カメラ・オブスキュラを使った美しくも不思議な写真

カメラ・オブスキュラを使った美しくも不思議な写真 1

芸術の秋。

鮮やかな紅葉って淡いトーンの室内に映えるんですね。何とも不思議なこの写真を撮ったのはキューバ出身のアーティストAbelardo Morell氏。彼は1991年ごろからカメラ・オブスキュラという仕組みを使って撮影をしています。

カメラ・オブスキュラとはラテン語で「暗い部屋」という意味で、この仕組みを応用したものにピンホールカメラがあります。古くはアリストテレス、そしてさらに遡れば紀元前5世紀の中国の思想家、墨子の書物にも記述があるほど大昔から知られた現象なんだとか。

カメラ・オブスキュラの作り方はいたって簡単で、ブラインドもしくは壁に光を通過させるための小さな穴を空けるだけ。そうすると、太陽に照らされた庭から日の光が暗い部屋へと通り抜けます。その結果、穴の反対側の壁には上下逆さまのイメージが投影されるわけです。 

ではなぜ投影されたイメージは上下逆さまになのか? 光は物体に当たるとあらゆる方向に散乱しますが、穴を通れるのは1つの方向の光のみです。穴はレンズと同じく点対称の中心になるため、その1つの方向から来た光は穴を中心とした点対称の位置に届きます。その結果、外の景色の下側からの光が反対側の壁の上側に投影されるというわけです。その反対も然り。そうやって、逆さまなイメージの出来上がりです。

カメラ・オブスキュラを使った美しくも不思議な写真 2

このカメラ・オブスキュラを用いてMorell氏が摩訶不思議な「部屋の景色」を作り出すようになったきっかけは1988年にさかのぼります。ボストンで写真学を教えていた、ある晴れた日のことでした。カメラ・オブスキュラを使って教室の外の景色を壁に映し出したところ、生徒たちは驚嘆し、この技術に魅了されたのです。そんなリアクションに彼は手ごたえを感じたのでした。

このときについて、同氏は2011年にナショナルジオグラフィックでこう語っていました。

専門技術に精通している生徒たちが壁に映る景色の虜になったのを見たとき、カメラ・オブスキュラにはとても魅力的な何かがあるとわかったのです。

それからというもの、最初はモノクロで、そして最近はカラーでカメラ・オブスキュラを使った摩訶不思議な作品を生み出しています。以前は投影されたイメージをフィルムに焼き付けるのに8時間以上かかっていましたが、デジタル写真が登場したおかげで何時間もの作業が数分に短縮されるようになったとか。さらに彼は屋上なんかに設置して地面に景色を投影できるような、ポータブルのテント型カメラ・オブスキュラも作ったそうですよ。

Morell氏が自身の作品で使うようになる前から、カメラ・オブスキュラは芸術家たちの創作意欲を刺激していました。写真が発明される以前の時代、画家たちは投影される壁に画用紙を貼り付けて外の景色の下絵を描いていたそうです。

17世紀の科学者ジャンバッティスタ・デッラ・ポルタは、これがドローイングの補助器具になると提案した最初の人物でした。17世紀のオランダの画家ヨハネス・フェルメールが、遠近法絵画を作るのにカメラ・オブスキュラを使っていたという説もあります。

その説の有力な証拠を提供したPhilip Steadmanさんはユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンで建築と都市計画の教鞭をとる教授です。その説を実証するためにフェルメールが少なくとも10枚の絵画を制作したとされる部屋の1/6スケールのモデルを建て、光と影の相互作用を研究しているとか。

最近の芸術家では、ニューヨークで活躍するVera Lutterさんもカメラ・オブスキュラを用いて撮影しています。彼女の代表作は、ロングアイランド沿いに建つ「ペプシ・コーラ」のネオンサインの写真です。撮影場所はイーストリバーの反対岸にあるビルの屋上の真っ暗な小屋。その中の壁に印画紙を掛け、景色が焼きつけられるまで待ってから、マンハッタンのスタジオでその印画紙を現像したのです。

彼女は自身のアートに不可欠なカメラ・オブスキュラについて、ニューヨーカー誌に対し2004年に「このように投影されたイメージを初めて見たとき、神がかっていると思った」と語りました。Morell氏もきっと同じように魅了されたのでしょう。

彼の他の作品を見てみたい方は、この動画やナショナルジオグラフィックのギャラリーで堪能できますよ。同氏のインタビューを観たい方は下の動画をどうぞ。

Jennifer Ouellette - Gizmodo US[原文] 

(たもり)