結局レーシックってどれぐらい安全なの?前編

2015.09.28 19:00
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「片目299ドル(約35,900円)で視力矯正」というメールが1月から4ヶ月で20回も届きました。手術は「安全。FDA(米食品医薬品局)認定済み」とのこと。

細かい字を読むと、「結果にはバラつきがあります」とあります。視力喪失の危険を伴う合併症のカテゴリが7通りあることも、視力喪失の危険を伴わない副作用が17通りあることもどこにも書いていなくて、「バラつき」とあるだけです。副作用にはたとえば「光がまぶしい」、「角膜表面が乾くことに伴う目の炎症」、「痛みや異物感」、「衝撃に弱くなる」などあるわけですけどね。また、メールは割引ですが、総費用は平均すると片目2,000ドル(約24万円)というのが相場です。

どんな手術にもリスクはつきものです。「LASIC(laser in-situ keratomileusis)」の場合、リスクは患者さんが手術前にサインする一般の同意書に全部記載されています。多くの場合、手術はすぐ終わって副作用もありません。実直な医院では患者さんの大体5分の1を適合審査の段階で落としてしまいます。

が、ジジッと切って視力矯正する施術が初めて行われて四半世紀が経つのに、未だに一部の人からはドライアイ、慢性の痛み、その他深刻な副作用が国や業界によって矮小化されてる、無視されているという怒りの声も。手術は後戻りが効かないのに、こうした危険性を一般の人に充分告知しているのか?というんですね。

こうしたレーシック難民からの圧力を受け、FDAはようやく共同出資でQOL調査に乗り出しました。批判を鎮めるためだったのですが、先ごろ発表になった途中報告を見る限り、その目論見とは正反対の方向に向かっているようです。


初期の施術


こうなるまでの経過をすこし振り返ってみましょう。

いわゆる「エキシマレーザー」が初めて使われたのは1980年代後半、黎明期の施術「photorefractive keratectomy(PRK)」でした。PRKは医師が角膜上皮を除去して、エキシマレーザーで角膜表面に視力矯正用の精密な窪みを入れるもの。痛い手術で、回復には片目で数週間もかかりますが、レーシックと違って角膜神経まで窪みは到達しません。

まもなく医師の間で流行ったのが、より短期で済ませられるレーシックです。これは角膜表面を薄く切って蓋になるフラップを作った上で、中にある光を反射する角膜実質にレーザーで矯正を加え、蓋を閉める手術です。

1996年から2000年に定年退職するまでMorris Waxler氏は、FDA眼科用手術装置部で角膜レーザーを管理する診断・手術器具部門の長を務めました。つまりFDAが最初のレーシック用レーザーを認可した1998年7月当時、担当部門のトップだった人。

認可したのは、カオスが加速する状況に一定の歯止めと統制を加える目的もあったため、慢性的痛みを含む長期のリスクには充分な注意が払われていなかったのだ、と氏は言います。

「とにかくこの問題をなんとかしろということでした」。痛みは数ヶ月続くかもしれないし、1年続くかもしれない。「ならばラベルで『caveat emptor(買い手がリスクを負担すること)』、『buyer beware(買い手は要注意)』などと表示すればいいということになったんです。あとは各医院が正直に患者に『痛みはある』と説明するだろうと思ったんですね。ところがそうじゃなかった」(Waxler氏)

レーシック手術後に角膜神経は完全には再生しないのだと語るのは、スペインのアリカンテ神経科学研究所創立者で目の痛みを生理的に研究する分野のパイオニアであるCarlos Belmonte氏です。「一番のリスクは小さな割合ではあるけど、角膜神経の再生に異常が発生することで、これが起こると神経痛が起こって取り返しのつかないことになるんですよ」、「ただしこれは手術で起こるリスクです」

2007年、Belmonte氏はレーシック手術で角膜神経を傷つけた後に「ファントム」と呼ばれるドライアイの痛みが起こることを示唆する研究論文を発表しました。時を同じくしてボストン市内の眼科医Perry Rosenthal氏は、レーシック手術後に同様の現象が定期的に現れて激しい痛みを訴えてくる患者さんたちの事例をまとめています。同様の「ファントムペイン(幻肢痛)」の報告は、目を摘出した人や角膜移植を行った人に見られる現象として別の研究者たちから報告が上がっています。それと同じようなことが起こるんですね。

先のWaxler氏は2000年にFDAを引退後、医療規制分野のコンサルタントを務めてきました。レーシックのことは特に深く考えることもなかったんですが、6年前にレーシックで目を痛めた患者さんから電話がきて、なんであんなもの承認したんだと問い詰められ、それをきっかけに同じ症状を訴えるほかの患者さんたちの話も聞くようになりました。「『どうしてこんなことになってしまったんだ』と言ってる自分がいましたよ」(Waxler 氏)

FDAのサイトで論文や資料を調べてみてわかったのは、どの問題も全部報告はされていたのに「symptoms(症状)」というカテゴリに収まっていて、「adverse event(有害事象)」ほど深刻には捉えられていなかったということです。

こうしてWaxler氏は2010年と2011年に、もともと調査で記録された有害事象は約20%だったと主張し、一躍時の人になります。FDAは後日、グレア(まぶしいこと)やドライアイでは症状がマイルド過ぎて、有害事象とは呼べないという見解を発表しました。

が、そんな見解はよそに被害者団体がFacebookグループやサイトで体験談や証拠を公表しはじめました。そんなサイトのひとつ「lasikcomplications.com」では、レーシック関連の自殺と自殺未遂のページまで設けて、ニュースやFDAに提出された被害報告を追跡しています。

FDAで2008年4月に開かれた公聴会では、20人近くの人がレーシックに反対の意見を述べました。術後に患者さんの治療をした眼科医とか被害者で、自殺した患者の証言者2人もいました。

このうちニュージャージー州で財務管理のお仕事をしているMatthew Kotsovolos氏(46)は2006年にレーシックを受けて以来、「誰もこの世にこんな痛みがあるとは想像もつかないような痛み」を経験していると証言しました。矯正後の視力は20/20(正常視力)だったので、医師は「手術は成功だ」と言われました。それはそうなのかもしれないけど絶えず痛みがあるので体力の消耗が激しく、「生き地獄だ」と言っています(後編につづく)。

後編


*本稿はMosaic初出記事をCreative Commonsライセンスにもとづき再掲しました。
image: UCI Institute for Innovation under Creative Commons license.

Bryn Nelson - Mosaic - Gizmodo US[原文
(satomi)
 

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