新しいApple TVはいままでとまったく違う。例えるならばiPod shuffleとiPod touchくらい

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ホームエンターテイメントの体験を、革新するであろうプロダクト。

数日間使用することができた新しいApple TVの感想です。「テレビの未来はアプリにあると信じています」と語ったアップルCEO、ティム・クックの言葉は近い将来現実のものとなるでしょう。

こちらの記事では、これまでのApple TVを「iPhoneが生まれた時の段階にずっととどまって」いたと書いていますが、実際には今回の進化はそれ以上なのではないかと感じました。

表題でも書いたように、iPodに例えるのであればiPod shuffleとiPod touchくらいの差があるように感じたのです。端的にいうと、そのポイントは3つ。App Storeというエコシステムを手に入れたこと、Touchサーフェスを手に入れたこと、Siriに対応したことです。

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1つ目の「App Store」について。

App Storeというエコシステムを手に入れたことによって、新しいApple TVは、iPhoneと並び、豊富なサードパーティーアプリを使用できるiPod touchのような存在になりました。いままでのApple TVを例えるならば、サードパーティーアプリのないiPod shuffleかiPod nanoといってもいいかもしれません。

App Storeを導入するうえで、大幅なアップデートが図られました。「tvOS」と「A8チップ」により、プリインストールされた機能しか使えなかった既存のApple TVとは異なり、さまざまなアプリを動かすことができるようになっています。Netflixバンダイチャンネルのような動画サービス系アプリもありますし、ゲーム系アプリもあります。

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一方で自分が気になったのは「Star walk for kids」という子供と楽しみながら星座の勉強ができるアプリ。インタラクティブな天体観測ができるんですが、今度キャンプ行くし、これで予習しておこうかなという気になりました。

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2つ目は「Touchサーフェス」を手に入れたこと。

外見上の変化ではこれが一番でしょう。スワイプもタップもiOSの感覚に近いです。ただ、ビデオ選択時などで大きくスワイプすると思ったよりも一気に動きます。つまり、とてもクイックリー。指先の動きから寸分も遅れることなく画面が動くんです。地デジ以降、テレビのリモコンは一瞬のタメがあることがほとんどなので、それに慣れきってしまっていた今は若干の戸惑いを感じているんですが、そのうち慣れることでしょう。

動画再生中の操作としては、左の端を押すことで10秒巻き戻し、右の端を押すことで10秒早送りになる機能は地味に便利。

ここも、タッチディスプレイのないiPod shuffleからiPod touchまで一足飛びに進化したような印象を与えたポイントでした。ちなみに、Touchサーフェスの部分はガラスを使用しているのですが、アップルに問い合わせたところ、詳しい材質は公表できないものの、じゅうぶんなテストを行なっているとのことで、テーブルなどから落下しやすいリモコン類としては一安心。

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そして3つ目が「Siri」に対応したこと。

ビデオの検索の際にタイトルや俳優名をしゃべるだけで目当てのビデオを見つけることができます。現在の検索対象はiTunesのビデオだけだそうですが、APIが公開されているので、ほかの動画サービスの対応に期待したいところ。Siriと会話をしながら映画の年代やジャンルで絞り込みをしていくことも可能で、そのあたりの柔軟さが実際の使い勝手をよくしています。

また、Siriでは近くの天気やスポーツの結果なども教えてくれます。ただし、iOSのSiriよりは機能は限定されていて、Webの検索ができなかったりウィットに富んだジョークが控えめになっていたりしているようです。その代わり、発売当初からSiriは日本でもUSと遜色ない使い勝手に仕上がっているとのこと。これはうれしい。

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とはいえ、細かい要望はあります。

ひとつは、TouchサーフェスにiPhone 6s/6s Plusで採用した圧力を感知できる「3D Touch」を応用してもよかったのではないか、ということ。App Storeというエコシステムを拡充すべくゲームアプリに力を入れるのであれば、なおさらです。実際、iPhone 6s/6s Plusのゲームアプリでは、画面をプレスすることで、タップとも長押しとも違う操作をできる、新しい使用感のゲームが登場しています。

また、もうひとつがソフトウェアキーボード。Siriのおかげで、ビデオの検索の際にタイトルや俳優名を入力する必要がないことはとても素晴らしい。ただ、アカウントやパスワードの入力の際はソフトウェアキーボードが必要です。まぁ、「えむえー…」ってアルファベットを読み上げるわけにはいかないので、それはわかります。ただ、ソフトウェアキーボードの文字の配列などは、Touchサーフェスを活かしたものになっていないように感じました。

以前あったiOS端末で文字入力できる機能も現在はありません。しかし、アップルに聞いたところ、今後実装する可能性はあるとのこと。期待しています。

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細かい要望はあるものの、全体的な満足度は高いです。これがアプリが充実してくればさらに高まることでしょう。

実際に、短期間ながら新しいApple TVを触ってみて、感じたことがあります。それは、Apple TVのUIをテレビに表示させているときに、1歳とちょっとになる娘が頻繁にテレビ画面を直接タッチすることです。生まれたときから親のさわっているスマートフォンを見ている彼女は、iOSに似たデザイン哲学で作られたApple TVのUIを見るとテレビ画面もさわれるものと思っているようです。

彼女の姿を見ると、さわることができるテレビのUIというのはとても自然な「望ましい」ことのように思えます。しかし、距離をもって映像を視聴するデバイスであるテレビに直接ふれるというのは実際にはとても面倒くさいものでもあります。そこでアップルが出した答えが、「Touchサーフェス」であり「Siri」であったというわけです。

「ペルソナ」という言葉をつくり、Visual Basicの父としても知られるアラン・クーパー氏によれば、製品イノベーションの余地は「何が現実的か(Viability)」というビジネスの視点、「何ができるか(Feasibility)」というテクノロジーの視点に加え、「何が望ましいか(Desirability)」というユーザーの視点が必要とのこと。

そういう意味で言えば、この新しいApple TVはまさにユーザーにとって「望ましいもの」を体現してくれたと言っていいのではないでしょうか。

source: Apple TV - Apple(日本)

(松葉信彦)