ポストIDMの革新者、スクエアプッシャー特別インタビュー「すべてのテクノロジーが人間に必要とは思わない」

ポストIDMの革新者、スクエアプッシャー特別インタビュー「すべてのテクノロジーが人間に必要とは思わない」 1

見えないアイデアを形にする考え方。

サンプラーやシーケンサー、MIDI、コンピューターをフルに投入して、「IDM」(Intelligent dance music)と呼ばれるようになったジャンルが生まれたのが、90年代初期。あれから20年近くが経ち「EDM」なんて音楽も出現しましたが、IDM初期から今でも活動を続けるパイオニアの一人でとんでもない才能の塊なのが、イギリス人エレクトロニック・ミュージシャンのトム・ジェンキンソン、通称「スクエアプッシャー」。

ダイナミックで予測不可能なデジタルビートを大音量でぶち撒けたと思えば、穏やかなベースを演奏する圧倒的な技巧を持ち合わせ、見る人に強烈なインパクトを残します。デジタル音を極限まで映像化した実験的なビジュアル体験と、商業主義に流されない音楽哲学が加わって、世界で多くのフォロワー(と議論)を生み出し、ここ日本も例外なく、根強い人気を誇るアーティストとして、今年でデビュー21年目に入ってもそのアンチ・ポップカルチャーな活動に磨きがかかります。

そのスクエアプッシャーが、5月15日(金)、16日(土)に日本で単独公演では11年ぶりにライブを開催します。最新アルバム「DAMOGEN FURIES」を聴いて実感したのですが、音楽的に進化速度が衰えるどころかスピードアップしていて、それは昨今のテクノロジーが進化する勢いだったり衰退とも照らし合わせて見ることができます。来日直前のスクエアプッシャーが今回、音楽や今世界中で起きているデジタルの進化について、ギズモードのインタビューに答えてくれました。

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クリエイティブであり続けるための「変化」

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ギズモード(以下ギズ):クリエイティブなアーティストである以上に、常に「変化」し続けることがあなたの代名詞になっています。「変化」を受け入れるタイミングや変化を選ぶ考え方について教えてもらえますか?

「私の中で、“変化”への衝動は非合理的なあり方から生まれる。自分の中でそれは、考えをまとめるプロセスの最中に決めるわけではなく、ある時に“ずれ”を感じた瞬間に決断する。そのずれがネガティブなものになれば、その時は変化をつける時だ。

私が大事にしていることは、クリエイティブの情熱と自発性を保ち続けることだ。この変化を受け入れるには、音楽を作る上で当然ながら一貫性や整合性を失う危険もある。しかし私はそんなことはちっとも気にはしていない。

最悪なことは、音楽家の作品から退屈感を抱かせることだ。まったくもって憂鬱で馬鹿げたことだと思うよ」

アナログレコードは、とにかく馬鹿げている

ニューヨークで行われた「Damogen Furies」リリースイベントの模様

ギズ:「DAMOGEN FURIES」では、ご自分で音楽制作用にソフトウェアをデザインされましたね。ソフトウェアを作ろうと思った関心はどこから湧いてきたのですか?

「独自のソフトウェアを構築したことへの基本的な考えは、市販されているハードウェアやソフトウェアの制限から自分自身をフリーにしたかったことがある。私が長年不満に感じていたことの一つは、こういうことだよ。もしある特定のサウンドを作ろうとすると、現状のデバイスにはそのサウンドを作るだけの能力がないのさ。だから私が見つけた最良の解決法は、自分でソフトウェアをデザインするということだった。

ソフトウェアやハードウェアを作る企業達は、ミュージシャンを可能な限りサポートしたいと思う一方で、商業的な利益に傾きがちだと言える。彼らのビジネスには、私のクリエイティブ・プロセスにとって必ずしもポジティブとも有益ともいえない。だから私は企業の関心が作品作りに影響を与えないように注意している」

「音楽カルチャーに似ているよ。フォーマットが変わる度に、新しいハードウェアを買いなおさなければならない。

例えば、アナログレコードの復活がまさにそれだ。ある意味、あれは良いことだけど、とにかく馬鹿げている(笑)。80年代には音楽業界はCDは良い、CDを買えと言った。だからみんなCDを買ってそのためのハードウェアを買った。そしたら今は『いやいや、アナログは良いよ』と言っている(笑)。

黙れって言いたいよ(笑)。放っといてほしい。

本当にイライラするよ。すべてビジネスだ。そんなものとは、関係を持ちたくないね」

流動性と自発性をプログラム

ギズ:「DAMOGEN FURIES」ではこれまであなたのトレードマークだった生演奏はどのように取り入れたのでしょうか? インストゥルメンタリストとして、数学的かつロジカルなコンピューターによる音楽制作とは、どう共存できるのですか?

「音楽をプログラムする時は、即興しながら音楽を作る時と同じ状態で作業するようにしている。考え方の観点で言うと、流動性を保つようにする。そしてアイデアの観点で言うと、自発性を保つようにする。だからベースギターやドラムで作業する代わりにコンピューターに向かうからと言って、特別にプロセスが変わるわけではないね。

楽器でもそれぞれ使い方によって変化するけれど、ただ私の考え方は同じだ。実際、ベースギターの方がより早く流れるように演奏が出来る。だからと言って、楽器での表現が常にベターとは限らない」

人工知能は音楽と共存できるのか? それとも侵食するのか?

ギズ:テクノロジーの世界では「人工知能」があらゆる場面に出現しています。自動車、スマホ、家庭...。近い将来、人工知能が音楽の世界にも入ってくると予想できますが、あなたはどう思いますか?

「この問題については、疑問視しているよ。私は、ほとんどのテクノロジーを疑問視するようにしている。ある意味、テクノロジーは優位性をもたらしてくれると同時に、多くの問題点をもたらす。

私は自分の作品を、社会に影響を及ぼすテクノロジーの進化に対する反論だと思っている。なぜなら多くの場合大衆とテクノロジーの進化が交わる過程には、商業的な動機が込められている。だがほとんどの場合、多くの人はテクノロジーの進化をそこまで必要としていない。

すべてのテクノロジーが人間に必要とは思わない。問題は、それが人々の生活を良くしたかどうかだ。私はテクノロジーに反対する人間ではないが、賛成しているわけではない。もしテクノロジーが目の前にあれば、自分の答えを見つけるまでだ。

人工知能を取り入れるかどうか、存在するかどうかなどは、私にとってはどうでもいいことだ。ある意味、自分には何の影響にもならない。

私は何ででも音楽を作ることができる。重要なのは、私の頭の中にアイディアがあることだ。そして、それをどんなベーシックな方法でも、最も先進的な方法でも表現することができる。私は自分のキャリアがこの多様多種なアイデアの幅を実証していることと望むよ」

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質問には、哲学者のように言葉を選びながら丁寧に答えてくれるスクエアプッシャー。それは底知れない頭の中を手探りで探り答えを探そうとする人間的な作業。ビジュアル的にもテクノロジストと一見思われがちなスクエアプッシャーは、実はオーセンティックで人間性を重要視する思慮深い人です。

音楽や映像を作る上でテクノロジーと絶妙な距離感を保ちながら向き合う考え方に、創造力を生み出す人間の価値を感じました。

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リリース情報

アーティスト:スクエアプッシャー(Squarepusher)

新アルバム:「DAMOGEN FURIES」

レーベル:Warp Records/Beat Records

リリース日:2015年4月21日

詳細情報はこちらからどうぞ。

ライブ情報

日時:5月15日(金)OPEN/START 18:00

場所:恵比寿ザ・ガーデンホール

チケット:前売 5,940円(税込)

日時:5月16日(土)

場所:スチールの森 京都

チケット:前売 7,500円(税込)

詳細情報はこちらからどうぞ。

source: SquarepusherBeatink

(企画・執筆:鴻上洋平)