通信速度制限後の低速通信のみで生きられるか? サバイバルレポート

通信速度制限後の低速通信のみで生きられるか? サバイバルレポート 1

よいことだってあるもんね?

昔はネットといえば、電話線アナログモデムを毎回つないで利用していたんです。それも、そんなにはるか昔々の話ではなく……。スマートフォンでのネット接続ですら、4G LTEスピードがスタンダードになろうとしている現在、あの低速通信の時代にタイムスリップさせられる瞬間があるでしょうか?

実はパワーユーザーほど経験することがあるようですね。そう、インターネットを使いすぎてしまったときに受ける速度制限。これまで数Mbpsクラスのスピードでつながっていたのに、突如として128kbps200kbpsなどの低速でしかつながらなくなる悪夢です。あれって、どれだけ使いものになるのでしょうか?

このほど米GizmodoのAndrew Spaulding記者は、低速通信のみで一週間を生き延びられるか?という過酷なサバイバル体験に挑むことを決意しましたよ。その壮絶なスローネット生活は、きっと低速通信環境でスマホを使わざるを得ないときのサバイバルガイドとして大いに参考になることでしょう。

ピーヒョロヒョロガーガーガーガー。懐かしい音を奏でながら、電話線からインターネットにつながった古き良き日々へ~。

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通信速度制限後の低速通信のみで生きられるか? サバイバルレポート 2

低速通信の完全サバイバルガイドを用意するうえで、実際のテスト環境は単純です。僕が基本的に毎日のインターネットに使っているのは、iPhone 5とMacBook Proのみ。これらはすべて没収。MacBook Proは、触ることすらできないように、遠くに住んでいる友人の家にお預けですね。ただ携帯電話は連絡用に使えないと困ってしまいますから、モバイルのデータ通信をオフ、Wi-Fi接続も完全にオフにして使い続けるとします。

それにしても、モデムでのインターネット接続が主流だったころは、ブラウン管のCRTモニターディスプレイにGatewayのデスクトップPCという組み合わせなんて流行っていましたよね。でも、いまそんなパソコンはどこにも転がっていません。そこで、まるで当時の56kのアナログモデムでしかネット接続できないスピード制限をしてくれる「NetLimiter」なるソフトウェアを強制導入。このソフトで通信速度制限がかかったパソコンのみを一週間使用し続けることで、モデム時代のインターネットライフへとタイムスリップしてみましょう!

56kモデムが発売されて、おぉっ、これぞ高速インターネット……だなんて感動していた時代もあったんですよね。最初は編集部から3日間だけのチャレンジにしてみる? そう尋ねられていたのですが、軽い気持ちで大胆にもチャレンジ期間延長を自ら願い出て、低速通信のみの一週間へと挑みましたとさ。

低速通信環境の厳しい現実

例えば、いつもボクはGmailを使っていて、オンラインでメールをチェックしています。Gmailのページには低速通信用のオプションまで用意されており、メールチェックならば大丈夫だなという印象を抱きましたね。各メール本文の読み込みには、56kbpsの疑似スピードでさえ、それほど時間はかかりません。次から次へ順番にメールを読み進める作業は、わりとストレスを感じることなく行なえます。でも、通信速度が大幅に制限された状態でできることって、お世辞にもこのレベルのタスクだけですというのが正直なテスト結果でしょうかね。

メール本文こそチェックできるものの、そこに大きな添付ファイルがあったり、動画へのリンクなんて埋め込まれていようものなら、もう一巻の終わりです。Facebookを使うのはやめておいたほうがよいでしょう。ほとんどの写真は読み込むところまでいかず、ストレスにしかならないでしょうからね。まだFacebookならば、かろうじて読み込まれたテキストから友人のアップデートを想像できますが、Tumblrなんて完全に使いものになりませんでしたよ。

よくよく考えてみると、アナログモデム全盛期のころって、Flashが使われているサイトすらほとんどありませんでした。YouTubeが登場してきたのは2005年です。つまり、もしもブロードバンドが普及しなければ、YouTubeも各種ストリーミングサービスも、ここまで流行することはなかったのでしょうね。

今度は音楽アルバムのダウンロードへと挑戦することにしました。まずは.rar形式の圧縮ファイルのダウンロードをがんばってみます。でも、現実は20分かかって10MBまで落とせたのが最高記録でした。きっとアルバムとの相性が悪かったんじゃない? 気を取り直しまして、今度はMarilyn Mansonの「Smells like Children」で再トライ。でもやっぱり大容量ファイルなんて、56kbpsの疑似スピードのままでは落とせっこありません。これなら最初から粘ってトライして時間を無駄にしたりしなければよかったのに~。

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そして、どんなにネットは遅くともやめられないのはポルノの鑑賞。

そういえば、親が寝静まったころに、こっそりとパソコンを立ち上げ、毛布で覆ってアナログモデムの接続音が外へ漏れないように、アダルトサイトを深夜に隠れて閲覧していたな。それでも興奮していたわけですよ。あのころともっとも大きく変わったのは、アダルト業界の進歩なんだとも思います。いまとなっては低速通信だと、ろくにポルノすら楽しめないってことかな……。

低速通信に戻ってよかったこと

すべてが低速通信でしか行なえなくなって、なにかよかったことはあるかですって? インターネット接続が苦痛でしかないとき、人はスマートフォンもコンピューターも利用しなくなってしまうということがわかりました。おかげで、めったに見ることもない、眠っていたDVDソフトで映画を鑑賞したりしましたよ。

もし僕が独りだけでネットを利用するライフスタイルならば、決意のほどによっては問題ないのかもしれませんね。でも、いま低速通信環境の最大の敵は、自分ではなく周囲のユーザーです。みんなが基本的に常時ネットにつながっているのが普通のライフスタイル。YouTubeを一切見ずには楽しめない。高速通信前提でしか作られていないウェブサイトが多すぎる。クレジットカードの利用だって、低速通信では使いものにならない。こうなると、やはり人は自らもハイスピードのインターネットがないと無理だと感じてしまうものなのでしょうね。

実は僕は時計としてもiPhoneに完全に頼り切る生活をしています。ところが、不運なことに、低速通信環境サバイバルチャレンジの期間中にサマータイムへの切り替えがあったんですよね。iPhoneがあったら、いつもサマータイムなんて勝手に自動で時計を早めてくれるのが当たり前。でも、モバイルデータ通信もWi-Fiも切ってiPhoneを使っていると、周囲は時計を進めているのに自分だけ1時間遅れのまま! 会社に遅れないわけがない!

僕だけインターネットから切り離したライフスタイル。僕だけブロードバンドの常時接続をやめる。そうしようとしても、もうアナログモデムの通信速度で十分だった昔にすら、片時も帰れないというのが本音なのかもしれませんよね~。

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あくまでも今回のAndrew Spaulding記者のチャレンジは、56kbpsという世界をパソコンで強制的に疑似体験したものです。格安SIMの速度制限のみでサバイバルに挑戦したというわけではありません。それに、128kbpsや200kbpsという一般的な速度制限後の通信速度であれば、56kアナログモデムよりは使いものになるでしょう? そう思われる人もおられるでしょうね。

では、スマートフォンの低速通信の料金プランだけで生き抜くことは可能でしょうか? よほど身のまわりではWi-Fi環境が整っているとしましょう。たまにWi-Fiにつながらないときだけ、上で紹介されていたような低速ではできなかったこと以外を利用する……。こういう利用スタイルのユーザーならば、十分に速度制限下でも生き延びられるのかもしれませんよ。ただし、その成功は、どれほど自分の決意が強く、周囲のみんながサクサクと高速通信を使っていても惑わされない意志の強さがあるかにかかっていそうですけど。

*この記事はHopes&Fearsに初出、米Gizmodoに掲載したものを翻訳しています。

Andrew Spaulding - Gizmodo US[原文

(湯木進悟)