遠い星の光が宇宙人の巨大構造物に遮られる確率を論考

遠い星の光が宇宙人の巨大構造物に遮られる確率を論考 1

地球から1,500光年彼方に奇妙な点滅を発する星が見つかり、一部の専門家から「もしや宇宙人がつくった巨大構造物に光が遮られているんじゃないか」という声が出ています。「構造物」って何? 仮にそうだとして、ケプラー宇宙望遠鏡に映るようなもの?…という辺りを詳しく見てみましょう。

問題の星は「KIC 8462852」。F型星なので超高熱なのですが、ケプラー宇宙望遠鏡では極めて異常な光の増減が確認されており、まるで星の外側に何か障害物があって星の発する光を遮断しているかのようなのです。光が落ちる様子から判断して、間にある別の星に光が遮られているのとは違うんですね。

自然界の天文物理学では到底説明がつかないため、エイリアンの巨大構造物の可能性に議論の焦点が移ったのです。

可能性は数多あれど

実際この星の光の落ち方は、形もタイミングも奇妙なことだらけなのです。

周辺の星間塵(ダスト)で遮断される可能性は薄いです。星は古すぎて、惑星形成円盤が周辺にあるとも思えないですから。

流星の嵐はどうか? 流星は星の光を遮断する面では弱いので、その可能性も低いです。

惑星衝突で出た破片―これは結構いけそうですけど、そういうイベントは極めて稀なので、そもそもケプラーで捉えられるようなものではありません。

…という八方塞がり。すっきりくる説明が不在のまま、多くの人が心密かに(あるいは声高に)思い描いたのが、仮説上のエイリアンのメガ構造物「ダイソン球」です。

遠くの星の光がエイリアンの巨大構造物に遮られる可能性はいかほど?

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Concept of a Dyson sphere. Kevin Gill/Flickr, CC BY-SA

ダイソン球は米国の物理学者フリーマン・ダイソンが1960年代に提唱した仮説。宇宙人の技術が発達するにつれ、エネルギー消費量は上がっていきます。どの太陽系でも最大のエネルギー源は、真ん中にある恒星なので、文明はやがてそれを吸い上げるために恒星の周りにソーラーパネルを築き始める。かかる構造物が周囲を埋め尽くしてゆき、最終的には恒星をまるごと覆ってしまう。それがダイソン球です。

しかし仮に完璧な球体なら星が発する光は全部吸い取られてしまうので、ケプラーからは捉えられないはずですよね。点滅して見えるということは、まだ工事中だということになります。

果たしてそうなのか?

たぶん違うんじゃないかなーと僕は思ってます。

なぜなら、仮に宇宙文明がダイソン球を建造しているとするなら、小さな恒星のまま長期間残るとは考えられませんからね。天体衝突がレア過ぎてケプラーでは捉えられないのと一緒で、ダイソン球の建造期間はみじか過ぎて工事中の様子なんか映るわけないんです。ある太陽系でダイソン球が建造されるにしても、その建造を現在進行形で見れる確率はとても低いです。

「そんなのどうしておまえにわかるのさ!」って?

ダイソン球を築くには、近くの天体(惑星とか)をバラして集光器の資材を調達しなきゃならないんですね。先日仲間と共同執筆した論文で水星をバラしてダイソン球を一部建造するのにどれぐらいの時間がかかるか試算してみたら、31年でした。分解のアプローチはいろいろありますが、そのひとつが惑星を物理的に分解する方法です。アルミニウムや鉄鋼産業がやってるみたいにね。業界の過去の経験からもわかるように、これには大変なエネルギーコストがかかります。従って、やり遂げるにはひと工夫要る。つまり既に掘削した鋼材を使ってさらに掘削する機材をつくり、それを集光器で集めたエネルギーで駆動し、こうして指数関数的なフィードバックのループを作ってやるんです。

ガス惑星は分解に何百年もかかりますが、地球型惑星の分解は水星ほど長くはかかりません。僕らが論文で目指したのは、太陽系のエネルギーをほんの一部使っただけでも、巨大宇宙コロニー建造計画(到達可能な銀河すべてに到達し、最終的にはその各々の太陽系にも到達すること)に取り掛かれる程度のエネルギーなら十分調達可能なことを示すことでしたが、重要なポイントは、この種の惑星エンジニアリングは宇宙のタイムスケールで見ると短期間で終わるということです。

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その奇妙な星のあるエリア(c)NASA

「KIC 8462852」のようなF5型星の寿命で捉えると、球の建造に千年かかったとしても一瞬です。 星は推定1.46太陽質量ありますから、その寿命は41億年。ダイソン球に包まれていく期間は、その410万分の1に過ぎません。

まあ、これは球体になると仮定しての確率です。エイリアンが住む惑星が宇宙に数個しかなくて、それがこんな風に隠れていたと仮定して、それをわれわれ地球人が目にできる可能性はもっともっと低い。 ケプラーが観測する星は150,000個ありますけど、その中に偶然、工事中のダイソン球が紛れてるなんてのはほぼ奇跡に近いです。

ゴミ惑星、ゆっくりやるエイリアン?

もうひとつ考えられるのは、途中で投げ出されて誰もメンテしてないダイソン球というシナリオです。そういう構造物なら重力で一塊になって瓦礫のストリームになるので、それもあり得るなって一瞬思いますよね。ただよく考えてみるとダイソン球の瓦礫は最初からほぼ同じ軌道上に固まってますから、それが合体してゴミ惑星になるまでにかかる時間は自然の惑星形成よりおそらく短いんですね(数百万年に対し10万年という程度)。だからやっぱりダイソン球の残骸を地球人が目にできる可能性は低い…。

まあ、建造現場より残骸を見る確率の方が桁違いに高いということは言えると思いますけどね。どの廃墟もそうですが、建設は一瞬でも、廃墟は何年もそのまま残りますから。

残るは、エイリアンが恐ろしくゆっくり時間をかけてダイソン球を作っている、というシナリオぐらいですね。これはある意味、今われわれが地球で行っていることでもあります。ちょっとずつ分解して、衛星も1基1基打ち上げて。従って、宇宙人がのろのろと緩慢な発達を選んだ場合や、ダイソン球もちょこっとあれば間に合うという場合には、こういう現象が起こるかもしれません。

ただ、30,000,000,000,000,000,000ワット(恒星から1天文単位の地点に100,000km[原文まま]の集光器を置いて得られるエネルギーに相当)必要となると、もう「ちょこっと必要」というレベルではありませんよね。これはダイソン博士が最初提唱した理論でベースにした予測値です。博士は人間のエネルギー需要が指数関数的に増大し、最終的にはそれがロジカルなエンドポイントになると予測したのです。文明の成長率がたかだか1%でも、数千年もすれば、その星のエネルギーは大方使わないと回らなくなってしまうんです。

未完の環球を目撃する確率をある程度得るには、成長率はもっともっと低くないといけない。可能性はまったくゼロとは言い切れませんけど、生活と社会は放っといても成長するものなので、そこまで緩慢なのは無い気がします。

エイリアンのほかの構造物?

光を遮蔽しそうなものは、ダイソン球以外にもあります。宇宙文明では小惑星の物質を光圧で仕分けできるとか、シェードや鏡で気象を人工操作しているとか、太陽帆で移動すると提唱している研究もありますからね。どれも星に比べたらちっちゃな道具だけど、数が揃えば、ケプラーが異常を捉えることもあるかもしれません。

光度曲線を論拠に、星エンジンが写り込んだ確率を試算した研究もあります。星エンジンとは鏡を巨大な面積に並べ、太陽系全体を動かすというもの。ただ残念ながら、僕が見る限り試算で得た光度曲線は「KIC 8462852」のそれとは一致していないようです。

結局データが足りないのでなんとも言えませんね。ただ、この意味するところは甚大です。もし宇宙に知的生命体がいないのなら、地球人はラッキーとも言えるし、知的生命体が短命で滅びる何よりの証拠とも言えます。しかし現在(あるいは過去に)技術に長けた文明があるとするならば、それはものすごく勇気付けられること。少なくともケプラーでキャッチできる程度には長くサバイブできるってことですからね。

まーしかしこうしてあれこれ考えてる間にも、普通の宇宙物理学でこういうヘンな遷移曲線が生まれる現象が解明されておしまいってなるのかもね、ヘンな物体によって引き起こされる、とかなんとか(ホット・ジュピターも最初は学会に衝撃をもって迎えられた)。宇宙というやつはまったく不可解なことだらけで、そこに生きてると思うだけで楽しくなりますね。でもだからこそ星は見てしまうんでしょう、何が見えるかわからないから。

筆者のAnders Sandbergさんは、オックスフォード大学マーティンスクール&未来ヒューマニティ研究所のジェームズ・マーティン研究フェロー。本稿は「The Conversation」初出記事の再掲です。

Top image via Slawek Wojtowicz

Anders Sandberg—The Conversation - Gizmodo US[原文

(satomi)