ロボットにできる仕事は人間を雇う必要がない…、ってことはもしかして人類失業の危機?

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もうSF映画の話じゃない。すぐそこの話です。

ロボットは今や、私たちの社会で立派な労働力となりつつあります。もうすでにその一部はあなたのごく身近にて、私たちの生活を便利にしてくれているかもしれません。でもその一方で、ロボットが労働力として活躍するということは、人間の職を奪うことでもあります。では、実際にはどの職業にその可能性があるのでしょうか?

この問題提起は最近よくテレビなどで見かけますが、きちんと事実に基づいていないことも残念ながらしばしば。そこで今回はより現実的な回答をしてくれる専門家たちに話を聞いてみました。どの職が奪われる危険にさらされているのか? そしてそれはなぜなのか?

倉庫・工場職員

すでに配送センターなどでロボットは立派に働いています。この手の作業はロボット社員にはもってこい。なぜなら、ロボットは臨機応変な対応を必要としない、単純なルーティンワークこそ大得意だからです。急な環境の変化への適応、パフォーマンスの改善、場面によって態度を使い分ける、などの高度なテクニックが必要な仕事はやっぱり人間にしかできないことでしょう。その証拠に、ロボット開発者たちも臨機応変な対応ができるロボットを開発するにはまだまだ時間を必要としてるみたいです。子どもの頃アニメで見ていたような、おしゃべりで皮肉屋でとんちの利いたお掃除ロボットはまだしばらく現れなさそう。

でも工場ではそんな機能がなくても問題ありません。ロボットはプログラム通りに一定の場所で、一定の動きを繰り返しすればそれで十分。これは「narrow AI(狭い人工知能)」と呼ばれるタイプで、例えば、このタイプのロボットは配送センター内のある階のある場所に配置され、全て同じ形・大きさの物を持ち上げ、これまた常に一定の速さ・長さのベルトコンベアにそれを乗せ続けるのが仕事です。実際に、アメリカの貨物運送会社UPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)のような配送センターではロボットが働いていて、毎分7,000個の物が仕分けられています。

運転手・タクシードライバーなど

運転手さんたちも危ないです。この職業もすでにロボットへの移行期間にあると言ってもいいでしょう。「車、特にタクシーなどの有料自動車は、これから自動化されていくだろう。」と、バンダービルト大学電子工学の准教授で、産業用ロボットメーカーのユニバーサルロボットで最高技術責任者を務めるRichard Alan Peters氏は語っています。

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実際、グーグルなどの企業が自動運転の実現のために、車体よりむしろ運転するロボットの状況認識や判断能力に重点を置いて実験を進めています。さらにいいのか悪いのか、法律の世界も人間がハンドルを握ることなく繁華街を自動運転でスイスイ行くことを認めつつあるのです。自動運転はそう遠い未来の話ってわけでもなさそうですよ。アメリカのカーネギーメロン大学では、Uberが自動運転車の開発専門のラボまで開設したんですから。

警備員

「特に警備員という仕事において、何時間も周囲をくまなく観察し続けることは難しい。ドアやホールなどの見張りはいずれロボットがするようになるだろう。」とPeters氏は言います。基本的に、繰り返し同じことをし続ける仕事というのはロボット社員に取って替えられるものです。さらに言えば、一部の仕事に限って言えば、人間よりもロボットのほうが上手にこなせるなんてことだってあるんですから。

ロボット警備員はすでに働いてたりします。昨年マイクロソフトが、Dalek(テレビ番組「Dr. Who」に登場したロボット)型の警備員をシリコンバレーのキャンパスに配備したと発表しました。5フィート(約1.5メートル)ほどの高さのこのロボットは、侵入者をスキャンできるようレーダー機能が搭載されていて、ナンバープレートを認識し、さらに周辺区域で危険なことが起こっていないかソーシャルメディアを駆使して調べることまでできるのです。このロボットを製造したメーカーは、人間の警備員の代わりになるものとして作ったわけではないと言っていますが、今後も技術の進歩はどんどん進んでいくでしょうね。

清掃員

清掃員と言っても運動能力や技術は関係のない、施設などにいる清掃員のことです。例えば、今まで食堂の床を清掃してくれて、終わった後にコーヒー一杯飲んで仲間と休憩、なんてことをしていたおばちゃんたちがいつかロボットに変わるかもしれない。磨いたり、掃除機をかけたり、水拭きしたり、ロボットにだってきっとできるようになるでしょう。(というかすでに一部の家庭ではルンバがやっていますね。)でも、清掃員のみんながみんな職を奪われるというわけではありません。

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「ロボット開発の歴史の中で長年難題とされているのが、部屋を片付けるということ。これがロボットにとっては思った以上に難しいことなのです。」と、MIT機械工学教授のSeth Lloyd氏は言います。「何かひとつの物をきれいにする」といった仕事はけっこう複雑で、例えばトイレやシンクなどは、いまだにロボットよりも自由に動かせる腕と繊細な知覚が可能な指を持つ人間のほうが、ずっときれいにできるでしょう。

Lloyd氏はロボットが労働力として活躍する未来にとても懐疑的で、一部の人がロボットの働きを大げさに語りすぎだとも感じているようです。「ロボットはいまだに部屋を片付けることもできないし、これから開発される新型ロボットもあの手この手で部屋を散らかすだけだろう。」

建設工事の作業員

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「ロボットによる組み立てに関して多くの研究が進められています。」とPeters氏が言うには、船や飛行機などの大きな建設物の組み立ては、近い将来大幅にロボット化されるらしいです。これも今までのパターンと同じで、作業にはマニュアル通りの仕事が多いからです。例えば、乾式壁の一部を持ち上げて、それを運び、一定の場所に取り付ける、これだったらロボットでもできます。

だがしかし、ここで矛盾が生じるのにみなさんお気づきでしょうか。ロボットの活躍によって人間の組み立て作業員は少なくて済みますが、でもやっぱり絶対数として人間はまだまだ必要なんです。なぜかっていうと、ロボットが壊れたりメンテナンスが必要になったときにそれを修理するのは人間だからです。

ロボットは本当に人間から仕事を奪うんでしょうか? 当のロボットが人間の助けを必要としているのに。でも、これは「仕事」全体の話で、ここで問題としているのは「どの職業が奪われるのか?」ということですからね。ロボットは人間にはきつい、危険な仕事を代わりにしてくれるようになり、一方で確かに、ロボットの修理もひとつの職業として成り立っていくでしょう。でもこの職業には、ロボット工学などある程度の高学歴者でないと得られない専門知識が必要になってくるのです。

このことは、建設工事の作業員がロボットや中級のエンジニアに取って替えられることを意味していて、これこそがまさに経済学者たちが危惧していることのひとつでもあります。ロボットの活躍が進むにつれて収入の格差が広がり、ブルーカラー層の失業率が増えるのではないかと。

(一部の)農業者

農作業の一部は機械化され、すでにロボットたちの支配下にあります。特にドローンなんかの活躍はめざましく、ぶわっと飛び立って畑の真ん中に降り立ち、いろいろな任務を遂行しています。ドローンにかかれば殺虫剤や肥料の散布、作物の成長度合いの観測、種まき、飼っているペットの様子まで見てくれるんですから、そりゃあ重宝しますよね。

つまりドローンがいれば農場主は百人力というわけです。実際、ドローンメーカーのsenseFlyやAgribotixなんかもすでに農業用としてマーケティングを開始していますし、アメリカ・イギリス両政府も農業用ロボットの開発を金銭面でサポートすると言っています。

ロボット労働の時代は「今のところ」まだ来ない

これまで紹介した職業は、これから数十年の間に消える可能性があるもののほんの一部です。人間の職には、ロボットによって奪われるかもしれないものがまだまだたくさんあります。例えば、ナース、郵便局員、小売商、ジャーナリストやアーティストでさえも危ないのです。

でも、はたしてロボットが本物の人間のようになる日は来るんでしょうか? 病人のお世話をしたり、おもしろい小説を書いたり、そんな人間らしいことが本当にできるようになるのか。これまで、研究者たちは本物の人間そっくりの外見を持ち、行動するロボットの開発を進めていましたが、「ある限度を超えると人間は急激にロボットに対して嫌悪感を抱くようになる」と言われています。これは「不気味の谷現象」と呼ばれるものです。Peters氏はこの現象によって、テレビキャスターや医療アシスタントなどの職業はロボットに代わることはないだろうと考えています。人間には人間にしかできない役割があって、そこにまだロボットが介入する余地は無いのだ、と。

「ロボットって気味が悪いでしょう?」とPeters氏は言います。「私は、エクス・マキナのように人間そっくりのロボットが作られる日が来るとは思えません。」

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でも、ロボットクリエイターの高橋智隆氏は、この不気味の谷現象をうまく避けてロボットを作っているんです。彼のロボットはかわいらしく、親しみが持てるのが特徴で、鉄腕アトムのような見た目をしています。このかわいらしさこそ重要! これによって人はロボットを社会的に受け入れ、感情移入できるようになるんじゃないでしょうか。私たちがアニメなどでイメージしているとおりの見た目のロボットであれば、危機感を抱きにくいのです。一方で、めちゃくちゃ人間らしいロボットは労働の場にとけ込みにくいでしょうね。うーん、やっぱり職場にいたらびっくりしちゃいますもんね。

Rethink Robotsなどの専門家たちは何人も、ロボットが人間の代わりに労働をすることはないだろうと発言しています。取って代わるのではなく、むしろ現状をより便利に、効率的にすることになりそうです。そしてさらに、TEDの中でRobots氏が言うには、

1980年代のパソコンの進化はめざましいものがあり、エクセルなどの表計算プログラムはまたたくまにオフィスワーカーの間で主流になりました。でも、オフィスワーカーたちの職を奪ってまではいませんよね。ただ、このプログラムを使いこなせる人が重宝されるようになり、どんどん利用者が増えていきました。そう、プログラムは人間の能力を上げたのです。ただ単に計算するだけでなく、もっといろんなことができるようになりました。

でも、この発言に対して専門家全員が同意しているわけではありません。反対派は一部の作業形態は自動化され、ロボットが代わりに作業するようになるだろうと言うし、人間は労働の場を失う、とも言っています。「Rise of the Robots」の著者であるMartin Ford氏は先月、米Gizmodoにこう語っています。「もしあなたがロボットやスマートソフトウェアシステムを使って仕事をしていたら、それは最終的にあなたと取って代わるための訓練をしていると言ってもいいでしょう。」

にも関わらず、企業や政府は機械化された労働力を経済に推し進めようとしています。まあ、それがいいのか悪いのか、今の時点では何とも言えませんが。繰り返しの作業や危険な作業が必要になる職業は、真っ先により素早く効率的に処理できるロボット社員たちに代わられてしまう可能性はありますね。ロボットの運動技能や人工知能が進化すればするほど、その候補は増えていくでしょう。

いろいろ不安要素はありますが、今のところ慎重に、でも楽観的にロボットたちの労働を見守っていこうと思います。確かにロボットに仕事を奪われたくはないですけど、でも仕事終わりに彼らと飲みに行ったりはぜひともしてみたい。

Bryan Lufkin - Gizmodo US[原文

(SHIORI)