ベライゾンのAOL買収が意味するメディアの恐ろしい未来

2015.05.25 21:00
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

150523_verzaol.jpg


先日、アメリカの大手通信事業者ベライゾンがAOLを買収することを発表しました。米GizmodoのMario Aguliar記者はこの買収をとても心配しています。通信会社とメディアの統合にはどんな未来が待ち受けているのでしょうか?


***


ベライゾンが44億ドル(約5260億円)でAOLを買収した件は、ウェブ業界へのきまぐれな投資なんかじゃありません。この買収劇はこれまでの邪悪なメディアコングロマリットのような、メディアと通信が組み合わさった巨大企業を生み出します。そしてもろもろの事実を考えてみると、今回の買収はさらにタチの悪いものになるかもしれないのです。


ベライゾンはなんてものを買ってくれたんだ!


90年代、AOLがダイヤルアップインターネットで一世風靡したことを覚えている人も多いでしょう。AOLには今でも数百万人の契約者が残っているのですが、この10年でダイヤルアップは絶滅寸前。現在のAOLは、ハフィントン・ポストエンガジェットテッククランチMapQuestなど数々のコンテンツブランドを抱えています。その裏で、AOLは広告事業、他社の広告配信を支援するプラットフォーム事業を手がけています。最後の部分がつまらなく聞こえるかもしれませんが、実はこれがAOLの戦略上で鍵になっているもの。AOLのプラットフォーム事業は、ブランド事業と比較して、3倍の速さで成長しています。

簡単に言うとベライゾンは、コンテンツ制作広告を手がける企業を買ったのです。


通信大手からメディアコングロマリットへ


すでにベライゾンは、1億800万のリテール客を抱えるアメリカ最大のモバイルネットワークを支配する巨大通信企業です。さらにブロードバンド事業のFiOSサービスにも、670万のインターネット契約者、570万のビデオ契約者がいます。とにかく巨大。AOLのTim ArmstrongCEOがCNBCで話したところによると、70%のインターネットトラフィックベライゾンのネットワークを通っているんだそうです。

AOLの買収で、ベライゾンはメディア界においても大きな存在感を示すことになるでしょう。ベライゾンはすでにメディアやコンテンツを流すパイプを支配しているのに、これからはそのパイプに流すコンテンツすら、自分のものになるのです。そのコンテンツには広告だけでなく、影響力のあるオンラインニュース報道事業も含まれるでしょう。4月にPoynter Instituteが発表した最新レポートによると、ハフィントン・ポストはアメリカ国内で最もアクセス数が多いオンラインニュースサイトです。AOLの他のコンテンツや広告についても説明する必要はないでしょう(AOLが今回の買収でハフィントン・ポストをスピンオフさせるかもしれない、という噂もありますが、通信会社のベライゾンがメディア事業に挑戦してきていることが気になります)。

ベライゾンがどんどんメディアコングロマリットに見えるようになってきませんか。ケーブルテレビ、ブロードバンド、そしてNBCユニバーサルを所有するコムキャストと比べてみてください。他の例では、アメリカ最大のラジオ局で、コンサート会場、屋外広告を抱えるiHeartメディア(旧Clear Channel)なんかもあります。

少し話はそれますが、グーグルがどのくらいメディアコングロマリットになりつつあるのかを考えるのもおもしろいです。グーグルは既存のオンラインコンテンツ、広告ビジネスに加え、グーグルファイバーや最近発表したモバイルサービス、プロジェクトFi通信サービスにも進出しつつあるところです。

ビジネスの観点からすると、統合は理にかなっています。パイプを持っているなら、その中を流れるすべてのコンテンツからお金をとることも可能でしょうから。そしてこのVerzaol(VerizonとAOL、架空の名前)は「メディアの向かう方向」に、特にぴったりなんです。AOLはブロードバンドそしてモバイル利用への変化にうまく対応しているインターネットコンテンツ事業者です。ひとことで言うと、ケーブル離れはAOLを助ける。そして、ベライゾンはモバイルとブロードバンドの巨大なプロバイダー。「メディアコングロマリット」という言葉は正しいでしょうか? モバイルとインターネット、そしてコンテンツが一枚岩になった会社を表す新しい言葉が必要なのかもしれません。


そう、心配すべきなんだ


ベライゾンがどんどん巨大になるというのは不安の種になっているでしょう。コムキャストのような通信メディアの大企業は、市場の競争を阻害して、私たち消費者は不愉快な思いをすることばっかりです。ベライゾン&AOLにさらに似ているグーグルは、だいぶ前に「邪悪になるな」という社訓を捨て去ってしまいました。プロジェクトFiを発表した際に指摘したとおり、グーグルのモバイルサービスへの意欲は、プライバシーにとって悪夢となりえるものです。

ベライゾン自身には、これまでも消費者にコストを負担させるような裏工作をしてきた実績があり、数々の重要な問題に反対しています。具体的に言うと、ネット中立性について、ベライゾンはずっと頑固に反対している企業です。

ネット中立性の議論のとき、ベライゾンはネット中立性NSAによるスパイ活動を取り扱わないことを裏で決めたテック系ウェブサイトを立ち上げようとしました(SugarStringというこのウェブサイトはのちに閉鎖)。見苦しいですが、ベライゾンのやり口はこれだけにとどまりません。その後、米連邦通信委員会(FCC)が正式にブロードバンドを公共事業と分類したときには、ベライゾンはそれが時代にそぐわないものだとアピールするために、モールス信号で声明を発表したんです。こんな反ネット中立性の大企業が今回の買収でさらに拡大することは、オープンなインターネットを維持するうえで、非常に大きな障害となるかもしれません。

報道の独立性も課題です。今のところ、影響力の大きいメディア事業のコンテンツに、ベライゾンが口出ししてくるかはわかりません。でも想像しておいてもいいでしょう。もし私が競合でもあり仲間でもある、エンガジェットやテッククランチのデスクに座っていて、ベライゾンがそのメディアをめちゃくちゃにしようとしたら…ああ、どうするべきかわからない。自分のキャリアを危うくするようなことをしてまで、ベライゾンのダメなところを指摘したくなるでしょうか?

さまざまな面からして、虎の威ならぬAOLの威を借るベライゾンは、史上もっとも恐ろしいコングロマリットの始まりと言えるんじゃないでしょうか。コムキャストの例にも似ていますが、プライバシーについても心配しなきゃいけないところが違います。

Verzaolは、インターネット回線を売り、その回線上のコンテンツ消費を監視して、その監視結果から広告を売る会社になるんです。そう、それはまるで、あなたの周りに手を伸ばして消費するものを与え、そして最後にはすべてを食べ尽くしてしまう巨大なイカのような。


Mario Aguilar - Gizmodo US[原文
(conejo)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Apple USB Super Drive MD564ZM/A
  • アップル
  • Apple ハイビジョン対応 Apple TV MD199J/A
  • Apple Computer
特別企画

家事で空気は汚れる? 「Dyson Pure Cool Link」でチェックしてみた

Sponsored by Dyson 風が強くて気持ちいい扇風機と、微細なアレルゲンも取り除いてくれる空気清浄機。2in1なダイソン・エアマルチプライアーシリーズ最新モデルが、さらなる進化を遂げました...
続きを読む»

・関連メディア