乱気流に遭ったとき、被害を最小限に防ぐには?

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もし、乗っている飛行機が乱気流に見舞われたら…考えただけでもぞっとします。そんな経験を持つ米GizmodoのLufkin記者が乱気流について調べてみましたよ。

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とにかく恐ろしくって生きた心地はしないし、頼んだトマトジュースは飛び散ってしまう。それが乱気流ってヤツです。でも実際のところ、乱気流の危険度ってどれほどのもんでしょうか?

僕個人としても、この質問にはとても興味があるんです。というのも、ターボで回している衣類乾燥機に入れられたぬいぐるみにでもなったかのような揺れを体験したフライトが少しトラウマになっているから。オムツの頃から数えきれないほど飛行機には乗ってきましたが、それまでフライトに恐怖を感じたことなんてありませんでした。でも数年前、東京発ミネアポリス行きのトランスパシフィック航空での空の旅は乗客が泣き叫び、ガラスが割れ散るハラハラしたものでした。そのせいで今でも僕は機体のちょっとした揺れでもビビってしまうんです。

その航空機が日本を発ったのは午後で、空は曇りがちでした。14時間に及ぶ飛行時間のうち45分が経過したころ、空が濃い灰色に染まり、機体が傾き揺れ始めたのです。アメリカ人の客室乗務員が声色から恐怖を隠そうともせず、機内アナウンスで叫んでいました。シートベルトを着用し「つかまっているように」とね。搭乗している日本人や中国人の乗務員を待ちきれず、彼は自ら訳そうとしていました。ガラスが割れたことについてはもう書きましたよね? それほど激しく揺れたのです。

30分ほど経って機体は安定しましたが、機長や他の乗員からの説明はありませんでした。かつての僕は飛行機に乗ることに対して慣れきっていましたが、それが今では「次に命が脅かされるのはいつ頃で、どんだけ強烈なのか」を前もって知るために何日も前からTurbulenceForecast.comを細かくチェックし、搭乗ゲートでツイッタ―を見るほどに変わってしまったのです(そしてどのくらいお酒を飲むことになるのかも予想します。レーダーに深い紫が現れたらパニックになること間違いなし! )。

昨年は「強い乱気流」にまつわるニュースがいくつか報じられました。2月のデンバー発ビリングズ行きのユナイテッド便では5人が負傷し、うち客室乗務員1人はICU(集中治療室)行きになっています。12月のアメリカン航空の仁川発ダラス便では14人がケガし、成田に緊急着陸しています。それらが引き金となって、僕はフラッシュバックを起こました。

そういったわけで、乱気流がどんなに危険かあるいは危険でないのかを分析するために、専門家たちに話を聞いてみました。乱気流は大惨事を引き起こし得る、そして温暖化のせいでその発生率は増え得るという事実にもかかわらず、その危なさの真の原因は乱気流そのものではないんだとか。シートベルトを着用している限りはね。だからこそ、ベルトの着用は大事なんです。

乱気流に遭遇する=飛行機が墜落するってこと?

答えはノー。何、言ってるんだコイツ?と思われるかもしれませんね。「飛行機は旅をするのに最も安全な方法」と言われたりしますが…。あくまで地上にいるときなら、そう思うのもラクですよね。でもひとたび飛行機に乗せられ地上数万フィートへと飛ばされていたら、そんなに理性的に考えられないかもしれません。

どんな感想を抱くにせよ、乱気流が激しいからと言って飛行機から空中に放り出されるわけではないのです。AskThePilot.comを運営し「Cockpit Confidential.」の著者でもあるPatrick Smith氏は「とてつもなく過酷な天候であっても、主翼が壊れて外れたり、機体が逆さまにひっくり返ったりするわけではありません」と説明します。

では、乱気流によって機体が傷つくことはあるのか? 極まれにそういった事故があります。よく引き合いに出されるのは、1966年に起きた日本の富士山付近で激しい乱気流に見舞われたボーイング707が空中分解した事故です。乗客に富士山のよい見晴らしを提供しようと、機長が予定航路よりも富士山の近くまで飛んだことが原因でした。その時の風速は時速140マイル(約225.3km)を記録し、乗員乗客全員が亡くなったのです。

しかしそれ以降、エンジニアリングは各段に進歩し、機体はより頑丈になりました。現代の飛行機の翼はテスト段階で90度近くまでしなるため、本番環境での強烈な突風にも耐えられます。ユナイテッド航空の787ドリームライナーには、近づきつつある強風を予測するセンサーが備わっています。激しい天候が危険になり得るのはもちろんですが、現代の乱気流絡みの事故というのは、大体が故障やパイロットのミスといった他の要因と組み合わさっているものだそうですよ。

アメリカ大気研究センターのプロジェクトの科学者であり、教授のRobert Sharman氏は「航空機が甚大なダメージを負った例は滅多にないが、エンジンがパイロンから引き裂かれるほど乱気流が激しかった事例はいくつかあった」と言います。同氏いわく「そういった状況でも飛行機は無事に着陸できた」んだとか。

ならば、墜落するよりもどうなることの方が多いのか? 乱気流があまりに強い場合、パイロットは飛行ルートを変更して、予定より早く着陸せざるを得ないことがあります。しかしスミス氏に言わせればそれさえも「とても珍しいこと」なんだとか。そうなる理由というのは、必ずしも乱気流の強さにあるわけではなく、負傷した可能性のある乗客たちに一刻も早く医療処置を受けさせたいからだそうですよ。

乱気流のせいでケガをする確率は?

これは答えづらい質問です。というのも航空会社が公開する唯一のデータというのはSharman氏いわく、国家運輸安全委員会に報告するものだけだから。航空会社は「誰かが死亡もしくは重傷を負った」場合のみ、乱気流に関する事故を報告しなくてはならないのです。

該当するのは、事故後30日以内に死亡した乗客、もしくは48時間以上の入院です。それに骨折、大量出血、神経もしくは筋肉への甚大なダメージ、身体の5%以上を覆う2度もしくは3度の火傷、そして内臓器官へのいかなる損傷を含む重傷も加わります。

そのため、「ケガによる1日の入院」などの数多くの「軽い」ケガは報告されずじまいだと同氏は指摘します。つまり、政府が公表している数字というのは実際よりも低い数字だという可能性があるということです。連邦航空局のレポートによれば、2013年、米国内でおきた乱気流によってケガをしたのは24人、そのうち13人が客室乗務員でした。激しい乱気流の最中でケガをする人は、大抵がシートベルトを締めていない人たちです。負傷者の2/3が客室乗務員なのもそのためでした。

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積乱雲は大抵、嵐や強烈な乱気流を伴うため、パイロットは避けます。

乱気流に遭遇したとき、パイロットは何を考えている?

彼らが考えているのは乗客の快適さを保つこと、そして彼らの安全を守ることの2点です。まず大前提として、他機のパイロット同士はリアルタイムで交信できるので、互いに注意喚起できます。もし誰かが乱気流に遭遇したら、次のパイロットと地上にいるスタッフに知らせるのです。

乱気流を避けるためにパイロットは飛行するルートを変更できます。しかしそうすると、余分な燃料と時間を消費するわけで、乱気流を突っ切るという決断を下すパイロットもいます。

とてもトリッキーな状況に「晴天乱気流」と呼ばれるものがあります。晴天の時にレーダーに表示されなくとも突如発生する不意打ちの乱気流のことで、乱気流によるケガの多くはこれのせいです。パイロットも接近を感知できませんから。Sharman氏によれば、晴天乱気流が起きるのは山岳地帯なんだとか。

国家運輸安全委員会によると、去年ビリングズを出発したユナイテッド航空1676便を襲ったのも晴天乱気流でした。激しく降下して5人が負傷したのです。ベルトを締めていなかった乗客は座席から放り投げられ、頭をぶつけ、天井のパネルが割れました。宙を飛び、近くの席に落ちた赤ん坊もいたとか…。

話は変わりますが、去年繰り返し報道された事故に、仁川発ダラス行きのアメリカン航空機が激しい乱気流に遭遇し、怪我をした多数の乗客を病院に運ぶため成田に緊急着陸したというものがあります。機内食カートが機室を飛び出すほどひどく揺れた乱気流だったそうですよ。

繰り返しになりますが、こういった事故が起きるのはごく稀です。しかしYouTubeや報道機関は、スマホで撮影された機内の映像を流したがり、それが大衆に拡散されてゆくのです。責められるべきはインターネットです。それに惑わされないでください。

「これらの事故の発生率は著しく高いわけではありません」と語るのはSmith氏。「メディア、特にソーシャルメディアがそういった映像を入手し、すぐに大騒ぎになってしまうのです」。

では、乱気流を恐れたほうがいいのか?

ここは「ノー」と答えるべきなんでしょうね(僕の友人たちは、常々そう言い聞かせてくれてます)。この答えじゃ心許ない人も、数字を知れば安心できるかもしれませんよ。

Sharman氏いわく「激しい乱気流に遭遇する確率はおおよそ100万分の1」ですが、「実際の乱気流の発生率はもっと高いが、パイロットたちが可能な限り回避しようとしてくれているんだ」とのこと。

僕の場合、乗務員から逐一アップデートを得ているので、地上4万フィートで機体がローラーコースターのように揺れ、周りの人たちが祈ったり手を取り合ったりしているなかで、パイロットから何もなければビビり出してしまいますね。

「でも、乗務員たちが既に案内したであろう内容に対して、補足することがほとんどない時もあります」と、パイロットであるSmith氏は続けます。「つまり、状況をお詫びして、シートベルトを締めたままでいてもらうことです。」

それこそが乱気流に遭遇してもケガを防ぐ手段なのです。常にベルトを着用すること。ベルトのサインが点灯していなくてもね。締めておかないと、乱気流で危険な目に遭いかねませんよ。特に晴天乱気流は、警告が出ないかもしれませんからね。離陸直後にベルトを外しちゃダメです。上昇後や下降前にトイレに走らないで。上空で安全でいる一番の方法はベルトを締めておくことです。

それ加えて深呼吸をして、これも忘れないでください。乱気流は起こりうる現象です。飛行機もあなたもきっと大丈夫ですから。

Image via Shutterstock

Bryan Lufkin - Gizmodo US[原文

(たもり)