発端はゲーム業界のGamergate。SXSWの性差別パネル中止に抗議して、イベント不参加を本気で検討するメディア多発

発端はゲーム業界のGamergate。SXSWの性差別パネル中止に抗議して、イベント不参加を本気で検討するメディア多発 1

2014年秋に、ネット上で起きている「Gamergate」(ゲーマーゲイト)と呼ばれる議論が話題になりました。これは、ゲームメディアが発端となって起きたゲーム業界に根付く性差別についての議論で、この批判的な意見がオンラインコミュニティを中心に噴出してから、インテルなどの大企業がゲームメディアへの広告掲載を取りやめるほど大騒ぎになりました。今もツイッターのハッシュタグ「#GamerGate」で活発な議論が行われています。

ファミコン時代からゲームではお色気場面が時々出てきます。子どもが見ても冗談で済まされる程度ならまだしもなんですが、特に海外のゲームでは、アダルトゲームでなくてもゲーム内で露骨な性描写や激しい性暴力シーンが出てくることもあります。

そこまで行かなくても「そもそも、ゲーム内に出てくる女性が性の対象として偏った扱いを受けているのでは?」というのが、Gamergateでの議論の始まりだったんです。ゲームはプレイヤーが操作をすることで、より能動的に「女性を性の対象として搾取する役割になる」という点で問題が大きいと指摘する人もいました。

ですが、ジェンダーに関する議論は往々にしてバックラッシュに遭います。Gamergateも例外ではなく、問題提起をした女性活動家やジャーナリストは、中傷や脅迫、時にはハッキングもふくむ苛烈なネット暴力にさらされることになりました。

そういう背景もあり、来年3月に米国テキサス州で開催される世界最大級のテクノロジーイベント「SXSW 2016」では、Gamergateに関連する2つのセッションが企画されていました。これはゲーム業界に限らず、表現やジャーナリズム、さらにはテクノロジーと倫理に関わる注目の問題でした。ですが、そのセッションを開催取りやめると主催者から突然発表があったんです。

予定されていたセッションと中止の経緯

予定されていたにもかかわらずキャンセルされたセッションは次の2つです。

レベルアップ:ゲーム内のハラスメントを克服することでゲームは次の段階に進化する

セーブポイント:ゲームコミュニティにおける議論

SXSW InteractiveのディレクターHugh Forrestさんは、これらのセッションをアナウンスした日から7日間に渡って、数々の激しいオンライン暴力にさらされたとコメントしていました。結局、来場者やパネリストの安全に配慮するという理由で、これらのセッションを中止してしまいます。

大手メディアが企業ぐるみでSXSWをボイコット

この決断に激怒したのがThe Vergeを始め6つのメディアを持つ企業Vox Mediaでした。同社は声明で次のように述べています。

これらのセッションをキャンセルしたことで、SXSWは、今日のメディアとテクノロジーが本当に議論すべき問題にふたをしてしまった。この問題が解決しない限り、弊社のメディアはSXSWに出席することはないだろう。

また、The Daily Beast のゲームコラムニストArthur Chuは、SXSWのパネルピッカーの選定を「利己的で欺瞞に満ち、著しくプロ意識に欠けたもの」と、激しく非難しています。

さらにBuzzfeedも彼らと足並みを揃えて、SXSW運営陣がオンライン・ハラスメント問題を議論する方法を提示しないかぎり、SXSWには参加しないと編集長やパブリッシャーの署名付きのコメントを発表しました。ちなみにBuzzfeedのスタッフはこれまでSXSWでは数多くのパネルセッションに参加する常連さんでした。

業務の性質上、メディア企業や記者に対する嫌がらせや脅迫はつきものです。特にウェブメディアの場合、ネット上の中傷や脅迫も簡単に起きます(何しろ自分の部屋から指一本でできますから)。ですが、それに簡単に屈しては、言論の自由や公正なジャーナリズムを守ることはできません。Vox Mediaなどのメディア企業は社員の安全を守りながら、それでも報じるべきことは報じてきました。

さらにGamergateは、人権とジャーナリズムに関わる問題として、欧米のメディア企業はとらえていました。つまり、SXSW側の決断は公正な議論の場を暴力がつぶす手助けをしたものとみなされたんです。

日本では、SXSWのゲームカンファレンス自体まだ馴染みがないですが、SXSWは規模も経済効果もテクノロジーのカンファレンスとしては世界最大級。この反響は、まだまだ燃え広がっていきそうです。

source: Reuters, The Verge,SxSW

(高橋ミレイ)