登山の前に高山病を知っておこう

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人生一度くらいは、簡単には登れない山を登って、達成感を味わいながら息を呑むような風景に浸ってみたいものです。ですが、道具を揃えて出かける前に高山病だけはちゃんと知っておきましょう。以下の記事は米GizmodoのIndefinitelyWildを担当しているCorey Hass記者による高山病の解説と彼本人の体験談です。

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高山病にかかると目眩を覚え、吐き気をもよおし、最悪の場合死に至ります。IndefinitelyWildの担当記者は誰もが経験したことがあるので、今回ご紹介するのは私達が学んだことと、いかにして症状を抑えるかです。

高山病とは?

高山病は、またの名をAcute Mountain Sickness(AMS)といい、高所の低気圧と薄い空気による低酸素濃度の環境に急にさらされることで起きる症状のことです。

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アメリカ本土で最も高い山の頂上に到達したことより、下山できることの方が嬉しかったですね。標高14,508フィート(約4,422m)、ホイットニー山より。

大気は21%の酸素、78%の窒素、そして1%以下のアルゴンや二酸化炭素などの気体によって構成されています。これは標高に関わらずどこでも一定です(今回は都会や大気汚染の影響は除外します)。標高が上がっていくと、大気が薄れるので気圧が下がります。標高が0mの海岸では1大気圧、つまり14.7psi(ポンド毎平方インチ)、101.325kPa(キロパスカル)、29.929inHg(水銀柱インチ)です。標高10,000フィート(約3,000m)では0.69大気圧まで下がり、10.11psi、69.681kPa、20.584inHgになります。気温が標高に関わらず一定だとして(もちろん高くなるごとに下がっていきますが)、気圧が31%も減っていることになり、同時に酸素濃度も31%減るということになります。ホイットニー山の頂上、標高14,508フィート(約4,422m)ともなれば気圧はさらに下がり0.58大気圧、つまり8.52psi、58.743kPa、17.347inHgにまでなります。Chris記者のように無謀にも20,000フィート(約6,096m)に挑めば、海面の半分以下、正確には46%の酸素を吸うことになるのです。

どんな症状?

標高の高い場所では一呼吸ごとに取り入れられる酸素が少ないので、体の重要な臓器に酸素を供給しにくくなります。そのため呼吸が早くなったり、さらに高度が上がると過呼吸に陥ったりします。一般的な症状には以下のようなものがあります。

  • 頭痛
  • 疲労、衰弱
  • 不規則な呼吸
  • 寝てもすぐ起きてしまう
  • 食欲減退
  • 吐き気、めまい
  • 動悸

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夏のホイットニー山のトレイルは非常にポピュラーです。この時点でジグザグの道を6回スイッチバックし、残り93回!

標高10,000フィート(約3,000m)は多くの人にとって高山病が起こりうる高さですが、これらの症状には個人差が大きく関わり、人によっては6,500フィート(約2,000m)で発生しはじめることもあるため、自分の体と相談するのが非常に重要になります。

高山病を予防するには?

最も効果的で簡単な予防法は、高度順応です。つまり、少しずつ標高をあげていくことで、数日かけて少ない酸素に体を適応させるのです。先月ホイットニー山を一日で登ったときは、金曜日の昼に海岸を出て、次の日の昼には頂上に着いていました。これは当然適切な順応ではなく、その結果苦しむことになりました。

登山の前に高山病を知っておこう 4標高の高い場所で寝ると、今まで見たことがないほど綺麗な夜空が見られます。あ、北斗七星だ!

高い標高で寝るのは、標高2,000フィート(約600m)で運動するのと同じ影響を体に与えるとされています。なので、高く登ったあとは寝るために低い場所まで戻るのがおすすめです。

これはエベレストを登る登山家達がよく使う方法で、近いキャンプを飛ばして1つ上のキャンプまで登り、飛ばしたキャンプに戻って寝るのです。これにより、過酷な環境に体を一時的にさらし、かつ夜に戻ることで体に慣れる時間を与えられるのです。

登山の前に高山病を知っておこう 5標高12,000フィート(約3,700m)にあるトレイルキャンプ側の小さい湖が、頂上へ向かうまでに水を補給できる最後の場所です。

登山中最も大切なことの1つは、常に水分を補給するということです。高山病によって食欲も喉の渇きもなくなるので、脱水症にもそれだけ早くなってしまいます。

登山の前に高山病を知っておこう 6背後にホイットニー山が見えます。この2頭のシカは全く私達を恐れていませんでした。これで狩りのシーズンだったらなぁ...。

中には登山の前に事前にアスピリンを飲む人もいます。他にもダイアモックスやデキサメタゾン、ニフェジピンなどの処方薬もあります。まずはかかりつけの医者に相談してみましょう。

高山病の治療

下山して!頂上が目の前なら特に難しい決断かも知れません。しかし高山病を無視すると、症状は急に悪化し高地肺水腫や、脳に水分が貯まる高地脳浮腫をも引き起こします。もし症状があまり酷くないなら、その標高にとどまって順応してもいいかも知れません。

頭痛などの症状はアスピリンで軽減させることができますが、頼るのは得策ではありません。もし酸素ボンベがあるなら、体が欲している酸素を取り入れる事で回復できるかもしれませんが、多くの人はボンベを持っていないでしょう。

とにかく、最も信頼性のある治療法は下山することです。多くの場合3,000フィート(約900m)ほど降りると症状が軽くなっていきます。

個人的な体験

登山の前に高山病を知っておこう 7Garmin Fenix 3は私の心拍数と高度をチェックしてくれるのですが、それを見て確信しました。ここを早く出ないと!

ホイットニー山を登るまで、私は高山病に悩んだりはしませんでした。コロラドで標高12,000フィートまでハイキングし、そこからスキーしたこともあるので、大丈夫だと思っていたのが間違いでした。

ひとたび標高13,500フィート(約4,100m)を超えると、明らかに高山病の症状が出ていると気付きました。食欲が全くなくなり、水を飲むことさえできませんでした。息はとても短く、心拍数は105以上をキープしており、吐き気に襲われました。頂上にはたどり着きましたが、お世辞にも賢い行動とはいえません。他の登山者が一見平気そうな中、一人だけゾンビのように歩くのは非常に辛い体験でした。私があまりに辛そうなので、Valerieは私に5分ごとに水を飲ませなければなりませんでした。彼女も高山病の症状が出ていましたが、明らかに私よりも軽症でした。

そこが高山病の難しいところで、受ける影響は人によってさまざま、どれだけ鍛えていても、例えグループで最もタフな人であっても関係ないのです。どんな山の頂上も、命には代えられません。頂上は決してなくならないし、元気なときに制覇してくれるのを待ち望んでいるはずです。

登山の前に高山病を知っておこう 8Valerieの兄妹、Kyle(左)と父のMark(中央)と母(この旅には同行しませんでした)は皆ホイットニー山を登ったことがあります。家族では私達が最後の登山者となったのですが、彼らと登れたのは幸福です。頂上まで、今回彼らは邁進しました。

Valerieと私は今週末にまたホイットニー山に向かいます。今回は標高12,000フィートのトレイルキャンプに留まり、しっかり高度順応を行うつもりです。頂上へ向かう時、今度は完全にグロッキー状態である事を避けられたらと願います。

今年はホイットニー山を3つの異なる方法で登り、皆さんにベストなルートを紹介するつもりです。私達の冒険をIndefinitelyWildで是非読んで下さいね!

僕も高山病についてはちょっと経験があります。高山病の影響は人によってまちまちなわけですが、僕の経験では高度順応をすることで体の調子が劇的に変わると感じました。例えば、僕が初めてホイットニー山を登ったのは冬だったのですが、標高9,000から12,500フィート(約2,740mから約3,810m)周辺で3日間順応、トレーニング、睡眠を行ないました。4日目に頂上についたときには、アメリカで最も高い場所と僕が住んでいるロサンゼルスの海面レベルの違いがわかりませんでした。

対照的に、今年の4月、僕とGilは標高13,711フィート(約4,180m)のアボット山(シエラネバダ山脈の東側、ビショップから北に約1時間)に1日で挑戦しました。アボット山への登山口は、シエラネバダ山脈の登山口の中で最も高い10,300フィート(約3140m)に位置し、数時間の睡眠をとったあとに出発しました。

Gilは頂上に到達しましたが、僕はそこから数百フィート下で止まりました。なぜなら、頭痛、吐き気などの高山病の症状が出ており、それはヒマラヤのイムジャ・ツェ(アイランドピーク)を下山中、標高18,000フィート(約5,480m)で経験したものと同じだったからです。だから、僕は頂上へ向かわず、大事をとって下で休みました。Gilと僕が山を下山しきる頃には症状は収まっていました。

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images by Chris Brinlee Jr. , Corey Hass

Corey Hass - Gizmodo IndefintielyWild[原文

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