本邦初公開! 世界最大の映像配信サービス「Netflix」CEOにカルフォルニア本社でインタビューしたよ #ネトフリ

2015.06.01 19:00
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本邦初公開! コンテンツ界の巨星にギズモードが初潜入。

ピーク時には、全米のネットトラフィックの37%を占めたというモンスターなインターネット映画・TVドラマ配信サービス「Netflix(ネットフリックス)」。今秋、日本上陸がアナウンスされていて、すでにいろんなところで騒がれています。なにしろ、スケールがずば抜けてすごい。世界50カ国で展開し、会員数は約6200万人以上(2015年5月現在)。月額8.99ドルのサブスクリプション(定額制)で、米国では全世帯の1/4が利用しています。日本の感覚でいう「映像配信」サービスというより、テレビ放送のチャンネルの一部に近いイメージで定着し、ライフスタイルを変えてきました。


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日本ではまだまだイメージできませんが、スマートテレビが普及している国は多く、オンラインコンテンツが「お茶の間」を席巻しつつあります。海外で発売されているほとんどのスマートテレビに「Netflix」と書かれた赤いボタンが付いていることがそれを如実に示しています(日本でも東芝 / Panasonic / SHARP / SONYが採用)。もはやNetflixが視聴しやすくなってないスマートテレビは売れないという状況。

一方、ギズモード読者の中で、テレビ離れをおこしている人は少なからずいると思いますが、スマートフォンやタブレット、PCに加え、Apple TVなどのセットトップボックス、PlayStation、Wii、Xboxといったゲーム機でも豊富なコンテンツが視聴できるNetflix(以下ネトフリ)がサービスインするなら、あわせてスマートテレビの導入を考えてもいいという潜在的ユーザーは多いのではないでしょうか。

そんな興味から今回のカリフォルニア州ロスガトスにあるネトフリ本社の取材が実現しました。


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シリコンバレーの一部であるカリファルニア州ロスガトス。この閑静な高級住宅街にあるオフィスをまわっていて感じるのは、IT企業のそれではなく、コンテンツ、特に映画へのリスペクトに溢れた独自のカルチャー。

視聴室はポップコーンマシーンが設置されミニシアターのような作りだし、そこかしこにオリジナル番組の登場人物に扮した社員の写真やコスプレグッズが。なんだか映画の配給会社みたいです。そう、ネトフリのもうひとつの特徴が、日本でも「ハウス・オブ・カード 野望の階段」などで知られるハイクオリティなオリジナル作品ラインナップが揃っていること。1億ドルの制作費をかけた「ハウス・オブ・カード 野望の階段」は、デヴィッド・フィンチャーという最高のクリエイターに自由な制作環境を提供し、視聴者データから「今何が一番見たいのか?」を徹底的に分析して制作されたことにより、エミー賞を受賞。この成功を機に、ハリウッドの有名映画監督にネットドラマシリーズを制作依頼する新しいトレンドが生まれました。


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不意に背後から、「よう! うちのオフィスはどうだい?」なんて流暢な日本語で話しかけられたり、ほぼ全員が日本茶メーカーのペッドボトルを持ち歩いて移動していたり(どうやらそれがクールという位置づけらしい)、妙に日本に親和性が高いのも不思議なところ。

そんな日本びいきも手伝って、社風と戦略、すべての礎を築いたCEO&ファウンダー:リード・ヘイスティングスさんのインタビューにこぎつけることができました。時価総額1兆円を超える企業のトップなのに、ギズモードのことを知っていることがまず驚き。かなり気さくな感じで話をきけましたよ。


Netflix CEO: Reed Hastings(リード・ヘイスティングス)さんインタビュー


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ギズモード(以下ギズ) はじめましてギズモードです。今回、本社のスタッフのみなさんに取材させていただいて、全3回の記事シリーズでとりあげる予定です。

Reed Hastings(以下リード) 嬉しいです。クラウドやテクノロジーに関する話は、きっとギズモード読者も気に入ってくれると思いますよ。

ギズ リードさんは以前AIの研究をされていたエンジニアだったそうですね。そうしたバッググラウンドはネトフリのビジネスモデルに反映されているのでしょうか?

リード もちろんあります。未来のエンターテインメントは個人にとってますますパーソナルなものになっていきます。オンライン上で、膨大な番組や映画から検索するとき、ユーザーはどちらの番組を気に入るか? もしくはソフトウェアがどのように各家庭の好みを学習していくか? こうした観点はテクニカルな命題からきています。ニール・ハント(チーフ・プロダクト・オフィサー)にはもう会いましたか? 彼は何でも知っています。ニールに比べれば私なんかはちっぽけなエンジニアですよ(笑)。


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ギズ ネトフリに加入しているユーザーは全世界で6200万人以上。この人たちの細かな嗜好性がわかるという点も加味すると、世界有数のデータ企業とも言えるのでは?

リード わたし達が保有しているのはエンターテインメントに関するデータだけです。番組に関するものだけ。マッピングデータやロケーションデータは持っていないです。グーグルはNetflixより100倍くらい多くのデータを保有しています。もちろんテレビ番組や映画について言えばNetflixは抜きん出ていますし、大量のデータを保有しています。しかし、我々はあくまでユーザーが番組を選ぶ手助けをするためにデータを活用しています。データは次にどんな番組を制作するかについても教えてくれます。知識に基づく直感、確信です。これは価値あるものです。みなさんが記事を書くときも同じかもしれません。ギズモードで何が人気か理解していても、それだけでは次に何を書くべきかわからないでしょう?


これからの「テレビ」


ギズ たしかに。あなたが以前、ベルリンのメディア・コンベンションでスピーチされたときの動画を見たのですが、旧来の形式のテレビはあと20年でなくなるかもしれないと予測する刺激的な内容でした。そんな中、ネトフリとともに、20年後もサバイブしていくエンタメ企業はあると思いますか?

リード リニアテレビ(従来のテレビ放送)はインターネットに取って代わられつつあります。この流れはまだ始まったばかりです。リニアテレビからインターネットテレビへ完全に移行するのに、あと20年くらいはかかるでしょう。固定電話は携帯電話に取って代わりました。とはいえ、いまだにNTTグループは巨大な企業であり、携帯電話会社でもあります。同じようにNHKや他の放送局もインターネットテレビ会社になるはずです。固定電話会社が携帯電話会社になったのと同じことです。

また、インターネットテレビは非常に競争が激しいです。例えば固定電話業界は独占状態で、改革が遅いなどの特徴があります。しかし携帯電話については新しいテクノロジーが次々生まれ、競争も激しくなったでしょう? インターネットテレビも同様なんです。チャンネルが増えるほど、より激しい競争が生まれます。これがエンターテインメントの未来です。これはNetflixや放送局などにとっては大変なことですが、消費者にとっては素晴らしいことです。消費者は競争の恩恵を受けることができるからです。

その頃のスマートテレビのあるべき姿とは、たくさんのアプリを備えた巨大なiPadのようなものになっていると思います。旧来のテレビチャンネルはアプリケーションにとって代わられるでしょう。つまりアプリを開発することができれば、テレビ放送局を作ることだって可能なわけです。


「自由と責任」が生むクリエイティブ


ギズ あなた方は、DVDの郵送レンタルサービスというプラットフォームビジネスからスタートし、やがてストリーミング放送のサブスクリプションサービスへと移行し、今ではオリジナルのコンテンツを制作するまでに至りました。これはどのような理由からですか?

リード HBOやFOX、AMCなど多くの放送局は、他の人が制作したコンテンツを使ってビジネスを展開し、成功してきました。それから各放送局オリジナルのコンテンツを制作し始めました。放送局にとっては非常に一般的な流れです。

ギズ でも、データを活用したユーザー志向の分析がなければ、「ハウス・オブ・カード 野望の階段」みたいな作品は作れなかったのでは? 旧来の保守的なテレビ局の発想でこれは作れないですよね。

リード データは確かに役に立ちました。しかし、素晴らしいアートを作り上げるには人間が頭を使って判断することが必要です。データはあくまで知識に基づく直感を与えてくれるものなんですよ。


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ギズ お話を聞いていると、ネトフリはプログラミングやテクノロジーに注力している一方で、クリエイティブなコンテンツも大切にする社風がある気がします。

リード グーグルやフェイスブックはテクノロジーに強く携わっています。一方でピクサーはエンターテインメントとエレクトロニックアート、つまりテクノロジーとエンターテインメントの会社です。Netflixも同じくテクノロジーとエンターテインメントの会社であり、従業員の3分の1がロサンゼルスでコンテンツの開発を行なっています。

ギズ その成果がネット配信で初公開されたドラマシリーズとして史上初めて受賞したプライムタイム・エミー賞(監督賞・撮影賞)とゴールデン・グローブ賞(ドラマ・シリーズ主演男優賞)ですよね。かなり画期的な出来事でした。

リード もちろんとても興奮しましたが、あれはわたし達への賞ではありません。ケヴィン・スペイシー(主演男優賞)が受け取った賞です。彼こそが番組を素晴らしいものにしたのです。ウゾ・アドゥーバ(オリジナルシリーズ「オレンジ・イズ・ニュ
ーブラック」に出演)がエミー賞で最優秀女優賞を受賞し、彼女の才能が評価されたことも非常に嬉しく思っています。

まだまだわたし達の影響は微々たるものです。テレビ番組について言えば影響力は大きくなりつつあるかもしれません。ただし映画に関しては始まったばかりです。今後の5年、10年で影響力を拡大していきたいです。

ギズ いやいや、謙遜しすぎだと思いますけど...。これだけ成功した要因はなんだと思われますか?

リード テレビにストリーミング配信したのが、Netflixのユニークな点です。モバイルやラップトップに向けてストリーミング配信するというのは、すでに多くの人が行なっていたことです。Netflixはスマートテレビやテレビへのストリーミングを一般的にしたのです。

ギズ ちなみに社訓は「フリーダム(自由)&レスポンシビリティ(責任)」だそうですね。オフィスだけでなく、業務上もみなさんそうしたスタンスを持っていて、会社のカルチャーとして浸透している印象を受けました。

リード 2002年に株式を公開し、成長を続ける中で「どんな会社でありたいか?」や「何を追求していくべきか?」を考えることが必要になりました。それについてディスカッションを重ねた結果、自由と責任にたどり着きました。この両方が必要であると。

ギズ 先ほど、チーフ・コンテンツ・オフィサーのテッド・サランドスさんのインタビューで「デヴィッド・フィンチャー監督に発注したらもう中身には絶対口出ししないよ。フリーダム&レスポンシビリティだからね」と伺いました。

リード それは現場の責任者と仕事をするうえで、わたし達が最も誇りにしていることのひとつです。デヴィッド・フィンチャー含め他のクリエイター達に対しても自由と責任を大事にしています。彼らはそれをとても喜んでくれています。他の放送局と一緒に仕事をする場合、そうはいかないこともあるからです。

ギズ そこは良質なエンターテインメントを提供する企業としてのアイデンティティーと捉えていいですか?

リード もちろんです。わたし達はクリエイティブなビジネスを行なっています。航空会社であれば自由は必要ありませんよね? 大事なのはチェックリストと安全性、航空会社にとっては安全性が第一です。Netflixにとってはイノベーションとクリエイティビティが最も大事なんです。


ネトフリが起こすイノベーション


ギズ あなたのバックグラウンドはエンジニアリングで、イノベーションこそが一番大事なことなのでは?

リード そうは思いません。人が喜んで自ら動くのに必要なことは何なのかは、ずっと前からわかっています。それは自由とコントロールの両方です。自由を尊重する組織はすでに存在していて、単にわたし達が他より目立っているだけだと思います。

何百年以上も工場やそれに伴う工業的なメンタリティは存在しており、経済は管理する人間と労働者で成り立っています。そんな中、教育を受けた人々がクリエイティブな経済を新たに発展させてきました。多くの人が、旧来の経済原則におさまらない新しい経営について学びはじめています。私たちもまだまだ工業的なメンタリティに影響されていますが、クリエイティブなメンタリティについてこれから学んでいこうとしています。

ギズ ネトフリは、全米の映画館がないような田舎町にも、エンターテインメントを提供することを実現しました。日本に上陸したら同じことがおきるのでしょうか?

リード 日本において最初の数年は、そこまで全国的な広がりをターゲットにはしていません。どちらかというと、あなたのようにApple Watchをつけているような人(笑)、つまり新しいことが好きなアーリーアダプターにNetflixを試してほしいと思っています。まだまだ映画館に行く人はいるでしょう。そのほうが楽しいし社交的です。あくまでテレビをよりよくするのがネトフリです。家にいながら腕時計やスマートフォンとテレビを連携させることができれば、もっと便利になるでしょう。インターネットテレビというと、しばらくはアーリーアダプターが対象になります。そういえばApple Watchはどうですか? 時間が分かるっていうだけですか?

ギズ そんなことはないですが、Apple Watchでネトフリが観られたらいいなあとは思います。

リード バッテリーがものすごい勢いで減るかもしれないですね(笑)。

ギズ 創業以来、ロスガトスに本社をおいているのは、この地に思い入れがあるからですか?

リード 特に無いですね。世界全体に興味があります。ドイツやイギリス、アムステルダム、日本にもオフィスを作りましたから。わたし達は世界中の人々とコンテンツとを繋ぐ架け橋となりたいんです。例えばメキシコ、日本、フランスで素晴らしい番組を制作し、それをどこでも観られるようにしたいですね。なので、1つの場所にとどまるつもりはありません。

ギズ 日本オフィスに行ったらでっかいエスプレッソマシンがあって、リードさん直々のご指名で導入したとお聞きしましたが、本当ですか?

リード もちろん。私たちはいつも時差ぼけに苦しんでいるので、エスプレッソは必須なんです。

ギズ 日本のスタッフからは、いいエスプレッソマシンはそれだけ手間がかかるから、待つ人たちのコミュニケーションが捗るという狙いだとお聞きしたんですが。実はリードさん自身がどこの国のオフィスに行っても、同じ味のエスプレッソを楽しめるようにしたかっただけなんですね。

リード (周囲を見回しながら顔を近づけて)おおっと。経営機密を漏らしちゃったみたいだね(笑)

ギズ 最後に素晴らしいアメリカンジョークをありがとう! 楽しかったです。


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続く #ネトフリ シリーズ第2弾、第3弾は、ネトフリが誇るスタッフ達に、オリジナルコンテンツを制作する裏側、ハードウェアの普及に先行してストリーミングによる高画質(4KからHD、さらに新フォーマットまで)配信に取り組んでいる理由、そして「視聴者本人よりも番組の好みがわかる」特別なアルゴリズムに基づいた革新的レコメンド機能やストレスフリーなストリーミング・テクノロジーについて直撃します。お楽しみに。


photo: Kaori Suzuki
source: Netflix

(尾田和実/取材協力:Elephant Studio、Haruka Mukai)

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