九九表が楽しくなる数学のお話

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これ何かわかります?

そう、九九がないアメリカやイギリスで、学校で九九覚えるのに使う九九表です。

英語で「Times Table(Multiplication table)」と呼びます。これをひたすら埋めて覚えるのです。十二の段まであるので、覚えられないまま大人になっちゃう人もいます。

そこでメルボルン大学(豪も九九表だったんだ!)数学科研究員のAnita Ponsaingさんが、九九表の構造を読み解く方法を懇切丁寧に書いてます。丸暗記で覚えちまった日本人には退屈かもだけど、別視点で見ると思いがけない発見が。

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かけ算を理解する

かけ算は、長方形の面積を出す式ですよね。

表のどの数字でもいいのでひとつ拾って(ここでは5行7列目の数字を拾ってみた)、それを上と左につないでできる四角に色を塗ってみましょう。

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九九表で5x7の面積の長方形に色を塗ったとこ

この長方形は横7、縦5、面積(緑のマスの数)は青丸で囲った数字! これはどの数字でやっても同じです。

では次に赤の対角線で折って、長方形をパタンとひっくり返してみましょう。

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同じ長方形をパタンとひっくり返したところ

ご覧のように縦横入れ替わっても面積は同じ。つまり、5 × 7 = 7 × 5。これもどの数字でやっても同じです。このことを数学の世界では、「かけ算は可換(multiplication is commutative、交換法則が成り立つ)」なんて言い方をします。

要するに、この九九表は対称になってるんです。

対角線の上の数字は下の数字のミラーイメージ。

つまり上半分を覚えるだけで済むんです。

数字をブロックに分ける

掛け算の詳しい話に進む前に、ちょっと割り算をやってみましょう。割り算とは、等分にすることでしたよね。

12 ÷ 3 = 4

これは12を3つにわけると、ひとつ当たりのサイズは4になるって意味です。

3と4はどちらとも「整数(whole number)」なので、12の「因数(factor)」と呼ばれます。12は3でも4でも割れる、という言い方をします。ある数が、その数でしか割れない場合、それは「素数(prime number)」と呼ばれます。

12を2つの数の掛け算で書く方法はもっとあります:

12 × 1

6 × 2

4 × 3

3 × 4

2 × 6

1 × 12

どれも全部、九九表に出てます。

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九九表で12を拾ってみたところ

青いマスを数えると、面積12の長方形の求め方は合計6通りあることがわかります(辺が整数の場合)。別の言い方をすると、2つの数の積で12をあらわす方法は6通りあることに。

この表を見てたら、青いマスがゆる~いカーブになって見えた人もいるんじゃないでしょうか。実はその通り! で、これがいわゆる「双曲線(hyperbola)」。a × b = 12の式で得られる双曲線というやつです。aとbは必ずしも整数とは限りません。

さて、またさっきの12を求める掛け算を眺めてみましょう。ここに出てくる数はどれも12の因数ですけど、では、因数の因数を見てみたらどうなると思います?

素数じゃない因数はどれでも(1を除けば)必ずもっと小さな因数にわけられるんです。たとえばこんな風に。

12 = 6 × 2 = (2 × 3) × 2

12 = 4 × 3 = (2 × 2) × 3

いざやってみると、どの式の因数も素数ばっかりになるまで割ってくと、毎度毎度結果は同じで、2が2個と3が1個になるんですね。

つまり、この積算。

2 × 2 × 3

これが12のいわゆる「素因数分解(prime decomposition)」です。これは12固有のものです。どんな数も素数の積であらわす式はひとつしかない。その素数同士の掛け合わせで数にバリエーションが生まれてるだけなんですね。数学の世界ではこのことを、「算術の基本定理Fundamental Theorem of Arithmetic)」と呼びます。

素因数分解には、ある数について重要なことがギュッと凝縮されたかたちで詰まってます。

12 = 2 × 2 × 3という素因数分解を見れば、12が2と3で割れることもわかるし、逆にほかの素数(5とか7)では割れないこともわかる、2つの2、1つの3を掛けた数字ならどの組み合わせで掛けた数字ででも割り切れることがバババッとわかります。

それだけじゃありません。12の倍数も全部これで割れることまでわかるんです。たとえば11 x 12 = 132。従って132は1、2、3、4、6、12で必ず割れるんです、12もそれで割れるから。また、それぞれに反対の数の11を掛けた数でも割れるので、132は11、22、33、44、66、132でも割れるってなことになります。

別の数の2乗かどうかも、素因数分解を見ればわかります。各素数が偶数分あれば、それは2乗ってことですからね。たとえば36 = 2 × 2 × 3 × 3なので、2 × 3 = 6で、36は6の2乗とわかります。

素因数分解がわかると、掛け算も楽にできます。11 × 12の答えがわからなくても、12の素因数分解さえわかれば、ステップ・バイ・ステップでできちゃうんです。

11 x 12

= 11 x 2 × 2 × 3

= ((11 x 2) × 2) × 3

= (22 × 2) × 3

= 44 × 3

= 132

素因数分解の素数が小さければ(2、3、5とか)、掛け算もラクチンですね。鉛筆と紙は食いますが。4(= 2 x 2)、6(= 2 x 3)、8(= 2 x 2 x 2)、9(= 3 x 3)はどれも楽勝ということに!

要は、9の段を忘れてしまっても、3の段を覚えていれば全部解けるってことです(もっと大きな素数は別の方法が必要ですけどね。例えば11の段は下の動画のトリックで解けます)

10の位と1の位を足した数を間に挟むだけ

素因数分解できる能力は、大きな数の掛け算になればなるほど威力を発揮します。例えば、756を素因数分解すると、2 x 2 x 3 x 3 x 3 x 7ですから、756の倍数はこの小さな素数を掛けていくだけでわかるんです(もちろん大きな数は素因数分解もひと苦労なんで、もう分解の仕方を知ってる場合しか通用しない手だけれど)。

掛け算の話はさておき、素因数分解には数の基本情報が詰まってるってことですね。この情報は数学のみならず暗号解読、ネットセキュリティでもすごく役立つ情報です。それに、驚くべきパターンも描き出してくれるんですよ。話が見えない人は、上の九九表で12の倍数に色を塗ってみてね。宿題だよ。

Image by Tiger Pixel under Creative Commons license.

* 筆者のAnita Ponsaingさんはメルボルン大学数学科研究員です。本稿はThe Conversation初出記事の転載です。

Anita Ponsaing - Gizmodo US[原文

(satomi)