アマゾンの5000円タブレットで思う「これでいい、いや、これがいい」

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最近、つくづく心にささる雰囲気があります。漫画&ドラマ「孤独のグルメ」の井之頭五郎の食事シーンです。オシャレで高級なレストランで友人とともに着飾って楽しむ時間も一興、しかし、自分1人で自分だけを満たすなりふり構わない食事もまた一興。五郎の言う「俺にはこれでいい、いや、これがいいんだ」が、なんともいい! たまらん! 今回、アマゾンの格安5000円タブレットについて米GizmodoのAguilar記者があれこれ語っているのを見て、まさに五郎が頭に浮かびましたね。Aqullar記者曰く、アマゾンタブレットは「ダメなんだけど、必要なものは全部まかなえる」のだとか。まさに、「これでいい、いや、これがいい」な製品なのです。

アマゾンタブレットの中で最安価機種、Fire。本体価格は8980円なのですが、アマゾン得意のプライム会員価格ならば4980円。Fireは、約5000円の超格安端末なのです。さて、不満はありつつ「これで十分」という結果に至った、Aguilar記者のレビューを見てみましょう。

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タブレットを購入する前に、まず自分自身に「タブレットで何をするつもりか」と問うてほしい。ありがちな質問だけど、しっかりと考えてみるべきだ。その答えが「3D系のアニメーション制作やら、グラフィックばりばりのゲームやる」というのなら、かなりのヘビーユーザー。安価機種ではなく、トップラインであるiPad Proを検討すべきだろう。しかし、誰もがこう答えるわけじゃない。多くの人は、スマートフォンよりもちょっと大きい端末が必要、欲しいという話。鞄にいれて持ち運べる、コーヒー飲みつつちょいちょい使える、移動中に飛行機なんかで映画を見ることができる、そんなディスプレイが欲しいという人が大半ではないだろうか。

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ここ数週間、アマゾンの安価タブレット、50ドルのFireを使ってみた。マイナス点はあれこれ、少なくない数ある。あるんだけど、このタブレットで事足りてしまうのだ。必要なことは十分できてしまう。昨年、アマゾンは100ドル(1万1800円)のFire HD 6のリリースで、超安価タブレットというアイディアを打ち出した。が、50ドルのFireでそのアイディアをさらに押し出した形。正直、僕がGizmodo.comで見てきたなかで最も簡素で無骨なガジェットだと思う。

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まずは簡単にスペックを。1024x600の7インチディスプレイ。サブHDクラス。比較として、iPad Mini 4(7.9インチ)は、(価格も5倍だけど)この5倍のピクセル量だ。本音で言うと、美しいスクリーンとは言えない。色もちょっとニブい感じ。

ボディはプラスティック。だけど悪くない。使っている途中、タイル張りの床に端末を落としてしまったが、無事だった。安いわりに頑丈なやつだと思う。端末周りのベゼルが大きくて不格好とも言えるが、僕は気にならなかった。というか、むしろけっこう好き。理由は握りやすいから。片手でも持ちやすい。黒い太枠フレームのおかげでコンテンツに集中しやすいくらい。このコンテンツに集中しやすいというのがミソで、このタブレットはまさに映画なり動画なりを見ることに特化させたい端末なのだ。まぁ、そもそもその他のことはあまりできないので…。

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アマゾンの端末を持っているとアマゾンにとらわれてる感じがすると指摘する人がいるが、それは正しい。アマゾン端末は、アマゾンサービスへのポータルという位置づけであり、AndroidベースのFire OSは、アマゾンショッピングモールのようなものだからだ。ロック画面、ホーム画面、アプリ内でも広告が入り、どんな隙も逃さずにモノを売ろうとしてくる。

とは言え、僕のようなアマゾンヘビーユーザーに限ったことだが、これは大した問題ではない。すでに有料プライム会員となった僕が、アマゾンのサービス、安さを最大限享受するためだと思えばやり過ごせる。プライムコンテンツをダウンロードしてオフライン視聴もできるしね。内蔵スピーカーはまったくダメなのでイヤフォンは必須だけど。

さて、最初の質問に戻ろう。この端末で何をしたいのか? 僕の場合は読書だ。端末を使うほとんどの時間は読書にあてられている。その用途で言えば、Fireは十二分な端末。Kindle Paperwhiteほど読書に特化されているわけではないから、何時間も読んでいると目が疲れる。が、Fireはこの電子リーダーより70ドルも安いことを忘れてはいけない。最も安価で基本のKindleよりも30ドル安いのだ。(プライム会員価格だと、FireとKindleは同じ価格)

バッテリーの保ちもそこそこ。2、3日に1度の充電で事足りる。ただ、動画をたくさん見るのならば、毎日充電が必須だろう。チャージャーを持ち歩く必要もあるかもしれない。

Fireを使っていて最大の難点が発生するのは、仕事をしようとする時。パフォーマンスにラグがうまれる。ネットブラウジングのような簡単な動作ですら遅い。かなりダメダメ。もっと言うと、動画や本と言ったメディアを楽しむ以外は、何をしててもスムーズとも、簡単にできるとも言い難い。AndroidのGoogle Play Storeのようなものも存在しない。

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Fireタブレットに対して期待するなというのはいいアドバイスだと思う。問題なく動くが、それは50ドルタブレットとしてはという話。使い捨てタブレットと言ってもいいくらいだろう。アマゾン自身も、Fireに対してそう思っているのではと思う。5台購入で1台無料なんてキャンペーンがあるくらいだから、壊れたら次のやつ使ってーってなもんだ。だから安いし、だからそれだけの働きしかしない

アマゾンはタブレットの在り方について考えがあるのだろうと思う。新たな在り方の先駆者になろうとしているのだろう。タブレット端末は高すぎると思う。パソコンやスマートフォンにお金をかけるのはわかる。毎日何かにがっつり使うツールだからだ。しかし、タブレットは違う。毎日は使わないちょちょっと使う、いわばエクストラ、余分な端末だからだ。少なくとも僕は、そのエクストラに500ドル払いたくはない。200ドルもちょっとためらってしまう。だから思うのだ。タブレットの未来は、何も高価なモデルばかりではないだろうと。お店のレジ横にあるような、気軽に買える存在があってもいいだろうと。

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アマゾンが安価タブレットで狙うのは、まさにタブレット界の井之頭五郎! オシャレな店じゃなくていい、1人でいい、ただ美味い飯で腹が満たされればいい。五郎のその精神がそのままタブレット界にあるのです。ただ読書できればいい、ただ動画を見れたらいいのです。

Aqullar記者のレビューを見て、納得同調する点が多くありました。なぜなら、私自身が(Fireではないですが)Kindleユーザーだからです。美容院なんかでKindleを使っていると、必ず聞かれるのが「映画も見られるんですか?」という質問。それに対して、「見られませんよ。動画以前に、そもそも白黒画面ですから」と答えると、微妙な顔をされます。たぶん彼らは「このご時世に白黒? 動画なしって。そんならスマホの方が100倍いいじゃん」と思っているのでしょう。いや、読書に特化した端末だからこそ、これでいい、いや、これがいいのです。さらに、Paperwhiteに興味ありつつも、買換えないのも同じ精神が働いているからだと思います。安いこいつで事足りてるんだよなーっと。これでいい、いや、これがいい、この精神が新しいタブレット市場に選択肢の1つとしてあるのは、私は嬉しいですけどね。

image: by Michael Hession

Mario Aguilar - Gizmodo US[原文

(そうこ)