カラーバーやユタ・ティーポット。テストパターン誕生の逸話とは?

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ふむふむ…。

テレビのカラーバーやダミーテキストのロレム・イプサム。テクノロジーに満ちた世界では、映像機器の調整や原稿のレイアウトを確認などにこういったテストパターンは欠かせません。

広く知られているものから、人知れずに大事な役割を果たしたモノまで、テストパターンが誕生した経緯にはなかなか興味深いストーリーがあります。例えば、CG分野で標準的な3Dモデルとなったユタ・ティーポットは映画「トイ・ストーリー」にカメオ出演を果たしていますが、その誕生の経緯など…様々なテストパターンの誕生秘話を探ってみましょう。

ロレム・イプサム

ロレム・イプサムとは、あらゆるレイアウトのサンプルで目にするダミーテキストで、本当のラテン語でも真っ赤なインチキな語でもない文章のこと。おおもとになっているテキストはキケロのDe finibus bonorum et malorum(邦題「善と悪の究極について」)からの一節ですが、ラテン語が分かる人が読んでも解読できないよう単語を省いたり、変えられたりしています。元のテキストの始まりは「Neque porro quisquam est qui dolorem ipsum quiadolor sit amet consectetur adipisci velit...」という感じのもの。これが最終的には、英語に出てくる文字の頻度と単語の長さを近づけたテキストになったのです。タイポグラファーが最初にロレム・イプサムを使い始めた時期は定かではありませんが、しかし現在のバージョンはアップルMacintosh向けに開発されたPageMakerから広まったそうです。

SMPTEカラーバー

深夜にTVのチャンネルを回すと現れた単調な音とカラフルな帯を覚えている人もいるのでは? その“音と帯”は、正式には米国映画テレビ技術者協会(SMPTE)のエンジニアリング・ガイドラインEG 1-1990というものでモニターを測定するために使われます。

素人目にはランダムな配色の帯に見えるものは、実は入念にレイアウトされたテストパターンなのです。例えば、黄色、シアン、緑、マゼンタ、赤、青といった色は輝度の高い順から配置されており、正しいホワイトバランスを調整するために使われます。カラーバランスの調整に使われるblue onlyモードでは、中段の帯が上段と同じように見えます(下図参照)。CBSが開発しテストパターンは2001-2002年の技術・工学エミー賞輝いたそうですよ。

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インディアン・ヘッド・テスト・カード

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テレビ用のテストパターンというのは白黒テレビの時代にもありました。そのパターンというのはアメリカ・ラジオ会社(RCA)が、セットオーナーがテレビの画面を調整できるように開発したもの。テストするのに、インディアン・ヘッドを描画する線が細かったり太かったりする点が都合よかったのでしょうか。今となっては、インディアン・ヘッドを使うようになった経緯は謎のままです。

ハーバード・センテンス

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第二次世界大戦中、ハーバードの心理音響学の研究所は軍の通信機器をテストするための例文一式を開発しました。一式10個の例文からなるこのリストは音声学上のバランスがとれ、音素の周波数を私たちが普段話す英語に近づけたものです。現代人からすると滑稽に聞こえるものの、VoIPからの携帯電話のネットワーク品質に至るまでハーバード・センテンスは音声通信をテストするため、現在でも広く使われています。ハーバード・センテンスの歴史について知りたい方には米ギズの過去記事もどうぞ。

カンタベリー・コーパス

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スクリーンショット via Data Deduplication

デジタルデータで保存することの面白い点といえば、PCにあるフォルダをzipファイルに変換すると中身を損なわずにより少ない容量へと圧縮できること。カンタベリー・コーパスは、研究者たちがこのタイプのアルゴリズムをテストするのに使うコーパスです。それは1997年にカンタベリー大学で開発された11のファイルからなるコーパスで、シェイクスピアやミルトンの作品は使われているものの「カンタベリー物語」を書いたチョーサーの文章は使われていないんだとか。元々あったカルガリー・コーパスの改善版として、取って代わっていったそうです。

ユタ・ティーポット

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ユタ・ティーポットのレンダリング画像Dhatfield/Creative Commons

時は遡って1970年代、グラフィック研究者のマーティン・ニューウェルは自宅にあったティーポットをスケッチします。彼は、コンピュータ上で画像をレンダリングできるデータとして、3Dの造形を表す方法を考えていました。スケッチとともにティーポット型の3次元座標が完成し、現在でも研究者たちなら知っている3Dモデルの基礎となったのです。

「トイ・ストーリー」や「シンプソンズ」のエピソードにもこのティーポットはこっそりと登場しており、実物はカリフォルニア、マウンテンビューにあるコンピュータ歴史博物館に保管されているんだとか。

「The quick brown fox jumps over a lazy dog」

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パングラムには、アルファベットの各文字が少なくとも1回ずつ使われています。The quick brown fox jumps over a lazy dog(「茶色のキツネがノロマな犬を飛び越える」という意味)は初期のタイピングの練習で使われ、多くのタイポグラファーが開発したフォントのサンプルで使用するようになり、次第に広まっていきました。このパングラムはフォントのサンプルに使われる最も有名な英文ですが、パングラムとしては完璧ではありません。アルファベットの各文字を1回のみ使用している完璧なパングラムは「Cwm fjord bank glyphs vext quiz」。とっても覚えにくいんですけどね。

Sarah Zhang - Gizmodo US[原文

(たもり)