化粧品業界が進める皮膚の培養・3Dプリントってどんなもの?

化粧品業界が進める皮膚の培養・3Dプリントってどんなもの? 1

これで動物実験がなくなるかも。

大手化粧品会社のロレアルが、人体組織の3Dプリント技術を持つOrganovoと提携しました。新製品のテストなどに使う人工皮膚を作るためです。

でも、ロレアルではもっとずっと前、20年以上前から人工皮膚を培養してきたらしいんです。研究室で皮膚を培養とかホラーな気もしますが、そんな皮膚はいったいどんなものなんでしょう? そして3Dプリント技術で、それはどう変わっていくんでしょう?

Bloombergがこの提携について詳しく伝えています。その記事によると、ロレアルは人工皮膚の培養の先駆けで、フランスに「Predictive Evaluation Center」なる専用施設まで持ち、最近新たに上海にも研究所を作っています。「Predictive Evaluation(直訳:予測的評価)」とは、具体的には新製品や新素材が人間の皮膚や目に与える影響をテストする、ということです。多くの化粧品会社ではいまだに動物実験に頼っていますが、ロレアルは動物の代替とするために1990年に人工皮膚培養を開始し、今では動物実験を完全にゼロにしています。

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ロレアルが作る皮膚サンプルがどんなものかというと、面積は約0.5平方cm、厚さは最大1mm以内のごくごく小さなものです。原料は、乳房や腹部の整形手術で患者から寄付された細胞です。「Episkin」という製品名もあります。ニューヨーク・タイムズが2007年、この細胞の培養手法について伝えています。

Episkinを作るには、乳房と腹部の整形手術後にドナーの角化細胞が集められる。それはコラーゲンゲルの中で培養され、水とアミノ酸、糖に漬けられ、次に10日間空気乾燥されるか、紫外線にさらして大人の皮膚に近い状態にされる。

Episkinは年間10万個以上生産されていて、面積にすると全部で5平方メートルほどになります。またロレアルでは皮膚だけでなく、目に触れる可能性のある製品をテストするための角膜も培養しています。

で、皮膚サンプルができたあとはどうなるんでしょうか? 新製品のテストってどんな風にするんでしょうか? 2012年にThe Telegraphが伝えたものがこちらです。

私が訪問したとき、研究室のアシスタントたちは、ピンクのヘアコンディショナーをPOLOミントほどのサイズ、タバコの巻紙ほどの薄さの皮膚が載ったトレーに塗布していた。別の研究室では皮膚に紫外線が照射され、日焼け止めクリームの効果が判定されていた。

ロレアルが作る皮膚サンプルの半分はこうした自社の製品テストに使われ、半分は外部の製薬会社や競合化粧品会社に販売されています。が、培養に手がかかる分それは高価です。2011年時点では、1サンプルだけで70.62ドル(現在為替で約8600円)もしたそうです。

そこで、ロレアルとOrganovoの提携の話になります。米国カリフォルニア州サンディエゴにあるその研究所では、すでに約10年ほど人体組織の3Dプリント技術を開発しています。彼らはこれまで製薬会社や医療施設と提携したことはありましたが、化粧品会社との提携はこれが初めてになります。

Organovoの手法はバイオプリンティングと呼ばれ、指定した構造の細胞をプリントできる極めて精細なプリンタヘッドを使っています。ロレアルは、自社で長年積み上げてきた経験とOrganovoの新たな技術を組み合わせて、人工皮膚をより安価に早く大量に作ろうとしているんです。

そうすれば、結果的にロレアル以外の企業での人工皮膚利用が進み、その分動物実験が減っていくことにつながるかもしれません。3Dプリント技術のおかげで動物実験がなくなるとかなんだか「風が吹けば桶屋がもうかる」みたいな話ですが、でも本当にそんな風につながってるんですね。

Image:Organovo、L'Oreal

source:BloombergThe Verge

Kelsey Campbell-Dollaghan - Gizmodo US[原文

(miho)