ロンドンに建設予定のガーデン・ブリッジが物議を醸す理由とは?

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現在、ロンドンのテムズ川には新たな歩道橋ガーデン・ブリッジを作ろうとする計画があるのですが、とある理由から物議を醸しているようです。

ガーデン・ブリッジとは女優のジョアンナ・ラムレイが推進し、建築家のトーマス・ヘザーウィック氏が設計した歩道橋のことで長さ約366m、被覆材には銅ニッケルを使った美しい構造で「魔法がかったような場所」と謳われています。この建設に対して辛辣な意見が出ており、先日のガーディアン紙の記事には「アイデア自体は素晴らしいが、立地も想定される利用者も間違っている」や「ゴミクズだ」といったコメントが掲載されていました。これほどまでに批難される理由はどこにあるんでしょうか。

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建設に異議を唱える人たちにはそれなりの理由があります。というのも米GizmodoのMills記者も昨年12月に指摘していたように、ロンドンは住宅不足の最中にあり、交通機関は急速に老朽化してきています。そんななかでこの橋の建設費はおおよそ3億ドル(約368億円)と言われています。元々は個人が立ち上げた基金でまかなわれる予定でしたが、そのうち9,100万ドル(約112億円)を政府が捻出することになってしまいました。

それに加えてこの橋の利用は8人以下の歩行者に限られ、真夜中には閉鎖されますから100%公共の橋とは言えないのです。批評家たちはガーデン・ブリッジを、ほんの一握りの裕福なセレブが虚栄心を満たすためのプロジェクトであると指摘しています。というのも市が渇望しているのは実用的なインフラで、3億ドルもする歩道橋ではないからです。それにもかかわらず、予算の一部を市が負担する形になったことで、この計画は公的な資金を無駄遣いする案件になってしまったのです。

このようなプロジェクトはロンドンだけの問題ではありません。同様のプランがニューヨークでも進行中ですが、これもまたトーマス・ヘザーウィック氏の設計によるものなのです。ニューヨークでは歩道橋ではなくPier55という人工島を建てる予定で、マンハッタンに隣接する広さ3エーカーの半官半民の公園兼エンターテイメント施設になるとのこと。この計画の推進者は億万長者のバリー・ディラーとファッションデザイナーのダイアン・フォン・ファステンバーグ夫妻で、建設費1.7億ドル(約209億円)のうち4,000万ドル(50億円)を市が負担するそうです。建設は、2016年に始める予定だとか。

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どちらの施設も、都市が抱える興味深いジレンマを表しています。批判がある一方で、より多くの人が都市空間へ関心をよせることや、行政と個人のパートナーシップが都市の開発・再生に拍車をかけることは幸先が良いと言えます。公園はたくさんあったほうが楽しいですからね。

しかし、都市の今後の方向性をごく一部の裕福なパトロンの気まぐれに委ねてしまう可能性もはらんでいるのです。インガ・サフラン氏によると、Pier55の建設にかかる費用は、市内の貧しい地区にある35の公園を修繕するのに投入される予算と同じ金額なんだとか。同氏は2月に公開されたThe New Republicの記事で、このジレンマをうまく要約しています。

「一部のニューヨーカーからは億万長者の島とも呼ばれるこの計画は、実業家と大金がいかにして米国都市部にある公園への費用の投じ方をゆがめてしまっているかを示す、最新のそして最も極端な例です。裕福な地区と貧しい地区間での設備の差を広げているのですから。」

ロンドンでも同じことが問題になっているようです。ガーディアン紙にコメントを寄せている建築批評家のウィル・ハースト氏は、この計画は公金が融資される正規のプロジェクトが通るはずの「計画立案と資金調達における通常の規則を逸脱している」と発言しています。

寄付をする億万長者たちからすれば、同じ金額を使うなら、既存の公園や鉄道システムなどに注ぎ込むよりも、目に見える形で財産を残す方がよっぽど魅力的なのは当然のこと。しかし、一般市民はこういった華美なプロジェクトよりもちょっとした改善のほうに注力してほしいのです。

公共施設の建設や運営にパトロンが介入するようなプロジェクトは、都市計画にとっていわば「素晴らしい新世界」かもしれません。億万長者が都市のために私財を提供しようとする姿勢には感心しますが、主導権を握ってしまっていいのでしょうか。

Kelsey Campbell-Dollaghan - Gizmodo US[原文

(たもり)