サムスン「NX1」レビュー。カメラはいいけどレンズがね・・・

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やはりレンズがネックか。

世界中でたくさんのカメラを販売しているサムスン。しかし今まではプロ向けというわけではありませんでした。1,500ドル(約18万円)の新しいNX1は、サムスン史上初めてのハイアマ・プロ向けカメラとして十分機能するカメラとなりそうです。4Kムービーの撮影と、超高速な秒間15コマの連続撮影が可能なのです。そう、素晴らしいカメラなんですが・・・、どうも満足のいくレベルではないようです。

NX1の外観は一眼レフのような形状をしていますが、実際はミラーレス機で236万画素の有機ELのEVFを搭載しています。センサーは2800万画素のAPS−Cサイズのものが搭載されており、これによりキャノンやニコンの中級機一眼レフよりも高解像度の撮影が可能です。おりしも、このセンサーは裏面照射型センサーの中では最も大きいサイズのものとなっており、センサー表面付近に配置されたフォトダイオードが光が集めることで、高解像度ながらも光量を効率的に上げ、ノイズ量を軽減することが可能となります。

重量に関しては、カメラ本体だけであれば同等クラスの一眼レフよりも重さも気になりません。ただ、サムスンの新しくてたくましい16-50mm f2.0-2.8のレンズと合わせてしまうと、誰しもが認める世界一重いミラーレス機となってしまいます。荷物は軽い方がいいということであれば、これを一日中運ぶのは嫌になるかもしれませんね。

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NX1の外観については称賛すべきといえるでしょう。クラシックな一眼レフの形状の要素をモダンに、けれどソニーのα99のようにダサくなることなく、上手く落とし込んでいます。カメラの曲面は均衡がとれていてなめらかで、美しいグリップと綺麗なラバーのテクスチャが前面に配されています。防塵防滴のシーリングも同様で、雨の中で好きなようにはしゃぎ回っても問題ありません。

また、コントロール周りは直感的に配されているため、新しいカメラであっても手にしてすぐ自然に指をどこに置けばいいかがわかり、すぐに操作を理解できるのがたまりませんね。親指と人差し指の下に絞りとシャッタースピードを操作するダイヤルがあり、ロック可能なモードダイヤルが上部、クリック感のあるコントロールダイアルが背面、とそれぞれ配置されています。

背面のダイアルにある4方向のボタンやボディ上にちりばめられたボタン類はカスタマイズすることも可能です。ただ、全て自由に機能を設定できるわけではありません。幅広い選択肢から思い通りに設定できればなおのことよかったかとは思います。幸いにもその他の設定へは、チルト可能なAMOLEDタッチスクリーンを用いればアクセス可能です。

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サムスンのタッチスクリーンのインターフェースは本当に素晴らしいといえるでしょう。まるで物理的にコントロールされているかのように、見るだけで理解できるほど簡単にできているんです。全てのメニューと設定項目にタッチでアクセスできますし、タップでフォーカスを合わせてシャッターを切ることも可能です。もちろん追加のタッチボタンやタッチ操作全般をオフにすることもできます。

このタッチ操作で一番大事なことは、ちゃんと使えるということなんです。タッチ操作がシームレスに使えるかについてうるさい方は多いかとは思いますが、これは本当に使えます。ただ、もし重た〜いレンズと一緒に使うのであれば、このカメラの重量は片手をタッチ操作のために空けるには重すぎるということをお忘れなく。もっと軽い小さなカメラであればこのタッチスクリーンは間違いなく操作を簡単にするものとなるでしょう。

サムスンがNX1に積んだインターフェースのデザインの良さも特筆すべき点でしょう。ハードウエア周りとタッチスクリーンについては前述したとおり素晴らしいのですが、ソフトウエアも驚くほど使いやすいのです。大手のカメラメーカーが数十年前のUIデザインを何度も使いまわして満足しているのに対し、サムスンはモダンな電子機器とインターフェースの専門性を生かし、それをNX1で表現してくれています。

いくつかメニューのレイアウトを見てみましょう。

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この画面とか、なかなかいいと思いませんか。

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最近では、オートフォーカスの良し悪しがカメラ上級者にとってミラーレスカメラの有用性を計る試金石となっています。この分野は一般的に一眼レフがリードしてきたところです。サムスンは205点のAFポイントと洗練された動体追尾機能を棚に上げ、NX1のAFを特筆すべき特徴だと大げさに語ってきました。

実際のところ、それは真実でもあり、また嘘でもあります。確かに私が今まで使ってきた他のミラーレス機と比べると、ソニーのα6000と並び間違いなくベストなAF性能を有しているといえます。しかし一方、動体に対してではフォーカスに迷いピンボケしてしまうことがあまりにも多く発生しました。高速なAF性能についていえば、NX1が一眼レフに勝つことはないようです。

とはいったものの、ほとんどのユーザーにとっては恐らく関係のない話でしょう。私も景色や人を1枚撮影するといった日常的な場面でフォーカスに困ったことはありません。このNX1の顔認識システムもよく磨き上げられており、6ヶ月の私の子供の笑顔も認識してくれます。このカメラは、フォーカスにおいては最も優れたミラーレスの一つとして評価したいと思います。スーパーボールをサイドラインから撮影するプロが手にすることはないというだけの話です。

ちょっと気まぐれなフォーカスの一例を見てましょう。

単純に1ポイントをタッチするフォーカスなら素晴らしいレスポンスを見せてくれます。

追尾フォーカスの場合上手く動く場合とそうでない場合がありました。最初のGIFでは、追尾点を動かしていないにもかかわらずフォーカスを完全に見失っているところが見て取れます。

もう一度やってみると上手く動いてくれました。

もしスポーツの撮影にNX1を使うなら、とんでもない連写性能を誇ってくれます。秒間15コマで追尾AFさせながらRAWでの撮影が可能なのです。これは感動的といえるでしょう。比べてみても、キャノンの7D MarkⅡですら秒間10コマです。もちろん、これはミラーレス界ではNo1でしょう。むしろ15コマは多すぎるのかもしれませんね。でもカメラにその能力があるなら、使わない手はないですよね。

洒落ているけど全く実用性のない、ただ面白いからあるだけのようなフォーカスモードも存在します。一番いいのはTrapShotでしょうか。これは縦線の位置を画面内で設定し、そこを何かが横切ると自動でシャッターを切るという機能です。私にはあまり役に立たなかったし、こんな風に撮るのは格好悪いとも思います。

さて、画像のクオリティについて見て行きましょう。これはいいですよ。いいですけど、驚くほどでもないですね。光量が十分にあるところであれば、色表現やダイナミックレンジという面において現在のAPS-Cサイズのセンサーを積んだカメラと同等の性能を発揮してくれます。しかしISO400を超えてくると、ノイズの多さにに驚いてしまいました。これがどの程度出るかは光量によりますが、露出不足の場合ではかなりひどいといえます。また光が少ない場合には、NX1は少し期待外れともいえます。NX1とキャノン 70Dを高感度で比較すると同程度のノイズ量が発生しますが、NX1のノイズの粒子の方はキャノンに比べてぼやけ方が大きく、不自然な見た目になってしまいました。

しかし、もっと大きな問題となるのはレンズです。私は幸運なことに、サムスンの上位のレンズである16-50mmF2-2.8を持っていました。このレンズはとても大きいのですが、とてもシャープで明るく、光学式手ぶれ補正も内蔵しています。しかし、皆がこの1,300ドル(約16万円)もするモンスターレンズに飛びつくわけではないでしょう。また、サムスンのその他のレンズ群は非常にラインナップが薄く、全部で13本しかありません。そのうち6本は絞り値が可変で3.5以下のズームレンズで、これでは表現の幅を制限してしまいます。一方で上位モデルについては少し奇妙で、やや変わった焦点距離とフォームファクターのものを備えています。

ソニーのEマウントもレンズのラインナップの少なさに対して批難されていますが、ソニーは少なくとも他社製アダプターを介することでほとんどのレンズ利用することが可能です。サムスンのレンズ群は増えてはいますが、新しくて、まだほとんど信頼性のないブランドにいきなり乗り替えるかは微妙なところです。

全画像はRAWで撮影されており、Flickrよりフルサイズの画像がダウンロード可能です。

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これがNX1を低照度で撮影した場合です。これはISO6400での撮影で100%でクロップしています。下は他のISOの場合です。

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ムービー

NX1を面白くしている要素として4Kの超高解像度ムービーが撮影できるという点があるでしょう。画質は素晴らしくディテールもしっかり再現されています。にも関わらずデータサイズは小さく扱いやすいです。ただし、ひとつ大きな注意点が存在します。NX1は比較的新しいH.265コーデックでエンコードすることでデータサイズを小さくしています。これにより、映像を編集しようと思っても一般的に普及しているFinal Cut Pro ⅩやAdobe Premiere Proといった大手のソフト上では一旦別のフォーマットに変換してからでないと編集できない、という欠点が生まれます。

これは時間がかかるといった問題だけでなく、どんな形式に変換するかにもよりますが、普通であれば動画データサイズは非常に大きくなり、HDDのスペースを大きく消費することになるでしょう。私はPremiereProで容易に編集ができるよう、NX1のファイルをiFFmpeg というソフトを使用してProResに変換しました。結果、NX1では350MBに収まっていた、たった30秒の映像が、なんと3GBもの量になってしまったのです。

嬉しいことにH.265のコーデックは現在人気を博しており、そう遠くない内に有名で人気の高い編集ソフトでもサポートされるでしょう。一眼レフで撮影したH.264の映像を編集前に変換していたのもそんな昔の話ではありませんでした。そんな光景今ではまず見ることができませんよね。ですが、NX1に動画のために投資するなら、次のステップにも関わる覚悟をすることになりそうですね。

コーデックのことに加え、NX1には楽しく動画撮影ができる要素がいくつもあります。AFは実用的ですが気まぐれなところがあり、素晴らしいキャノンのデュアルピクセルAFに比べれば及びませんが、それでもほとんどの動画撮影用スチルカメラと肩を並べるレベルです。低照度での映像の質はイマイチです。キャノンのフルサイズ一眼レフやソニーのα7sで1080pで撮影した映像の方がずっといいものができます。また、秒間120コマのスローモーションムービーが1080pで撮影可能なことも特筆すべき点といえるでしょう。4Kではありませんが。

NX1には最近のほとんどのカメラに搭載されているビデオ専用モードがありません。その代わりに背面のボタンを押すことでビデオモードのスタンバイ状態になります。すると通常のフレームとは異なるアスペクト比に変わり、オーディオ入力レベルとフォーカスが調整できるビデオ専用のタッチインターフェースに切り替わります。これは非常に素晴らしい。他のカメラの場合、ダイアルを回して正しい設定に切り替えるのはどうしても時間がかかってしまうので、スムーズに写真から映像撮影に切り替えるのは容易なことではありません。このカメラにはヘッドフォンとマイクロフォンジャック両方あり、4K映像を圧縮せずにHDMIで出力することも可能なので、動画編集のプロが必要とする要件はすべて満たしているといえるでしょう。

つまるところ、NX1は夢のようなとはいわないまでも、動画撮影にうってつけのカメラといえます。ただ、パナソニックのGH4はより小さくて軽いその筐体で4Kの撮影ができ、多くのレンズを使用できるることを考えると、そちらの方が実用的な選択肢かもしれません。

好きなところ

モダンなインターフェースやバランス良く配置されたボタン、感度の良好なタッチスクリーンのおかげで、非常に操作性が高いこと。

とても綺麗な4Kムービーが撮影可能なこと。

追尾AFが効く、秒間15コマのRAWでの連続撮影機能は、肩を並べるものが他にないこと。

一眼レフにはかなわないけれど、ミラーレス機よりも優秀な追尾AF機能を持つカメラのひとつであること。

防塵防滴のボディ。

好きじゃないところ

現在市場に出回っている他のカメラと写真の質が変わらないこと。特定の場合、とくに高感度域になると、画質が他よりも悪くなること。

面白いだけで実用性のない機能がたくさんあること。この製品のターゲットとされるセミプロ・プロユーザーにはまず使われないでしょう。

レンズのラインナップが少ないこと。これは写真家にNXを売り込む際の障害となるでしょう。

買うべき?

もし一眼レフかミラーレスを買うのが初めてで、操作をしやすくするための機能性が高いものを求めるのであれば、NX1はよい選択肢といえるでしょう。ですが、すでに他社のカメラやレンズを持っているのであれば、あえてサムスンの未成熟なシステムに移行するほどのものではありません。もしこのカメラに買い換える理由があるとすれば、唯一4Kムービーが優秀で将来有望だからというところでしょう。しかし、それでも私なら1700ドル(国内価格約11~15万円)のPanasonicのGH4(ボディのみ)のほうがレンズを群の多さや周辺機器を考えるとよい選択肢のように思えてなりません。

サムスンは確かにNX1で大きな挑戦をしており、実際多数の革新的な点を披露することができました。しかし他方でレンズのラインナップの貧弱さを天秤にかけないわけにもいきません。プロ向けレンズのラインナップが幅広く揃うまでは、NXシリーズはカメラという濃霧の中を漂う魂でしかないのかもしれません。

Michael Hession - Gizmodo US[原文

(小山和之)