グーグルOnHub解体:存在しない未来のためのルータ

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アンテナ14本、前のめりに詰まってる。

OnHubはグーグル最新の奇妙な実験です。それは200ドル(約2万4000円)もするルータで、アンテナが14本内蔵されています。グーグルいわく、いろんなニーズのワイヤレスデバイスを無数に持つ人のための万能薬となるらしいです。でもそれって具体的にどういう意味なんでしょうか? そこで米GizmodoのAnnalee Newitz編集長が、iFixitのハードウェアハッカーたちと一緒にOnHubを分解してみたんです。

ちなみにiFixitとは米国カリフォルニア州にある小さな会社で、あらゆるデバイスは修理可能であるべきという理想を掲げています。2003年にKyle WiensさんとLuke Soulesさんが立ち上げたiFixitは、いろんなガジェット向けに素晴らしいツールキットや交換パーツを販売しています。が、特に重要なのは、彼らが主要な新製品を発売と同時に分解し、その過程をていねいに記録し、無料の修理マニュアルをオンラインで公開していることです。OnHubみたいな新しい、情報の少ない製品について知りたいとき、iFixitは強力な味方になります。

ただし米GizmodoからOnHubについてコンタクトしたとき、彼らはまだそれを入手していなかったため、Newitz編集長のプレオーダーした端末が人身御供となりました。でもその甲斐あって、分解すればするほどに、奇妙なものが見えてきたんです。

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Newitz編集長は、iFixitのAndrew GoldbergさんとSamantha LionheartさんによるOnHubの分解作業を直に見てきました。上にあるように、OnHubはプラスチックの丸い筒に囲われています。LEDのリングが上部のスピーカーの周りで光り、デバイスがちゃんと動いているかどうかを示しています。スピーカーには小さなライトセンサーが埋め込まれていますが、これは多分暗い部屋でデバイスの光を弱くするためのもののようです。

また上の画像で見られるのはOnHubの背面です。分解してすぐわかったんですが、メインの指向性アンテナはこの反対側に位置しています。なので、電源ケーブルやUSB 3.0ポート、ネットワークケーブルは、部屋の壁側に向ける必要があります。つまり、何かを素早く挿しこみたくてもちょっと面倒な配置になっています。

アンテナがいっぱい

下の画像では、裸のOnHubがどんな感じかわかります。そそるようにすき間が空いていて、その中にメインの部分が潜んでいます。Goldbergさんがこじ開け専用の工具でこれを開くと、指から血が出てしまい、ケース側も止め具が何ヵ所か壊れました。ケースを開けるときだけでなく、このあともOnHubの分解しにくさを感じる場面が何度もありました。

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分解しにくいのがわかるとともに、OnHubが普通の人向けに作られていないことも見えてきました。上の画像では、マザーボードがふたつとそれを挟むヒートシンク、ケースにくっついたひし型の指向性アンテナ、リング型のアンテナボードが見えています。このアンテナボードは、12本のアンテナにつながっています。またここでは見えませんが、もうひとつ「渋滞センシング」アンテナなるものもあります。つまり、14本のアンテナがスピーカーとライトセンサー付きデバイスに内蔵されているのがOnHubです。でもそこにマイクはなく、ネットワークポートもひとつだけです。ルータメーカーのTP-Linkが作ったこのデバイス、このあたりからプロトタイプの匂いがしてきます。

下の画像では、アンテナとマザーボードの間のコネクタが細かく見られます。金色のコネクタはアンテナ用で、6本が2.4GHz、6本が5Hz用になっています。黒い正方形はそれぞれアンテナ2本を内蔵しています。このうちほとんどがWi-Fi用ですが、ひとつはBluetooth用、ひとつは802.15.4というスマートホームネットプロトコル用です。

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下の画像は、スピーカーを囲むアンテナボードを間近で見たところです。OnHubには今できることがほとんどないのに、これほどのアンテナが本当に必要なんでしょうか? 写真を撮っていたLionheartさんが「これは実験的アンテナクラブね!」と感想をもらしていました。

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下の画像ではヒートシンクから取り外したマザーボードが見られ、iFixitが各パーツについてラベル付けしています。ここで特筆すべきは、スマートホームデバイスの規格ZigBee用コプロセッサがあるために、このハブがスマートホームでの利用を目的のひとつにしているとわかることくらいです。

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存在しない世界のためのデバイス

スマートホームでの利用が「目的のひとつ」ってことについてちょっと補足します。OnHubはスマートホームとか、接続されたデバイスがたくさんある空間での利用を想定しています。でもOnHubは普通のWi-Fi接続にも、Bluetoothにも使えます。ただネットワークポートはひとつしかなく、有線ネットワーク用には基本的に使えない、でも我々のほとんどはまだ有線を使っています。それにマイクがないってことはボイスコマンドも使えず操作方法は唯一、グーグルのOnHubアプリだけです。

マザーボードをもっとよく見ると、一部のチップは2014年終わり、または2015年初めに作られていることがわかりました。これに対しWiensさんいわく、アップル製品ならたいてい発売の1週間前くらいに作られたチップを使っています。つまりOnHubは大規模生産されてはおらず、数ヵ月かけて既製の部品のつぎはぎで作られたものらしいということです。まさにこれはアンテナクラブみたいなものなんです。

ある意味、それはOnHubがまだ存在しないガジェット環境のために作られているからです。5年後にはもっと多くの人が照明からカギ、ペットのエサやり器やカメラをワイヤレス経由で操作するようになっていると思われます。そうすれば多分OnHubの居場所ができてきます(であればボイスコマンド用マイクがないことが変だし、ポートももっとあってもいいんじゃないかと思いますが)。OnHubは、ワイヤレス端末が異なるたくさんのプロトコルを話す世界のためのハブなんです。

でも今はまだ、OnHubには使い道がありません。思うに、グーグルはデベロッパーやiFixitにいるようなハードウェアハッカーに対し、まさに我々がしたようなことを望んでいたんじゃないでしょうか。つまり、分解し、評価し、次世代への構想を読み取るということです。たしかに次期版が年内発売で準備中らしく、それはTP-LinkじゃなくAsusが作っているようです。

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修理不可能

新しいデバイスで実験していて、ごく基本的なことを聞き忘れることがよくあります。つまり、どれくらい簡単に分解できるかってことです。多くの人は使いやすさとかアプリのほうに目が行ってしまいますが、iFixitの人にとってはそれは重要じゃありません。というか、彼らはOnHubに電源すら入れませんでした。彼らが知りたかったのはハードウェアの素の性能、そして、パーツが取り外したり、交換したり、リサイクルしたりできるかどうか、だけだったんです。

上の画像にある通り、iFixitはOnHubの修理しやすさを10点満点の4点と評価しました。このデバイスは、簡単に分解させないために設計されたかのようです。つまりこの実験的な筒型デバイスに200ドル(約2万4000円)投じても、自分で修理はほとんどできないということです。ということは、長くは使えなさそうです。そして捨てるとしても、リサイクルするための分解に時間がかかり、そこまでする価値がないと判断されそうです。

存在しないエコシステムのために作られたOnHubは、修理が難しいため、結局既存のエコシステムを傷つけることにもなります。OnHubは未来のディストピアから来たのかもしれません。Asusによる次期OnHubがもっと便利で、良い未来を前倒しするようなものであり、道具さえあれば修理もできることを期待しましょう。

iFixitの分解について、全プロセスはこちらで公開されています。

Photographs by Samantha Lionheart

Annalee Newitz-Gizmodo US[原文

(miho)