ザハ・ハティド、新国立競技場についての声明を発表「以前から警告を行ない、減額案も提言してきた」

ザハ・ハティド、新国立競技場についての声明を発表「以前から警告を行ない、減額案も提言してきた」 1

「一方的に計画から外されてしまったが、これまでの経験を活かし関わっていく用意はある」。

新国立競技場のデザインを手がけた建築家ザハ・ハディド。彼女の設計事務所ZHA(Zaha Hadid Architects)は計画が白紙にされたことを受け、安倍首相に書簡を送るとともにウェブ上でも声明文を公開しました。

声明文では、クライアントである日本スポーツ振興センターの要項に従ってデザインをし、この2年間すべての段階においてコスト、デザインともに承認を受けていたことや、計画が白紙に戻される10日前においても政府からの了承を得ていたと伝えています。また、コストの増加を当初より危惧していたZHA側からの提案や要望が、日本スポーツ振興センターに聞き入れてもらえなかったことや、事前説明を受けずに一方的にコスト増加の要因がデザインにあるとされてしまったことについて批判しています。

国内でもっとも問題視されているコスト増加の要因についてZHAは次の3点をあげています。

1. 五輪開催決定後、日本国内において建設需要が増加し東京においてはこの2年間の間で平均25%建設コストが上がったほか、円安により輸入材料の値段が上がった。(今後も数年間建設コストは増加していくと予想される)

2. 実際の建設を行なう業者(ゼネコン)を決める際、見積額を提示させずに早い段階において選んだことで十分に価格競争が行なわれなかった。

3. デザインを行なったZHAを含めた設計チームとゼネコンが一体となってコスト削減をしていくことを求めたが、設計チームがゼネコンに加わることが許されなかった

またデザインにおいてコストを増加させていると言われているアーチ状の屋根については、決して複雑な構造ではなく、標準的な橋の建設技術を用いており、将来にわたって国際的なさまざまなイベントを行なうためには必要であると述べています。

そしてなによりこの構造はスタンド部分と屋根部分の建設を並行して進めることができるため、スタンド完成後に屋根の建設に取りかかる、屋根をスタンド端から支える構造に比べて施工期間を短縮できると主張しています。コストの面においてもアーチ構造は230億円の見積もりとなっており、全体の承認予算の10%以下であると説明しています。

ザハ・ハティド、新国立競技場についての声明を発表「以前から警告を行ない、減額案も提言してきた」 2

ZHAは、数年かけて行なったデザイン案を白紙に戻すことによってさらに建設が遅れコストが増えるほか、ゼネコンが主体となって計画が進められればより低水準の競技場が建設され、五輪後に他のイベントでも利用するためのさらなる投資が必要になる可能性があると危惧しています。しかし、デザインの変更を行なうことと、今までの経験を活かしてこれからも計画に加わっていく用意があることも伝えています。

2年以上考えてきた設計チームが改善する案と、白紙から半年未満で作るとしている新しい案。はたしてどちらの案がより優れたものになりうるのでしょうか? コストについて批判が相次ぎ、計画が白紙になってしまった流れの中では、機能やデザインが軽視され安く仕上げることを目的とした新しい案が受け入れられてしまうようにも思えます。しかし、ZHAが指摘しているようにコストを削減し直近の賛成が得られたとしても、それが今後50年、100年の未来にわたって認められ必要とされる建築になるのでしょうか。

この問題を考えるとき、それをただ「高いから」と否定するのではなく、「将来何が必要なのか」という議論にシフトしていく必要があるのかもしれません。そしてその将来像に対し、どれだけのコストをかける価値があるのかを議論してこそ「高いから」というコスト批判がなされるべきなのではないでしょうか。そのためには、まず私たち自身がどのような未来を望んでいるのか考え、明確にしていく必要があるのかもしれません。

source: Zaha Hadid Architects日本スポーツ振興センター

(kazoomii)