ベルの受話器は人間の耳だった

ベルの受話器は人間の耳だった 1

二度見、三度見、四度見しても、そう書いてるんですよね…。

プリンストン大学出版局が出した「Vocal Apparitions: The Attraction of Cinema to Opera」というアマゾンレビュー0件の55ドルのハードカバー本にこんな一節がありました。訳しておきます。

電話が発明される前の数年間、エジソンが登場する前から人間と動物の器官は聴覚シグナルの録音・伝播目的で使われていた。

1829年に話す機械が発明された際にも、周波数を音に変換する部分には人間の舌を模してつくられた弾力性のある舌が使われた。1857年、蓄音機の針が発明される前の発明品にはボサボサのイノシシの短い毛が舌のかわりに使われていた。

1874年、アレクサンダー・ベルが人類初の受話器の試作機を発明した際には、人間の死体の耳から採取した耳の皮膜を使った。人類初の受話器は実のところ人間の耳だった。生きた人間の声を死んだ人間の耳を介して送る機械だったのである。

この電話は人間の不在と死を強く意識させることから、不安を呼んだ。機械は虚ろな声を送り続け、あたかも最期には死の沈黙が訪れることを絶えず指差すかのようだ。プルーストはこの電話で聞いた祖母の声をこう書いている。

「こんなに遠くにいるのに、声はこんなに近く聞こえる! 本当に存在するようでもあり、それがまた、永遠の別れの予兆にも思える! 遠くの祖母の声を聞いていると、二度と生き返れない黄泉の国からの泣き声にも聞こえ、いつか帰らぬ人となった祖母の声が蘇ってこの胸を掻き毟り懐かしさのあまり口づけをしようとするとたちまち灰燼に帰する、そんな将来の不安に駆られることもしばしばだった」

プルースト…。

source: Vocal Apparitions: The Attraction of Cinema to Opera via Rough Type

(satomi)