さらば、Windows Media Center

さらば、Windows Media Center 1

セットトップボックス(STB)、またはケーブルTVボックスは、アメリカでは煩わしいものとして有名です。そんな中、Windows Media CenterはSTBと同じことをより優秀に行えるソフトとして、一部で高い人気を誇っていました。しかし、Windows 10からWMCは含まれないことが判明し、ユーザーだった米GizmodoのAlex Pareene記者も別れを惜しんでいます。本来であれば、Windows Media CenterはSTBキラーになるはずだったのです。それがなぜこうなってしまったのか。以下、Alex記者の分析です。

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先月、マイクロソフトはWindows 10にWindows Media Centerが含まれないことを認めました。驚くことではありません。殆ど誰も使わないのですから(Windows 8では有料アドオンでした)。しかし残念でもあります。WMCは、もしかしたら最高のDVR(デジタル録画)ソフトだったかも知れず、セットトップボックスを潰すはずだったのですから。

STBは、ほぼ例外なく最悪です。それは言ってみれば、力不足のコンピューターで粗悪なデザインのソフトを使っているようなものです。番組ガイドは遅い上にレイアウトは見づらく、広告が張り巡らされています。しかも、チャンネルや機能の分の料金は既に払っているのに、それらを利用するのに必要なボックスを「リース」することで、ケーブルテレビ会社は更に金をむしりとるのです。大抵の場合、リモコンですらお粗末にデザインされています。

Windows XPの為に開発され、その後Vista、7とアップグレードされてきたWMCは、直感的なインターフェイスと、カスタマイズできる上に検索も可能な番組ガイドを備えています。録画した番組をブラウジングするのは簡単だし、付属のメディアプレイヤーは反応が機敏です。できることはSTBとほぼ同じですが、より優秀なのです。その上、ほとんどどんなコンピューターでも快適に動作します。リリース当初唯一の問題だったのは、ケーブルテレビと連動させることでした。

しかし、原因はWMCではなく、ケーブルテレビ会社がチャンネルを配信する方法にあったのです。

コンピューターをSTBに

PCを使ってテレビを観たり録画することは昔から可能でしたし、未暗号化ケーブルチューナーも同じくらいの年月存在しています。しかし長い間、著作権保護されたチャンネルを観るにはケーブルテレビ会社からリースされたSTBがなければいけなかったのです。ところが、2007年にAMDがATI TV Wonder Digital Cable Tunerをリリースし、初めて消費者はSTBの代わりにPCを使い、購入したチャンネルすべてを鑑賞、録画できるようになりました。CableCARDチューナーは元々CableLabsに認可されたOEMハードウェアのみで使えたのですが、2009年にようやく、マイクロソフトはすべてのPCで使えるようにしました。結果として、普通の人もWMCをセットアップしたいと思える輝かしい数年間が訪れたのです。

その間、WMCはアメリカで最高のケーブルDVRでした。Kodi(元XBMC)、MythTV、そしてその他の現在も公開されているデジタル録画ソフトと違い、WMCは暗号化されたデジタルチャンネルも鑑賞、録画できたのです。TiVo DVRも暗号化されたチャンネルを観ることができますし、Windows搭載のPCとCableCARDチューナーを合わせた金額よりは安いでしょうが、TiVoのDVRサービスは一月契約で15ドル(約1万8千円)、一年契約で150ドル、生涯契約で500ドルかかります。でもWMCなら無料です(Windowsを買ったら、ですが)。

つまり何百万台ものコンピューターが、STBを永遠に葬り去れるプログラムと共に販売されていたのです。なら、なぜマイクロソフトはそれを見捨てるのでしょう?

WMCが小さい(でも熱心な)ホームシアターPCコミュニティ以上に広まることがなかったのは、セットアップに手間がかかったからです。暗号化されたチャンネル(ほとんどのチャンネルがそうです)やすべてのプレミアムチャンネルを観るためには、Windows Vistaか7が動作しているPC、CableCARDチューナー、そしてCableCARDが必要になります。CableCARDを入手するにはケーブルテレビ会社に連絡する必要があり、多くの場合技術者がやってきて、TiVO以外のCableCARDチューナーやWMCを使った経験のある技術者なんかほとんどいないにも関わらず、インストールとアクティベーションを行わなければなりません。また、著作権保護されたケーブルをWMCを介してテレビで観るためには、HDCP対応のディスプレイが必要になります。メディアセンター用リモコン、それにワイヤレスマウスとキーボードも忘れてはいけません。HDのコンテンツをたくさん録画する予定なら、当然相応に大きなハードディスクドライブも必要です。

以下の映像はセットアップ手順の一例です(すべてが順調に進んだ場合です)。

この映像は実際よりも煩雑に見えますが、ケーブルテレビ会社とのやりとりがすべてそうであるように、とてつもない時間がかかることもあります。少なくとも、STB(かドングル)を買って差し込むほど簡単ではありません。しかし、原因の多くはマイクロソフトではなく、著作権保護基準ケーブルテレビ会社のお役所仕事にあります。

CableCARDの問題点

問題のほとんどは、結局CableCARDに集約されています。CableCARDは、1996年の電気通信法にともなって通信業界が作った規定で、家電企業もSTBを作れるようにすることでケーブルテレビ会社の粗悪なSTBから消費者を開放し、競争的な市場を作る為のものでした。が、これは完全な失敗に終わりました。原因は主に、通信企業が規定の実施を可能な限り遅らせた上、通信業界のコンソーシアムであるCable Labsのみが、デバイスやソフトがCableCARD基準を満たしているかどうかを決定する力を持っていたためです。おまけに、認可を受けるには多くの時間とお金が必要になります。

それでも、2011年までにはそこそこリーズナブルな値段で、複数のチャンネルを同時録画できるCableCARDチューナーが市場に登場しました。この時こそマイクロソフトは、ノウハウや普及度、リソースを駆使して他に負けないSTBを作れるはずだったのですが、既にWMCを開発したチームは解散していました。マイクロソフトは恐らく、TiVoより安く、特定のハードウェアに縛られない、かつプラグアンドプレイで機能も充実したSTBの代替の開発は割に合わないと見たのでしょう。それは、あるいは正しかったのかも知れません。

WMCの代わりのソフトですが、オープンソースのDVRプロジェクトは複数あるものの、CableLabsの認証を受けたものはなく、これからも当分はないでしょう。現在最高のCableCARDチューナーの1つを販売しているSiliconDustは、CableCARDをサポートしている独自のメディアセンターを開発していますが、彼らの会社は小さく、ユーザーベースもそれなりでしかありません。Windowsを搭載したPCに自動で入っている上、全てのXbox 360でもサポートされていたWMCですら主流にはなれなかったわけで、SiliconDustが面している課題の大きさは途方もないものです。

2020年の1月

それでもWMCから離れられない私達への慰めと言えば、Windows 7のサポートが続く限りは(公式には2020年の1月まで使い続けられることです。それに、サードパーティ製のTVガイドデータサポートがあればその先も使い続けることができるでしょう。アップデートはないでしょうが、そもそも2009年以降大したアップデートが必要ない程安定しているのです。今使い始めても、向こう何年も廃れることはないでしょう。

映像配信技術において、2020年とは遥か未来です。その頃にはどうやって映像が配信されているか検討もつきません。FacebookがVineの有名人を、我々に埋め込まれたOculus Riftに直接配信しているかも知れないし、バレットファームに向かうウォーリグの巻き上げる砂嵐を見つめているかも知れません。

CableCARDに取って代わる物については、CableCARDが実施された直後から議論されていましたが、ケーブル(と衛星)テレビ会社のSTBと独自のシステム抜きでテレビ映像を簡単に鑑賞、録画、編集できるようなシステムの存在に彼らは昔もこれからも抵抗し続けるでしょう。しかし、大手のテクノロジー企業が通信企業並の影響力を持った時、CableCARDに代わる物が必ず現れるでしょう。

CableLabsに対抗できるだけのリソースと、可能な限り全てのモニターを支配したいという野望をもった企業は2つ程あります。一番の将来的な理想は、ケーブルテレビ会社に支払うのはチャンネル代だけで、それを好きなデバイスで自由に鑑賞し、録画し、編集できるようになることです。どちらの企業もそこまで大きくその方向に進歩していませんが、アップルとグーグルなら、マイクロソフトが失敗したことに成功するかも知れません。

Alex Pareene - Gizmodo US[原文

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