Photoshop生みの親と大物写真家が語るPhotoshopの過去・現在・未来

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1990年、写真編集ツールの雄「Photoshop」がリリースされました。そして今年で25周年。おめでとうございます!

Photoshopといえば、僕が若いころはかなり高額で、なかなか買えない、ほんとうにプロ向けのツールでした。その代わり、Photoshopに似た画像編集ソフトが多数存在し、それはそれでおもしろかったという思い出があります。

そんな僕も、今は日常的にPhotoshopを使うようになりました。それもこれも、アドビが提供する「Adobe Creative Cloud」の「フォトグラフィプラン」のおかげ。毎月980円でPhotoshopやLightroomといった写真編集ソフトが使えるのですから、いい時代になったものです。

そこでギズモードでは、5月20日と22日に行われたアドビ主催のイベント「DIGITAL PHOTO & DESIGN 2015」に登壇した、Photoshopの生みの親であるトーマス・ノール氏と、写真家のレスリー・キー氏に直撃。Photoshopのこと、現在の写真界のことについてお話を伺いました。

あの動画を見ていただきました

ギズモード編集部(以下ギズ):こんにちは、本日はよろしくお願いします。まず、お二人に見ていただきたい動画がございます。以前ギズモードの記事で掲載した、「画像処理のプロがPhotoshop 1.0に挑戦すると?」という動画をご覧頂きたいと思います。

ギズ:トーマスさんは、この動画を見てどうお感じになりましたか?

トーマス・ノール氏(以下トーマスさん):25年前というのはかなり昔のことですので、いろいろなところが昔とは違っていて当たり前なのかなと思います。今のユーザーさんにPhotoshop 1.0を使ってもらっても、思い通りにいかないことも多々あるのではないでしょうか。ただこの動画を見ていて、25年前ですが結構いろいろなことができるんだなと思いました。

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ギズ:Photoshop 1.0を開発するときに一番苦労されたことは?

トーマスさん:仮想メモリのサポートですね。Photoshop 1.0の開発段階では、仮想メモリをサポートしていなかったために大きなサイズの画像ファイルを開くことができませんでした。そのため、開発を始めて数ヶ月経ったときに「仮想メモリのサポートが必要だ」と思ったんです。その段階で、そこまで開発したアルゴリズムを全部見直す必要が出てきました。

ギズ:今までの歴代Photoshopのなかで、ブレイクスルーだとご自分のなかで感じていらっしゃるのはどのバージョンでしょう?

トーマスさん:バージョン3ですね。このバージョンで初めてレイヤーを実装しました。それ以前のバージョンでもフローティング選択範囲といった、ある程度レイヤーに似た機能がありましたが、レイヤーに比べればちょっとずつしかできないという感じでした。しかし、レイヤーが搭載されたことにより、初めて非破壊的な編集ができるようになったのかなと思います。

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ギズ:レスリーさんは写真を撮るのがお仕事ですが、Photoshopにはどのように関わっているのですか?

レスリー・キー氏(以下レスリーさん):私は、リタッチャーさんやグラフィックデザイナーさんとのやりとりに使うのがメインです。たとえば、写真集のラフデザインを指定するときなどに使います。私のレベルでは、JPEGでこんな風に仕上げてほしいという要望を出して、それを専門家の方たちに仕上げてもらっています。特にここ5年間は、写真集や展示会が多いので、Photoshopは非常に多用していますね。ヘビーユーザーと言ってもいいでしょう。私の場合は、コミュニケーションツールとして愛用させてもらっています。

スマートフォンの写真撮影について

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ギズ:お二人にお聞きしたいのですが、現在スマートフォンで写真を撮ることが当たり前になってきました。これについてはどのように思われますか?

レスリーさん:カメラ付き携帯電話の登場により、より多くの人が写真をどんどん撮るようになったということはとてもいいことだと思います。現在はスマートフォンが普及して、カメラで写真を撮るのが面倒くさくなって使わなくなるといった面ももちろんあるんですが、気軽に撮影できるようになった分、人々の生活の中で写真の重要性がどんどん増してきている。そうすると、よりいい画質で撮りたいという人も出てくるのではないでしょうか。写真家である我々やカメラメーカーなどは、大切な瞬間は今よりもいい写真で残しましょうということを提案するチャンスをもっと持つべきだと思います。スマートフォンで手軽に写真を撮って持ち歩くこともひとつの写真の楽しみ方ですし、大切な瞬間を残しておくために、高画質なカメラで撮影しておくというのも重要です。これは、音楽も同じではないかと思います。好きな音楽を、安いヘッドホンで聞くかお気に入りのヘッドホンで聞くか。関心が高まれば、その分写真に対しての思い入れも高まるのではないかと思います。私は写真家ですので、世界中の人たちによりよい画質のものを、写真集や展示会などで見ていただきたいと思っています。やはり、大きく印刷したもので見てもらうということが、写真を伝える理想だと思っているので。

トーマスさん:携帯電話やスマートフォンにカメラ機能が付く以前は、安価なフィルムカメラで撮影して、ドラッグストアで現像をして、アルバムに入れてしまっておくというのが当たり前でした。そのようなユーザーさんたちは、携帯電話やスマートフォンで写真を撮るようになり、友だちと簡単に写真を見せ合うことができるようになりました。アドビの見解としては、ハイエンドのカメラ市場は昔とあまり変わっていないのではと思っています。ただ、エントリークラスのカメラを使っていた層は、これから消えていってしまうのではないかと思います。スマートフォンのカメラの画質も非常によくなっていますからね。したがって、アドビとしては携帯電話やスマートフォンのユーザーさんに対して、PhotoshopやLightroomといったソフトを使ってもらう大きなチャンスなのです。今まで、アドビのユーザー層ではなかった方たちが、ユーザー対象になってきているということですね。私たちは、このようなユーザー層に対して、Lightroom Mobileといった製品をリリースしております。今、スマートフォンで写真を撮ったら、そのままLightroom Mobileで画像処理が行えます。これから先、より多くの機能が搭載されていく予定です。

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ギズ:昨年トーマスさんが、これまで写真家が写真を編集するために作ってきたのに、最近ではどちらかというと広告業界の人が使っていて、本物じゃないものを本物のように見せるという使い方をしている人がいるとおっしゃられていましたが。

トーマスさん:私が言おうとしたのは、Photoshopはあくまでもツールであるということです。ツールは、いいこともできるし、あまりよくないこともできてしまう。個人的には、PhotoshopやLightroomは自分の写真の編集に使っていますが、リアリスティックなイメージを出すために使っていますし、あまり合成をしたりといったことはしていません。ただ、私が使っている内容は、ジャーナリズム用の写真を撮っている方よりも、もっといろいろなことをしているのではと思います。何が適切なのかは、どういう文脈で使っているかということによって変わってくるかと思います。ただ、それぞれに倫理的な指針にしっかりと沿った形でやるかやらないかが重要ですね。

ギズ:今日はお忙しいなか、ありがとうございました。

Photoshopの生みの親と、人気写真家のお二人にお話が聞ける機会なんてそうそうないことなので、若干緊張してしまいましたが、Photoshopのこと、現在のデジタルフォトグラフィーのこと、お話が聞けて光栄でした。ありがとうございました。

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Photoshopが25周年ということで、いろいろなイベントが行われています。6月4日(木)までは、原宿UltraSuperNewギャラリーにおいて、Photoshopの世界へと誘う展示会「INSIDE PHOTOSHOP」を開催。

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また、6月17日(水)にはEXシアター六本木で「ADOBE LIVE 2015」を開催。Adobe Creative Cloudの最新情報のほか、著名クリエイターを迎えての活用事例も紹介するというビッグイベントになります。

まだPhotoshopバージンという方も、この25周年を機にPhotoshopに触れてみてはいかがでしょうか。25年の歴史を感じられるとともに、最新のデジタル画像編集機能に触れることができます。

さあ、今日もLightroomでRAWファイルを現像して、Photoshopで補正しようかな!

source: アドビシステムズ

(三浦一紀)