実は知られていないティーバッグの本当の歴史

実は知られていないティーバッグの本当の歴史 1

良い発明家が良い事業家とは限らないのよね。

古代中国の伝承では、お茶の歴史は紀元前2,737年頃まで遡ります。三皇五帝の一人で医学の祖とも言われる炎帝神農氏は、衛生のために生水を口にせず、必ず煮沸して飲んでいたそうなのですが、彼がある日木陰で小川から汲んだ清水を沸かしていると、何かの葉が釜の中に舞い落ちてきます。このお湯を飲んでみると、なんと香りもよく味も良かった…。

これがお茶の始まりだと言われています。もちろんこの話は神話なので信憑性はありませんが、歴史的な事実を見てもお茶を煎じて飲む習慣が中国で始まったのはほぼ確かなよう。お茶に関する記述がみられるもっとも古い文献はなんと殷時代(紀元前17世紀頃~紀元前1046年)のもので、最初は薬としていろいろなものと一緒に煎じて飲まれていたのですが、紀元前3世紀の秦時代になるころには、チャノキの葉だけを淹れて飲む形が普及したようです。それ以降20世紀にいたるまで、お茶の飲み方はほとんど変わりませんでした。しかし1901年に大きな変化が訪れます。

そう、ティーバッグの誕生です。

一般的にはニューヨークの貿易商Thomas Sullivan氏が1908年にティーバッグを考案したと信じられていますが、実はこれは事実ではありません。彼がその年に、おそらくは自らのアイデアでティーバッグに類するものを作ったであろうことは確かなものの(彼のティーバッグのデザインは他のものと比べても劣っていたので、誰かの真似をしたものとは考えづらいんですね)、実はその7年も前にウィスコンシン州ミルウォーキーの二人の女性、Roberta C. LawsonさんとMary Molarenさんがティーバッグを発明していました。

LawsonさんとMolarenさんは1901年8月26日に当時としては珍しい「茶葉ホルダー」なるものの特許(US723287)を申請しています。これが現代のティーバッグにそっくりなんです。

実は知られていないティーバッグの本当の歴史 2

二人は従来のポットでお茶を入れるやり方について、こんなふうに述べています。

毎回ポットでお茶を淹れるやり方では、飲みたい量のお茶を淹れるのにかなりの量の茶葉を使わなければならないし、すぐに飲まなかった場合には、新鮮さが失われてしまって満足のいく風味ではなくなってしまう。また大量に準備されたお茶がすぐに飲まれなかったために捨てられてしまうことも多い。そのためゴミの量も増えるし、無駄な出費にもなる。

そこで二人はメッシュに編まれた綿の布を「二つ折りにし、両脇を縫ってポケット状にし、上の開き口には垂れ蓋がついていて、この蓋を折り畳むことで口を閉じる」小袋を考案します。そして、この小袋に少量の茶葉を入れ、「カップに入れて、その上からお湯を注ぐことで、その場で飲むための新鮮なお茶を一杯分だけ淹れることができる。この方法なら一杯分に必要な茶葉だけしか使わずに済み、新鮮で香り高い一杯を楽しむことができる」と説明しています。まさに現代のティーバッグそのものですよね!

申請から約2年後の1903年3月24日に、二人は特許を取得してます。ただ残念ながら市場に売り出すのはうまくいかなかったようで、記録に残るような規模には普及しなかったようです。

そこで出てくるのが先述のThomas Sullivan氏です。彼は1908年、“偶然”ティーバッグを発明したことになっています。Sullivan氏は販売促進の一環として、自社で取り扱っていたさまざまなお茶の葉を小さな絹の袋に入れてサンプルとして顧客に送ることを思いつきました。すると、そのサンプルを受け取った顧客たちの一部が、茶葉を袋から出してポットに入れるかわりに、袋をそのままティーインフューザーとして使ったのです。袋を使うことで飲みたい分だけのお茶をいれることができましたし、なんといってもポットから茶葉をかき出して始末するという手間が省けたので、この販売促進キャンペーンは大成功。注文が殺到するようになります。注文を受けたSullivan氏は、最初は茶葉を普通の容器に入れて発送していたのですが、サンプル袋をインフューザーとして使っていた顧客たちから「なぜ袋に小分けにされていないのか」と苦情が入り、茶葉を袋に入れた状態で販売するようになったのです。

ただ、絹の袋は布目が細かすぎて標準的な茶葉を抽出するのに理想的ではありませんでしたし、使い捨てにするには値段も高すぎました。そこで彼は絹をガーゼに替え、さらによく抽出できるように、チャノキの茎の部分を砕いたものと、茶葉の加工時に出る茶葉の粉末を袋に入れるようにしました。こうして改良を加えた後、Sullivan氏はこの小袋入りのお茶を大々的に売り出し、ティーバッグは普及への道を歩み始めます。

しかしSullivan氏の逸話がどこまで真実なのかは難しいところ。茶葉を1杯分ずつ小分けにして販売する方法を普及させたThomas Sullivanという商人は実在したようなのですが、それ以外の部分については確かな記録は残っていません。

いずれにしろ、商品化された初期のティーバッグは、LawsonさんとMolarenさんが発明したものに比べるとお粗末なものでした。蓋を折って縫うのではなく糊を使って閉じていたので、熱湯に溶け出した糊が風味に大きな影響を与えていましたし(しかも体に悪そう…)、当時使用されたさまざまな素材の袋生地もお茶の味に障るものが多かったのです。

こんな風にお茶の風味を損なっていた初期のティーバックですが、その利便性が勝り徐々に普及していきます。特に第一次世界大戦で一部の国の兵士にティーバッグが配給されたこともあり、1920年代にはかなり一般的になりました。ただアメリカでは比較的早くティーバッグが受け入れられたのに対して、イギリスでは懐疑的な人も多かった模様。このころにはすでに味に影響しないティーバッグも出回っていたのですが、第二次世界大戦中の物資不足もありイギリスではティーバッグはなかなか普及しません。

そんなイギリスでも1950年代になると、家事をラクにしてくれる商品が大流行し、ティーバッグもその一環として人気が出始めます。1950年代も後半になるころには、イギリスのお茶市場の3%を占めるまでになり、その後着々と普及。2008年にはイギリスお茶市場の96%がティーバッグになってしまうのですから驚きです。ちなみに同時期のアメリカにおけるティーバッグ率は90%。最終的にはイギリスのほうが普及しちゃったんですね。

お茶に関するおまけのトリビア:紅茶といえば思い浮かぶのはイギリスですが、実は一人当たりの紅茶の消費量が最も多いのはトルコ。一人あたり年間7.682kgもの茶葉を消費しています。イギリスの消費量は世界5位。イギリスの紅茶消費量は年々下がり続ける一方で、去年だけでも6%減少しています。一方コーヒーの消費量が同じくらい増えているので、イギリスにもコーヒー党が増えてきたのかな。

※この記事は米Gizmodo が許可を得て転載したTodayIFoundOut.comの記事の翻訳です。

Image by DanielChloe Blanchfield under Creative Commons license.

Sarah Stone - TodayIFoundOut.com - Gizmodo US[原文

(mana yamaguchi)