庵野秀明x川上量生対談「アニメの『情報量』とは何か」ダイジェスト #ニコニコ超会議2015

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庵野秀明x川上量生(かわんご)x氷川竜介(司会)がお送りする「アニメの『情報量』とは何か」という対談を聞いてきました。

観客にはパヤオ(宮﨑駿さんのコスプレ)までいらっしゃって、大変な期待感に満ち溢れていました。

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「情報量」という言葉に反応して、理系的にアニメの世界や庵野さんのことを理解しようとするかわんごさんと、あくまでも職人でありアーティストである庵野さんのズレが面白かったです。同じ山について語ってるんだけど違う方向から見ている、みたいな。

以下、特に面白かった部分をピックアップします。

なぜこの対談?

川上 僕、ジブリで見習いしてたときに知ったんですけど、アニメの世界では「情報量」って言葉を、現場でみんな使ってるんですよね。情報ってなんだか「情報理論」っぽい言葉じゃないですか。なぜこれがアニメ業界で使われているかというのに興味をもって、「コンテンツの秘密」という本を書きました。そして、このことについて庵野さんと話すのであれば、本に書いたより先についても語り合えるのかなと思って、対談をオッケーしました。なんか本の宣伝みたいで嫌なんですが(笑)。

庵野 入門書としてはいい本ですよね。表現をするときに何がどういう風にどうなっているかを紐解くにはいい本です。

「情報」「情報量」とは?

庵野 「アニメスタイル」という、業界の人がたくさん読んだ本でインタビューを受けたときに、「情報のコントロールが一番大事だ」という話をしたんです。そうしたら業界の人に大反発されましてね。褒めてくれたのは押井さんくらいでしたね。「庵野はバカだと思ってたけど実は頭いいんだ」って(笑)。

当時はアニメは情報じゃない、想いとか熱意だとか魂を込めるものなんだって言われたけど、もちろんそれもあったうえで、それも含めて情報なんですよね。

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庵野 情報量というと書き込み量を連想するけど、アニメの世界で、書き込みが流行ったのは80年代と、その前の『宇宙戦艦ヤマト』ですね。ヤマトは本当に線がすごく多かった。オープニング映像観ただけで、ああもう一生ついていこうとおもった(笑)。あれがアニメの世界で情報量が増えたきっかけですね。

次がマクロス。マクロスはどんどんディティール増やしていった。情報量を増やしていった。

氷川 劇場版マクロスのときに「情報量が多い」って言葉を初めて使ったんですよね。あの書き込みをどう表現していいかわからない。そのとき「情報量」って言葉が出てきた。

庵野 線の情報量、色の情報量、あと影が増えていったというのもありますね。

川上 動きの情報量って増えたんですか?

庵野 動きの情報量は変わってないですね。でも動かすものの情報量が変わった。それと、動きの気持ちよさ情報ですね。その量も変わった。

それと、音も情報量ですね。音は情報が増えてます。風立ちぬはわざと音を1.0チャンネルでやってましたね。音は真ん中から出てくればいいという発想はわかるんです。画面は一箇所なのに音があちこちから聞こえたら気が散る。それはわかります。僕も1.0チャンネルでいいと思うんだけど、音の合成が難しいし、音をちらばしたくなるときもあるので、7.1chを使っちゃいます。いきなり横から声を出して驚かせるとか、そういうときに活用します。

アニメーションの良いところ

庵野 お客さんに何をどれだけ見せるか、与えるか、感じ取れるか。

アニメーションの場合は、それを隅々まで全部コントロールできるとこが良いですよね。キャラクターや背景の動きのタイミングまで全部コントロールできるので。

実写の良いところ

庵野 アニメだと、自分で考えた範囲内しか出てこない。実写のいいところは自分を超えたところがいろいろ入ってくることだと思います。

アニメーションを作る上で大事にしていること

川上 アニメをつくっている現場を見ていると、割と科学的に、工学的に作っているようにみえるんですよね。

庵野 それはそうですね。全部計算して作っています。最後の最後に計算しきれないところが出てくきちゃうのが面白いんだけど、そこに至るまでは理屈で作っていかなくちゃいけない。

理屈の部分を崩しちゃうと、お客さんが戸惑っちゃうんですよね。お客さんも同じ理屈の上で見ているから。理論やり理屈なりはお客さんと作り手が共有していないとわからないんだろうなあと思う。

マンガもそうですよね。コマの運びとか、セリフの枠の形の意味がわからないと、読めない。

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庵野 宮崎駿さんってコンポジット(映像合成)に力を入れないんですよね。フィルム時代のものをデジタルでも再現しようとしている。

でも僕は、あれ以上に行きたい。せっかくデジタルなんだから、デジタルでしかできないことをやりたいと思います。

情報のコントロール

川上 僕の本(「コンテンツの秘密」)では、情報量は多ければ多いほどいいっていう話をしているのですが、情報をコントロール、特に情報を減らすときのコントロールって、あるんですか? それはどういうときにしてるんですか?

庵野 お客さんに何を一番伝えたいか。伝えるために情報量をコントロールします。

伝えるためにノイズの情報を減らすこともあるし、逆にメッセージを誤魔化すために情報量を増やすこともある。ごまかすというのは、例えばものすごく人がいっぱいいると、1人1人は見ないで全体としてみるじゃないですか。そして「このカット迫力ある」ということになる、とかですね。

鶴巻さんが日本アニメ(ーター)見本市でやっていた「I can friday a day」がわかりやすいと思うんですけど、まず背景は、ここがどこですよっていう情報が最低限あればいいので、書き込まなくて薄くていいんですよね。あとこの作品の場合は、女の子も可愛いという情報が最低限伝わればいい。

その分、メカとかの部分にガッツリ情報を詰め込んでいる。そういう書き分けをして落差を出している。それが情報のコントロールということです。

エヴァンゲリオンでの情報のコントロール

庵野 エヴァンゲリオンでも、何もないところとものすごく書き込んでいるところを使い分けているんです。

16話を作っている時、アテレコを撮るとき映像ができてなかったんですね。そこで、セル画にマーカーを引いて。赤い線が出てたらシンジがしゃべって、青い線はレイ、黒い線はミサトと声優さんにお願いしたんです。線が波打っているときはワーッと叫んで、線が切れたら叫ぶのをやめるとか。

それを見てた時思ったんですが、線だけでセリフ入れられるし、線だけが一番アニメっぽくていいやって思いましたね。

庵野さんの仕事のやり方

川上 庵野さんって、宮﨑駿さんと違って、絵コンテあまり描き込まないですよね。文字で指示したりもしているし。

庵野 アニメーターのヤル気を引き出すために、敢えて絵コンテはあまり描き込まないようにしています。最低限の設計図だけ渡している。それだとやりにくいという人にはちゃんと描いて渡すけど、出来る人が来てくれた場合には大幅に任せちゃうこともある。絵が下手な人しかいない場合は、下手な絵でもクオリティ高く見えるように、絵コンテから描き直す。

僕は絵コンテをハブにしていますね。設計図じゃないし完成予想図じゃない。絵コンテを元に、もっと何をどうした方がいいというのをギリギリまで話し合いたい。ギリギリまで粘ると大変なんだけど、でもそれだけのものは出来てくる。端っこに影を少し足しただけで印象が変わったりする。どうせ作るなら、そこまでこだわりたい。

情報の受け取られ方について

川上 今回の僕の本は面白いんですよ。こういう本はこれまでなかったと思う。

クリエイターも最終形をわからず作ってるんですね。そして見てる方も何を見てるかわからない。(コンテンツって)わかってない人同士のコミュニケーションなんだなって思う。

庵野 それはしょうがないですね。見てる人の経験の範囲内でしか見れない。僕はよくラーメン屋に例えるんです。店主がこのくらいの濃さのスープがいいかなと思って出しても、お客さんは濃すぎると感じたりする。

川上 まあサービス業ですね。

庵野 多くの人に向けてのサービスと、特定の人に向けてのサービス、いろいろありますね。

川上 自分のためのサービスはないんですか?

庵野 ないですね。鶴の恩返しみたいなもので、自分を削って作ってる。こういう作り方しかできないので仕方ない。最初は手を抜いて作ろうとしていたものも、結局ギリギリまでやってしまう。これはもうしょうがないんです。性ですね。

川上 エヴァンゲリオンは次いつ公開されるのかって、庵野さんに聞くのが一番間違ってるんですよね(笑)。ネットのファンの予想が一番正しかったりする。

日本アニメ(ーター)見本市について

氷川 日本アニメ(ーター)見本市の企画が出てきたきっかけや、出てきた作品を見て、どう思いますか?

川上 みんな自由にやっててすごいですよね。商業作品って、狙いがすぐにわかるじゃないですか。見本市の作品は「そこ狙うのか!?」みたいなのばかりですよね。

庵野 同じ感じの作品がひとつもない。バラバラで多様性がすごいのがいいですね。例えば「オチビサン」のストップモーションって、落ち葉を一つ一つ手作業で動かしている。お弁当も本当の食べ物を使ってお弁当作っている。手作業の裏に人の魂がこもっている。そのエネルギーってやはり画面から伝わってくるし、それは情報量の「量」だと思いますね。

川上 ストップモーションというものそのものが、手作業がすごすぎてちょっとおかしいと思いますものね(笑)。

最後に

庵野 昔から、これからも、やってることは変わらないんじゃないかな。

川上 本買ってください(笑)。印刷の一週間前まで、ギリギリまで書いていたんですよ。僕は結構満足できたんだけど、出版の人は可哀想でしたね。

source: ニコニコ超会議

(いちる)