップル依存束縛にはまる恐ろしいことであったりするのかも。今日はApple Watchを家に置いたまま出かけようかなって思ったとしても、向こうから「Apple Watchを置き忘れていますよ」とSiriで警告してくる、いざ使いだすと二度と離れられない関係が始まってしまうのかもしれません。

source: Apple

(湯木進悟)