未来の移動はどうなる? トヨタ「i-ROAD」ならこうなる

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移動する。それは人間にとって当たり前だけど、大切な生活シーン。

トヨタの電気自動車「i-ROAD」。以前、ギズモードでもドライブ体験記事を掲載しましたが、このユニークなクルマを使って、何やら興味深いプロジェクトが行われようとしています。

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OPEN ROAD PROJECT」と名付けられたこのプロジェクト。都市の移動(モビリティー)にイノベーションを起こすべく、トヨタ自動車 未来プロジェクト室が発足させた本プロジェクトは2015年7月から約1年間、東京都内で実施されます。

水素自動車「MIRAI」を発表するなど、クルマ産業のリーディングカンパニーとして世界に影響を与えるトヨタが、クルマ本体だけでなく、モビリティーのあり方から考えていこうというわけです。そんな「OPEN ROAD PROJECT」は、現状大きく分けて3つの取り組みを発表しています。

(1)公募によって選ばれた「試乗パイロット」に、1カ月間「i-ROAD」を日常生活で使ってもらう

(2)トヨタが、幅広いパートナー企業と「i-ROAD」にかかわる商品やサービスのプロトタイプをテストする

(3)プロジェクトの情報や、「i-ROAD」が都市にもたらすイノベーションをWebやイベントで発信する

一般ユーザーに貸し出したり、パートナー企業と共同で未来のモビリティーを考えていくなど、プロジェクトの運び方すらかなり斬新

なぜクルマの会社がモビリティーそのものを問い直してるんだろう? どんな人たちがどのような思いでやっているんだろう? 興味をそそられたギズ編集部は早速、トヨタ自動車 未来プロジェクト室に取材を申し込んでお話を伺ってきました。クルマとモビリティーの未来を考える、個性派集団で驚きでしたよ。

都市に合わせたクルマを作りたい

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未来プロジェクト室長 大塚さん

――なぜこのようなプロジェクトを発足されたのでしょう?

大塚友美さん(以下大塚さん) 「現在の都市に合わせたクルマを作りたい」という思いがそもそものスタートになっています。正直クルマにはこんなに横幅いらないかも、4人乗りである必要もないのかも、と考えていくうちに辿り着いたのが「i-ROAD」のデザインなんです。その後、実際に「i-ROAD」を公道で走らせていく中で、さまざまな気づきが得られたんですね。そうしていくうちに、クルマの形だけじゃなくて、インフラやサービス、都市設計、ひいては未来のモビリティーそのものを考えて行く必要がある。それに向けてアイディアを増やすことを本プロジェクトの目的にしていくようになりました。

――プロジェクト名にOPENとありますが、これはいろいろなサードパーティと強力していくという意味ですか?

大塚さん 姿勢としても、考え方としても、OPENでありたいと考えています。私たち、未来プロジェクト室はトヨタ本体から若干離れた場所にオフィスを構えていますし、ある種本流じゃないからこそ考えられる視点を持ったチームだと考えています。多様性を持つことが、さまざまなアイディアの発想に繋がるのではないかと思うので、OPENという言葉を使っています。

イノベーションの原点は「気づき」

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未来プロジェクト室 主任 田口さん

田口貴博さん(以下田口さん) 多様性と同じく、イノベーションを導くために大事なのは、我々では見つけられていない「気づき」を得られるかどうかだと考えています。そのためには異なった立場の方々との対話が必須になってくると思っています。

――これまでどのような対話をされてきたのでしょうか。

田口さん 昨年、3カ月ほど東京にお住まいの方に「i-ROAD」の試験車を貸し出して、公道で走っていただくモニターテストを行いました。開発途中のクルマに乗っていただくこと自体、クルマ業界では珍しい試みです。開発者では気がつかない気づきを生活者の方たちと見つけ、一緒に作り上げていきたいという思いからです。実際の生活の中で使うことによって「i-ROAD」ではフラップが作動せず使えない駐車場があるとか、充電できるところが見つからずガス欠ならぬ電欠してしまった、といった問題点が見えてきたのです。そこから「i-ROAD」を本格的に普及させるためには、そういったインフラ面のことも考えていかなくてはならないという発想に繋がったのです。

――確かに、メーカーが大きなコストをかけてど〜んとインフラを整備するようなやり方よりも、ユーザー目線の気づきを集めて、工夫して作り上げていく方が「i-ROAD」の軽やかさにマッチしますね。

大塚さん クルマも道路も、一度作ってしまうと後から修正するのは相当なコストと労力を必要とします。ですから、ユーザーと事前に対話をして作るというアプローチもあっていいのかなと感じています。

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未来プロジェクト室 主任 志村さん

――ほかに得た気づきはありましたか?

志村和広さん(以下志村さん) 「i-ROAD」を乗るようになってから街を見てみると、そこかしこに掃除用のコンセントがあることに気づきました。これを充電のために使えないかな?と考えたり。また、駐車場にはならないくらいの狭いスペースも結構ある。これも「i-ROAD」なら専用駐車場として使えそうだとか。新たに設備投資をして街を大きく変えなくても、既存のものでユーザー体験を豊かにできる可能性だってたくさんあるんですよね。

田口さん 私は通勤に「i-ROAD」を使っているのですが、地元のスーパーで駐車場の行列ができているようなときでも、乗用車は停められないような狭いスペースに案内してもらえたり、利便性を肌で感じています。

クルマだけが生みだせる楽しさ

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志村さん あと、電車では向かわなかった場所だけど、「i-ROAD」だから行ってみようと思う場所が増えましたね。

――行動範囲が広がった?

田口さん 昨年のモニターテストに参加してくださった方で、京浜急行の大森海岸に住んでいる方がいました。大森海岸から自由が丘へ行くには、品川に出て京浜東北線で大井町へ行って、大井町線に乗り換えて…と何度も乗り換えなければならないため、今まで足が向かわなかったそうです。クルマも持っているけど、自由が丘の狭い道幅のことを考えると気が向かなかった。それが「i-ROAD」に乗るようになって「ちょっと行ってみようかな」という気になり、実際に出向かれたそうです。「i-ROAD」が入ってくることによって、徐々に生活が変わった1つの例として印象に残っています。

大塚さん ユーザーの方から「i-ROAD」だから、さあ行こうと思えるという言葉を頂戴して、これは「i-ROAD」にすごくぴったりな言葉だなと感じました。

多少、狭い道でも軽やかに走れるので、お出かけするときの心理的なバリアが低いんですよね。走っているとき、身体と一体になって動く感じも楽しい。身体拡張に近い感覚を得られるんです。クルマは本来、線路がなくても走れる。どこにでも、どこまででもいける自由さが最も大きい価値だと思います。ただ都市では逆に走れる場所が限られたり、停める場所がなかったりして自由さが失われている。その自由さを、従来のクルマとは違う形で提供していくことができると感じています。

――今後は「i-ROAD」以外の取り組みも積極的にされていくのですか?

大塚さん クルマは動力源においてイノベーションが起きていますが、本質的な意味でクルマ自体にイノベーションは起きていないと考えています。今後どのようなことが起こるかは計り知れませんが、「OPEN ROAD PROJECT」はひとつの切り口として、都市型モビリティーを考えていこうというプロジェクトです。

例えば、「i-ROAD」をパリに持っていったのですが、地元の方々にすごく受け入れられたんですね。というのも、東京もパリもモビリティーという観点において抱えている問題は同じなんです。道幅が狭く、交通渋滞が慢性的。その半面、路地裏にいいお店があるから、小回りが効く乗り物が受け入れられるというニーズは共通のようです。そう考えると、国単位じゃなく、都市単位でクルマのつくりが変わってもいんじゃないかというアイディアも出てきます。固定観念に囚われることなく、さまざまなアプローチからモビリティー全体を捉え直すことで、クルマ、ひいては私たちの移動はもっと豊かになると感じています。

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「i-ROAD」が街にどういう変化をもたらすのか? 7月から始まるプロジェクトの行方が気になりますね〜。

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そのころには、こんな風にボディをデコレーションした「i-ROAD」も走っているかもしれません。

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これ、3Dプリンターで作ったカスタムパーツなんです。こういうガジェット感も従来のクルマとは違った魅力。

思い思いのカスタムを施した「i-ROAD」が、思い思いの目的を持って街を走り回る、そんな光景が近い将来見られるかもしれません。楽しみ!

source: OPEN ROAD PROJECT

(奥旅男)