専門家が知って欲しいドローン9つのウソホント

専門家が知って欲しいドローン9つのウソホント 1

ロボットで、空を飛んで、人を見張ってて、最近やたらと目につくものと言えば、そう、ドローン。そんなの知ってるよ!という人も、実はなんにもわかっちゃいないのです。

その道の専門家のみなさまに、「一般に広く誤解されていて、聞く度に『それは違う!』と叫びたくなることはなんですか?」と、米ギズモードのBryan Lufkin記者がズバリ尋ねてみました。

1. 正式名称はドローンでもクアドコプターでもない

「ドローン」という名称、ここからしてアウトなのだ!と言ってるのは、ペンシルバニア大学のVijay Kumar工学部教授です(イリノイ警察も無人航空機=UASと呼んでる)。教授のラボは航空ロボットが専門。

「うちのロボとドローンとの共通点と言っても、ずっとブンブン鳴ることぐらいだ」

「自分が遠隔で航空機(これが正しい呼び方)を操縦している空軍パイロットで、誰かにそれドローンだねって言われたら、バカにされたような気がすると思う。ドローンの定義には何ひとつ、このパイロットのしていることを言い表すものはない。パイロットが何もしてないという言い方はフェアじゃないよね」(Kumar教授)

かと言って「クアドコプターというのも、英語としておかしい」というのが教授の見解です。「Quad」は「4」。「Copter」は「ヘリコプター」の短縮形。なので「quadcopter」だと「ヘリ4機」になっちゃう。4翼ヘリと言いたいんなら、「クアドローター」ヘリだろって言ってます。まあ、これには読者から「クアドコプターで無問題」、「コプターはもともとpteron(翼)が語源だしね」という反論も出てるけど。

ドローンじゃないなら何なのか? いちおうKumar教授は「軍ではRPV(遠隔操縦機)と呼んでいる。自立飛行(うちで造ってるみたいな)の場合は、ロボットが正しい」と言ってます。

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国際ドローン展でUAVを見入る男性。5月幕張メッセ。Credit: Getty

2. ドローンで一番怖いのはプライバシー侵害…ではない

カメラ装備のドローンを怖がる人が多いのは、Kumar教授も理解していますが、問題は住民をプライバシー侵害から保護する法律がRPVの現実とまったく噛み合っていないことなのだと言います。

連邦航空局(FAA)は、私有地の上空122mを私有ドローンの航空禁止区域に指定しています。が、 だったら125m上空に留めておけばプライバシーが格段に守られるのかっていうと、そんなことはないんですよね。それに、それを心配するなら塀の隙間から部屋を隠し撮りする隣人の方がよっぽど怖いし、現実的な脅威なのです。

「デジカメやスマホで隠し撮りされた写真がどれだけネットに出回ってるか、みんな本当に知ってるのかな?」「Google Earthで撮られてない写真をドローンで撮られるのを阻止する、そんなことが可能だと本気で思ってるんですかね」

デューク大学のMary Cummings機械工学・マテリアル科学助教授は、さらにこうも言ってます。

「ドローンのカメラから入る映像を地上から理解するのは、実はものすごく大変でね」、「鍾乳管を通して像を見るようなものなのです」

軍には金と情報もあるし、訓練を積んだ人もいるので意味内容が理解できるけど、今ニュースになってるような素人のドローンで覗かれることまでは、あんまり心配しなくていい、と同助教授は言ってます。

ドローンのプライバシー侵害を阻止するためだけに新しい法律なんか作る必要ない、と言ってるのは、無人航空機関連法が専門の弁護士Brendan Schulman氏です。「プライバシー侵害、のぞき、ストーカー、違法な監視に関する既存の法律で、ドローンで話題になってる問題にも適用されるので、ドローン技術だけに特化した法律を別につくる必要はない。誰かが他人のプライバシーを侵害したら、使用する技術に関わらず、それはもう違法行為ですから」

でも悪者の手に渡ったら…という不安は拭い去れない気が。

「そんなこと言ったら、どんな『ドローン』だって頭のいい学生は1時間でハックできてしまう、そっちを心配すべきなんじゃないの? FAAは決断が遅い遅いと叩かれているけれど、安全のことを真剣に考えているのはFAAだけだ。僕的には愛好家が『ドローン』を人口密集地で使えること自体が驚き。車の運転だって免許が要るのに」(Vijay Kumar教授)

3. 殺戮マシンではない

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Predator UAS

ドローンがメインストリームで騒がれだしたのは10年ぐらい前からで、米国が中東の戦闘地域で採用したことがきっかけ。それもあって、どうしても殺戮マシンのイメージがつきまとっています。

これについてMary Cummings助教授はこう言ってます。

「ドローンは単に、米軍が兵器を発射するプラットフォームです。戦闘攻撃のコラテラル・ダメージ(標的以外の民間人の巻き添え被害)のことでドローンは非難されることが多いけど、有人機を使うより巻き添え被害がずっと少ないことは疑問の余地もないこと。非難すべきは政策なのに、人はとかく技術を非難したがるものなのです」

4. 飛行機墜落の原因になることは、まずない

ジャンボ機にドローンが吸い込まれることもないだろうし、それが原因で飛行機が墜落する可能性はさらに低い、と専門家は言ってます。

模型飛行機は昔から何度も周囲で目撃されてきましたが、ドローン目撃情報を全部片っ端から国家安全保障システムに通報するようにFAAがパイロットと航空管制塔に義務付けたのは昨年からなのだと、Schulman弁護士は指摘します。以来通報の入った目撃情報は190件で、マスコミに「ニアミス」と騒がれたものも沢山あります。

でも「ニアミス」と報じられた事件を同弁護士がよくよく調べてみたら、多くは地上からの目撃情報だったり、リスクがない状況で、ドローンかどうかも定かじゃないケースも含まれていました。

ドローンがそんな何千フィート(何百メートル)も高度上がらないでしょって話もあるし、仮に上がったとしても「Phantom 3」のような最新モデルにはジオフェンシングといって、GPSで飛行場の接近を自動的に回避する機能が装備されています。

5. 1マイル先まで騒音が響く…とは限らない

「ドローン」と言うと、ずっと蝿みたいにブンブンうるさいイメージですが、騒音が出ない機種もあるみたいですよ?

「DJIや3DRから出ている製品のような商用ロータークラフト(回転翼航空機)のドローンは確かにうるさい。ベゾスもアマゾン宅配ドローンが『うるさ過ぎる』と言ってるとかいう噂だ」と語るのは、テキサス大学オースティン校のTodd Humphreys航空工学助教授。同助教の研究チームは、UAVが外部ソースからのGPSシグナルで乗っ取り可能なことを初めて実証したところです。

「しかし、固定翼のグライダーや、自由落下に近いロータークラフトは、夜盗みたいに静か」、「これはホワイトハウスを警護するシークレットサービスなど、音でドローンを探知したいと考えている人たちにとっては重要な点だ」(Humphreys助教)

音(機種ごとに違う)で怪しいドローンを探知する技術をつくることを目標に掲げる企業(日本とアメリカの両方にある)にとって、これは痛い問題かもしれません。

騒音をいかに抑えるか。これはUAV技術の主な課題のひとつですね。

英国の王立鳥類保護協会では、6つの小型電気モーター装備の小さなドローンを絶滅危惧種の監視に採用していますけど、これなんかは音が小さくて、周辺の風の音なんかに掻き消されてしまうので鳥に近づいても、驚かないんだそうですよ?

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自然保護目的でShadow Rotor UAVを操作するSteve Roestさん(via Shadowview Foundation)

6. 人が操作する必要はない

観光地で遠くからドローン飛ばして捕まった不届き者がいろいろニュースになってますが、UAVはどんどん人間抜きで飛べる自立飛行型に進化を遂げています。

「UAVは地上のターゲットを検出して、そのターゲットの動きをフォローしたり追跡することで、操縦士の介入抜きで飛べるようになるかもしれない」

と語るのは、トロント大学の航空宇宙研究所の Hugh Liu教授。 教授は先日、農業や環境監視など幅広い作業にUAVを活用できる新人エキスパート150人を養成する資金として165万ドル(約2億円)をカナダ自然科学研究会議から獲得したお方です。

自立飛行の性能を備えた機種はすでに現れています。たとえば、こちらはユーザーの動きを自動的にシャドーできるようプログラム可能な商用ドローンの試作機。DJIからは、ボットに踏んで欲しいGPSのウェイポイントを予めプログラムしておけば、あとは自分で道順を辿って勝手に飛べるドローンも出ています(このPhantom 2はギズが立ち会ったMV撮影でも使われたやつですね)。

Kumar教授のようなエンジニアは、ドローン同士がお互いを自律的に追う機種の研究も行っています。ハチやアリが互いをフォローするように。あるいはまた、隊列を成して飛ぶ鳥のように。

7. おもちゃではない

一部のUAVは基本、ラジコン玩具です。が、大多数は玩具ではなくて、フル装備のロボットです。よって、そのように扱わなければなりません。

Liu教授曰く、UAVは「単体の機体ではなく」、「統合化されたシステム」なのだといいます。それが証拠に機上には各種センサーと飛行制御アクチュエータなどが沢山装備されています。Kumar教授じゃないけれど、Liu教授にも好みがはっきりあって、教授の場合、「UAV(unmanned aerial vehicle:無人航空機)」よりは「UAS (unmanned aerial system:無人航空システム) 」という呼び方が好きなんだそうな。

「はっきり違いがわかる例は…たとえば模型飛行機を飛ばす人は、機械の操作をスポーツとして楽しんでいますよね。ところがその機械にカメラを積んだ途端、誰もが航空写真に驚くわけ。つまり『システム』なんです。その捉え方を端的に表しているから、やはり僕はUAVと呼ぶよりUASと呼びたい」(Liu教授)

玩具屋に置いてる「Sky Viper Camera Drone」なんてのは、Liu教授やKumar教授みたいな人たちが言うロボットとは明らかに別物ってことですね。

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今年はネパール震災でもドローンが救助を支援した。Credit: Getty

8. シグナルを妨害しても墜落しない

Todd Humphreys助教授がもうひとつよく遭遇すると言っていたのが、この「通信シグナルを妨害すればドローンが空から墜ちてくる」という神話。実際には、GPS誘導型ドローンには必ずと言っていいほど「lost link protocol(無線リンク喪失対応プロトコル)」っていうのがついているので、絶対墜ちない。妨害されたら予め指定した安全な避難場所(ハッカーは変更不能)に自動的に飛ぶようにできているんだそうですよ?

「しかもドローンは飛行中、地上からの通信を無視する設定にもできるので、このモードにしてしまえばもう誰も、操縦者本人でさえ、ミッション実行を阻止することはできない。この『自分には聞こえません』モードは、固定翼ドローンを手軽に誘導ミサイルに仕立てたい破壊工作員やテロリストには魅力的だろうね。基本的にこれが、元祖ドローンV1飛行爆弾の構造だったんだ」

9. 郵便やピザの宅配に使われるのは、当分ない

そのうちブンブン上空を宅配ドローンが飛び交って、玄関先にボタッと荷物が落ちてくる未来を想像してる人も多いと思いますけど、そんな世界はまだまだ先っぽいです。

Mary Cummings助教授が挙げている弱点は、ドローンがあんまり遠くまで飛べないことと、悪天候に弱いこと。将来現れるにしても、捜索・救助活動の出番で目にする可能性の方が高くなりそうだというのが助教授の予想です。ドローンは登山の遭難者もすでに沢山救助してるし、ドローンでシリアの戦闘地域に救援物資を届けたり、遠隔地に医療物資を届ける計画もありますからね。

いずれにせよ、変わるときは早くきそうですね。「今のうちに新しい航空管制の枠組みの整備、悪天候や人間の悪意に左右されない堅牢な技術を進めるのが急務。うちの7歳の子なんてドローン見たら絶対石投げて落とそうとすると思うので」と、Cummings助教授は警鐘を鳴らしてます。

iamge by Tara Jacoby

Bryan Lufkin - Gizmodo US[原文

(satomi)