新MacBookレビュー:薄さの代償は「大きい」

新MacBookレビュー:薄さの代償は「大きい」 1

待て。

うわー薄!軽!欲しい!と飛びつきたくなる新MacBookですが、ちょっと落ち着いて、現実的に使うとしたらどうなんでしょうか? 米Gizmodoのショーン・ホリスター記者が実際1週間ほど使ってレビューしてますので、どうぞ!

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新MacBookは、エンジニアリングにおける驚異のかたまりです。それは美しく、このサイズのコンピューターとしてはきわめて機能的です。でも僕には向いてないし、みなさんにとっても同じだと思います。とにかく、薄すぎるんです。

新MacBookって何?

アップルの最新超薄コンピューターです。小さな12インチラップトップで、信じられないくらい高解像度のディスプレイ搭載です。すごく小さいから、女性のハンドバッグにだって入っちゃいます。すごく薄いから、アップルは超薄いキーボードとタッチパッドも開発する必要がありました。すごくミニマリストだから、入出力ポートはUSB-Cポートひとつしかありません。それはたしかに未来感あふれる万能ポートですが、今実際に使うには何かしらのアダプタがほしくなります。価格はベーシックなバージョンが1,300ドル(日本価格14万8800円)。それでもRAMは8GB、高速なSSDが256GB手に入ります。

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どこがすごいの?

2008年、テックジャーナリストたちは初代MacBook Airをさんざんバカにしたものでした。たしかに封筒に入るなんてすごいけど、値段は高いし、そのわりにパワーはないし、デザイン的にもいくつか疑問なところがありました。でもひとたびその強みが強化され、弱みが最小化されたとき、Macbook Airは市場全体をひっくり返しました。今日売られている薄いラップトップのすべては、何かしらMacBook Airに負うところがあります。

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今、アップルは当時と同じことを試みています。アップルは新MacBookで自社のラップトップの将来像を描いただけではなく、競合が追随するであろう道筋をも示しています。ただ問題は、新MacBookの数ある特徴のうち、何が未来であり、何が間違いなのかということです。このレビューでは、その疑問に答えたいと思います。

一目ぼれする美しさ

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美しい、その一言に尽きます。アルミ製のくさび形ラップトップに食傷気味だったとしても、新MacBookには抗いがたい魅力があります。その魅力の源泉のひとつは、小ささ、軽さです。比べると13インチのMacBook Airが、はっきりと分厚く見えるほどです。重量はちょうど2ポンド(約920g)で、片手で軽く持ちあげられます。キーボードも同じ幅で、スクリーンはほんのちょっと小さいですが、フレームはあらゆる部分が劇的に薄くなっています。

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キーボード両サイドのアルミ部分はなくなり、大きなパームレストもなくなりました。パームレストの奥行きがなくなった分、手首に当たることがほとんどなくなり、個人的にMacBook Airとかそのクローンではそこがうっとうしいと思ってたところなので良かったです。またスクリーンを囲む分厚いアルミの枠もなくなりました。新MacBookにも一応ベゼルはありますが、その色は黒です。というのは、スクリーンのガラスが端から端まで1枚のシートになったためで、ガラスはディスプレイパネルに光学接着されているようです。

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そしてこのスクリーン。2304 x 1440の超高解像度Retinaディスプレイは、僕が見たことのあるラップトップのディスプレイの中では最高にくっきりと鮮明でカラフルです。それ以上かもしれません。新MacBookは一見巨大なiPadみたいで、うっかりパネルをつついてタッチに反応しないことにがっかりしたくらいです。でもiPadと同じように、そして他の超高解像度ラップトップとは違って、このマシンは軽く、目の高さに持ちあげてHD動画とか一眼レフ写真のディテールを見るのも楽でした。

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でも新MacBookで動画を見る楽しみは、スクリーンだけにあるんじゃありません。新MacBookの音質は、このサイズのラップトップとしては聞いたことのないものです。Pandoraを立ち上げてみて、その音の広がりに気づいたときはがく然としました。ドラマ「ザ・ソプラノズ」に自動車整備工場の場面があるのですが、それを見ているとき、ドラマの中の機械はこの部屋にあるはずだ、と断言できるほどでした。

ただ問題は、その動画や写真をどうやってこのラップトップに入れるのかということです。たとえば先日は電車の中で記事を書いていて、自分のキヤノンのカメラに入っている写真を使おうとしました。でも新MacBookにはSDカードスロットも、SDアダプタもありません。電源ポート兼用のUSB-Cポートがひとつあるだけです。

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事前にそれはわかっていたので、USB-C-USBの変換アダプタを買ってありました。で、別のラップトップ上でカメラからUSBメモリに写真を移しておいたんです。が…、変換アダプタを家に忘れてました。我ながらナイスジョブです。という具合で、自分はきっとUSB-Cを好きになると思っていたんですが、今のところ単なる負担でしかありません。

感圧タッチはまだまだ

感圧タッチに関してもほぼ同様で、期待していたけど実際は…です。ただ誰かをびっくりさせたいだけなら、こんな使い方があります。新MacBookをオフにしてタッチパッドを押し下げても何も起こらず、ほんのちょっと押せるだけで、下に物理的なボタンがないのがわかります。次に新MacBookをオンにして、もう一度タッチパッドを押してみます。すると、ちゃんとカチっという手応えが返ってくるんです。

つまりカチッというフィードバックが電気的に作られて、物理ボタンがあるかのように感じられるんです。その目的は、トラックパッドを強く押す操作にいろんな意味を持たせるためです。

2段階クリックができるようになりました。最初はクリック、強く押して感圧タッチ。

たとえばマップ上で感圧タッチすると、その場所にピンをドロップできます。Quicktimeでは、早送りや巻き戻しの速さを変えられます。Safariでは単語を辞書で調べたり、住所の文字列を押して地図を見たり、電話番号を押して電話をかけたりできます。

でも今のところ、感圧タッチからつねに感じるのはメリットではなく、デメリットです。まず現在、感圧タッチで何かできるのはアップル純正アプリの中だけに限られています。マップとかSafariとかカレンダーとかは、僕は使ってません。グーグルもマイクロソフトも、これらに対抗するアプリを持っています。それから、感圧タッチがどこで使えるかもまったくわかりません。iPhoneの長押しもそうですが隠しコマンドみたいなもので、その操作をすると何かができるっていうことを知っているか、使えそうな場面で試してみて試行錯誤するかが必要です。

でも最大の問題は、画面長押しとくらべて、強く押すのってけっこう難しいってことです。今までMacBook Airを数年使ってきて、タッチパッドのクリックはムダな負担であり、タップした方が楽だと感じてきました。そして今感圧タッチができるようになっても、それで可能になった機能の中で、タップ以上に速くできるものはごく少ないんです。

でもUSB-C同様、感圧タッチがすごいことになりそうだという予感はいろいろな意味で感じています。たとえばApple Watchには、ある端末の画面をタップすると、つながった端末を着けた人の手首をトントンと叩ける触覚フィードバック機能が搭載されています。同じことがこのタッチパッドや、さらにはiPhoneにも広がったらどうなるでしょうか? または、他の種類の通知にも広がっていったらどうでしょうか? それは非常に興味深いメッセージングプラットフォームとなりそうです。ただしそのプラットフォームを使うために、この新MacBookを買わなきゃいけないということはありません。

また感圧タッチの良いところは、押し付けられてはいないということです。オフにしてもいいし、無視してもOKです。新MacBookのトラックパッドは、それがなくてもラップトップで最良です。動作や反応は速く、バターみたいにスムースです。2本指でフリックして、Webの長いページが飛んで行くのを見るとうれしくなります。

キーボードはもっと残念

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キーボードについても、好意的なことを言えればよかったんですが…。僕は1週間みっちり仕事で使い、メールもたくさん、Gizmodoの記事もいくつか書き、他の記者とチャットもたくさんしました。このレビューも一言一句新MacBookで書いています。もう、この超薄いバタフライ構造のキーボードに慣れたと言ってもいいと思います。

先に良いニュースを言うと、1週間使ってみて、今までと同じくらいの速さでタイプできるということです。もしかしたら少し速くなったかもしれません。キーが薄くて反応がしっかりしているので、素早くバウンスして次の文字を打つことができるんです。

ただ悪いニュースは、もうバカバカしいほどに使い心地が悪いってことです。タイプは速く正確にできるのに、瞬間瞬間が気持ち悪いんです。指を固い面に打ち込むような力が必要で、骨に衝撃を感じます。他のラップトップを使ってみた瞬間、それが僕の定番であるThinkPad X240でなく他のものでも、ほっとひと息ついてしまいます。

特に、高さ半分の上下矢印キーは最悪です。文字を打っているときはいいんですが、文書の中で矢印キーを使っていると、えんえんとストレスを感じます。

しばらく13インチMacBook Airと12インチ新MacBookを両方交互に使ってみて、両方のキーボードを試してみました。すると、たしかに新MacBookの方がより正確で安定した感じはするんです。それでも僕は、迷うことなく不安定な方を選びます。

でも、これほど薄いラップトップにキーボードバックライトを埋め込んだのは素晴らしいです。キーひとつひとつの裏に配置されたLEDは便利でもあり、見た目にもきれいです。

パフォーマンスも課題

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新MacBookはインテルのCore Mプロセッサ搭載で、小さい筐体にリチウムイオン電池をなるべくたくさん詰め込むために薄いバッテリーを積み重ねた構造になっています。それを聞いて僕は、このマシンは性能的には劣るけど長時間使えるってことだろうと思い、それが順当だとも思っていました。今まで僕が試したCore Mプロセッサ搭載のWindowsマシンはみんなそんな感じでした。そしてアップルは、バッテリーライフを長く引き出すためにOS Xを最適化することに非常に長けています。

驚いたのは、その逆だったということです。アップルはOSではなくCore Mのほうを最適化し、スピードを優先したんです。新MacBookは基本的な作業では古いMacBook Airとほとんど変わりませんが、同等のWindowsマシンと比べれば明らかに速いです。僕がこれを使っている間はずっと動きが遅くなることはなく、PhotoshopをインストールしながらWebブラウザ2種類を立ち上げ、Evernoteも操作しようとして初めておかしくなりました。ただ遅くなるときは、かなり遅くなりました。

AnandTechのようなサイトのベンチマークを見ると、Core i5搭載のMacBook Airと肩を並べるにいたっていないのが明らかですが、ゲームをしたり写真や動画編集をしたりしない限り、その違いに気づくかどうかはわかりません。それに必要なときは、ちゃんと動くんです。

僕はざっくりしたテストとして10MBの動画をPhotoshopでアニメーションGIFに変換してみたのですが、新MacBookは僕の最新世代Haswell対応Core i5搭載のThinkPad X240よりほんの数秒遅い程度でした。負荷のかかるゲームだとちょっと不安がありますが、Borderlands 2とかBioshock Infiniteは新MacBookのベーシックな方でも動かせました。ただ、プレイできる状態と言っていいかどうかはわかりません。

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ただその分、バッテリーに負担がかかっています。僕の場合新MacBookは1回の満充電で6時間使えていましたが、今までの僕のMacBook Airだと8.5時間使えました。6時間というのは大して悪くなく、これだけ小さなラップトップとしては素晴らしいんですが、この差によって充電ケーブルを持ち歩く必要性の有無が変わってきます。

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少なくともUSB-Cがもっと広く普及するまでは、そこが懸念です。新しいUSBコネクタが今のmicro-USBと同じくらいスタンダードになれば(多分いつかそうなりそうですが)、MacBookの充電もスマートフォンの充電と同じくらい簡単になるかもしれません。ただ、知らない人のケーブルを借りるのは避けたほうがいいです。新MacBookの充電は、ちゃんと適合したアダプタを使えば比較的早く、大体1分に1%くらいずつ入っていきました。

好きなところ

ヒンジのテンションやバランスは、完ぺきです。新MacBookはテーブルに置いたまま1本指でフタを開けても、ベースは全然動きません。スクリーンはどんな角度にもできてしっかり固定できますが、後ろには45度くらいまでしかいきません。

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僕個人的には16:10のちょっと背が高いアスペクト比が気に入っていて、他のメーカーが同じようにしない理由がわかりません。ともあれ、アップルが今これを採用してるのはうれしいです。

新MacBookのスクリーンを見ると、幸せな気分になります。周りがどんな明るさ/暗さでも、何時間でも見ていられそうです。屋外で使うときは十分明るくなり、iPad Air 2みたいなアンチグレアコーティングもされています。夜ベッドで使うときは、隣にいる奥さんを起こさないように暗くもできます。非常に良いです。

Core Mプロセッサということはうるさいファンがなく、熱くもならないということです。ただし新MacBookの底には、ヒンジの近くにすごく熱い場所が1ヵ所だけあるのですが、それで困ったことはありませんでした。

USB-Cの充電ケーブルは、充電器から取り外せば、汎用的なUSB-Cケーブルです。ケーブルが傷んだり、犬にかまれたりしても(実話)、高価なMacBook専用充電器を買う必要はありません

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スピーカーは、これだけ薄いラップトップのものとしては僕が聞いた中でベストかもしれません。薄くなった今もヘッドフォンジャックがあるのはうれしいです。

色が選べるのもすごく良いです。僕はこのスペースグレーが非常に好きだし、ゴールドバージョンも派手すぎはしません。

好きじゃないところ

そもそもこのラップトップは、どうしてこんなに薄くなきゃいけないんでしょうか? 僕はMacBookにもっと薄くなってほしいと思ったことはありません。スクリーンがよりきれいだとか、軽いとかは良いんですが、新MacBookにおけるそれ以外のイノベーションは、ひたすら薄くするための工夫のように感じられます。そこまで薄さを求める人がいるのかってことです。

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キーボードは全然しっくりきません。どうして機能的にはこんなに素晴らしいにもかかわらず、使用感が気持ち悪いんでしょうか?

USB-Cはすごいんですが、ポートがひとつしかないのは本当に本当に不便です。なんでふたつないんでしょうか? SDカードリーダーもないし、純正アクセサリとして存在してもいません。

ビデオチャットを使う人なら、FaceTimeカメラが480pでしか撮れないのも気になるでしょう。かなり粗くて、iPhoneに付いてるのよりずっと画質が下がります。なんでかわかりませんが。

感圧タッチの強さ設定は3段階あるんですが、どれもしっくりきませんでした。強い設定が一番マシですが、これだとかなり強く押す必要があり、軽い設定だと、ガラスに指を押し当てるような軽すぎる感じです。

感圧タッチに対応したSDKも公開されているので、最終的にはいろんなアプリで感圧タッチが使われるようになると思ってはいます。ただ現状では、OS全体で自動的に感圧タッチが使えるんじゃなく、アプリごとに機能が設定されている必要があります。つまり今は電話番号とか住所が表示されても、感圧タッチで電話をかけたり地図を確認したりできるのは、基本的にアップル純正アプリだけなんです。次のOS Xでは、その種の機能がアプリに関係なく使えるようになればと思います。

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買うべき?

だめです。待ちましょう。僕の予想はこうです。新MacBookは2008年の初代MacBook Airと同様、今後出てくるもっとメインストリームで手頃で、ちゃんと使えてなおかつ美しいマシンに向けた前振りに過ぎません。毎度のことながら、何事も早く取り入れる人たちがアップルの研究開発に対価を払うことになります。が、そうじゃない人たちも、感圧タッチやUSB-Cポート、よりコンパクトなデザインや素敵なヒンジが次の本当のMacBook Air後継機で使われれば、その恩恵に預かれるようになるはずです。

アップルは現在まだ従来のMacBook Airを販売していますが、そのデザインやスクリーンは古ぼけて見え始め、Windowsの競合機に対する相対的な魅力も、バッテリー以外は低下してきています。新MacBookは、そんなMacBook Airの進化形を示しています。でも実際MacBook Airが進化するときには、バッテリーライフの優位性は保とうとされるはずです。ということは新MacBookより若干厚みがあり、そしてキーボードももっと使いやすくなっていることを期待したいです。

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Asus UX305 VS. 新MacBook

でも、今すぐ薄いラップトップが欲しい人もいます。その場合はどうすればいいんでしょう? 正直、13インチMacBook Airはまだまだ信頼できる選択肢ですが、WindowsならデルのXPS 13とか、HPのSpectre x360、ASUSのUX 305だって良いかもしれません。みんな比較的薄くて、でも新MacBookみたいに無理やり薄くはしていません。だから価格は何万円も安いし、キーボードだって気持よく使えて、必要なポートもフルに付いてます。

それでもとにかく新MacBookを買ってしまったとしても、別にまあ、ちゃんとしたコンピューターなんだから良いんじゃないかと思います。ただ、期待するほどじゃないかもしれません。新MacBookは、飛行機のファーストクラスへのチケットじゃありません。それはどちらかというと、コンサートの最前列の席みたいなものです。席は狭いし、うるさいし、座り心地は悪いし、にもかかわらず歓喜の声をあげなきゃいけないかもしれません。それはたしかにホールで一番良い席なんだけど、そこに座るなら、アップルというバンドのものすごいファンであったほうが良さそうです。

Sean Hollister - Gizmodo US[原文

(miho)