アメリカの電車がダメなのは、みんなが乗らないせい

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乗らないから発達しない、発達しないから乗らない…のループ。

アメリカではしょっちゅう鉄道事故が起きています。電車は古いし、揺れるし、遅い。米GizmodoのAlissa Walker記者は、そんな状況を変えるべくアメリカ国民はもっと電車に関心を持って、システムを刷新するべきだと訴えています。

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5月に起きたアムトラックのおそろしい脱線事故。議会が十分な予算を整備に割り当てていなかったこともあいまって、アメリカがほったらかしている鉄道インフラについての不安を表面化させました。もし、もっと多くのアメリカ人が鉄道のある未来を受け入れるのなら、鉄道はもっとも安全な国内旅行の手段になるはずなのに...。

アムトラックのノースイースト・リージョナル188号が脱線して8名の方が亡くなられたとき、多くの専門家は「ポジティブ・トレイン・コントロール」(位置情報を使って電車の速度を制限する監視システム)があれば事故は防げたはずだと推測しました。この列車はその監視システムを搭載可能な状態で、数ヵ月後にはシステムが導入される予定だったのに…。予算不足のせいで遅れていたのです。

事故の翌日、議会はアムトラックの予算をさらに削減しようと、投票を行ないました。

先日のニューヨーク・タイムズでは、鉄道の改善に向けた投資が少なすぎることが、乗客の安全を脅かしていると報じられました。アメリカの国民一人あたりの鉄道に対する支出は、ほとんどの国よりずっと少ないんです。日本やヨーロッパは言わずもがな、インド、ロシアよりも少ない。中国にいたっては、ここ10年間で世界最長の鉄道や、他国への展開も含め、まさに高速鉄道帝国を築きあげています。

アメリカの鉄道システムは、どの国と比べても時代遅れと言えるでしょう。英ガーディアンはその証拠を以下のようにあげています。

日本の有名な「新幹線」高速鉄道ネットワークは、51年もの歴史において死亡事故や脱線事故を起こしたことがありません。高速鉄道TGVを30年にわたって運行しているフランスも同様です。

実際の救助活動に携わった隊員が言うように、予算不足を引き起こした議会を責めたてても捜査の役には立ちません。お粗末な緊急対応をよくすることにもつながらないでしょう。もっと大きな問題なんです。これからも電車の改善計画に賛成しない議員は出てくるでしょう。だってそういう議員を選ぶ有権者は、電車に乗らないから。

しぼむ鉄道の未来

昨年アムトラックには3000万人が乗車し、10月には2014年度に過去最高の乗客数を記録したことを発表しました。アムトラックはほぼ全米で運行していますが、ワシントンDCとボストンを結ぶノースイースト路線だけで乗客数は1100万人にのぼります。

駅と乗客数を表したVoxによるマップがアムトラックの状況を物語っています。全乗客の3分の1にあたる人が、ニューヨーク、ワシントン、そしてフィラデルフィアから乗車します。

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そのほかの場所ではよりよい鉄道インフラが財務的な優先事項ではなく、不必要な贅沢になってしまっています。みなさんも、「高速鉄道はムダだ」というニュースを何度も何度も目にしているかもしれません。

鉄道インフラを改善しようという試みの結末は、おもしろおかしく予測できるものになってしまっています。州が高速鉄道の提案を作る。予算が保証される。その後きわめて政治的なバトルによって計画はつぶされる。ウィスコンシン州のスコット・ウォーカー知事も連邦政府の予算がすでに割り当てられているにも関わらず、高速鉄道計画を「殺す」ことを高らかに宣言しました。オハイオやフロリダでも同じようなことが起きています。悪いのは有権者なのか、目先のことしか考えない政治家なのか。いずれにしても、私たちは高速鉄道の未来を心に描くことができない状態です。

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2009年の復興法により、オバマ政権は80億ドルにおよぶ高速鉄道計画を提案。その多くが白紙状態に。

心をつかめ!

世論が変わらなければいけない。これに疑問をもつ人はいないでしょう。鉄道をより安全に改善しようと真剣に考えている人が、議員として選出される必要があります。同時に、これからますます鉄道が不安で危ないものになれば改善が行なわれることはないでしょう。

どうすればこの状況を打破できるのか、正直なところわかりません。アメリカの鉄道計画を見たとき、自分がいかに無関心であったかに気づきました。これまで提案されてきた高速鉄道計画は、国民を車や飛行機から乗り換えさせるには十分ではなかった。少なくとも気持ちを動かすことはできませんでした。たぶんイーロン・マスクのハイパーループならできるかも? その意味では民間による鉄道旅行は唯一とりうる手段なのかもしれません。

カリフォルニアの高速鉄道計画を見てみましょう。この件では建設を進めるために100億ドル(約1兆2000億円)の債券発行が承認されました。すでに建設が開始され、一部の駅はすでに街のランドマークとなっています。しかし、電車自体がゲームチェンジャーの類ではありません。本当は電車こそが中心になるべきなのに、実際のところ後づけのようなものになってしまっています。この国を先に進める輝かしいアメリカ製の高速鉄道はどこにあるんでしょう?

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日本のリニアモーターカーは先日、時速375マイル(時速603km)の記録を打ちたてました。カリフォルニア高速鉄道に採用される具体的な車両はわかっていませんが、スペックは明らかになっています。カリフォルニアの列車の最高速度は時速220マイル(時速354km)、そして車輪で走るもの。すでにある電車をちょっと改良しただけです。先日のアムトラックの事故で世界がもっとも衝撃を受けたのは、列車が時速100マイル(時速160km)を超える速度で走っていたことではなく、それくらいの速度で走っても大丈夫なように列車が設計されていなかったことです。

もし国民がより安全に旅行できることが目標であるなら、アメリカは優先順位を変える必要があります。昨年、鉄道事故で230人が亡くなっているところを、何としてもゼロにしなければいけません。安全のために鉄道を改良することが必要なのはもちろんですが、車と比べると電車は統計上ずっと安全なものなんです。GMは公的資金を注入されているのに、アムトラックは予算を削られてます。

しっかり投資すれば、もっとも安全な旅行手段になるはずの鉄道技術。それなのに私たちは半世紀もの間、数十億ドルを州間高速道路へ注ぎこんでしまいました。そんな道路では毎年3万2000人が命を落としています。

image by AP Photo/Michael R. Sisak

Alissa Walker - Gizmodo US[原文

(conejo)