抗酸化物質サプリ、がん治療への効果を疑問視する研究発表

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がんの特効薬誕生への道のりは長い……。

「抗酸化物質」「抗酸化剤」という言葉をご存じでしょうか? 食事やサプリメントで抗酸化物質を摂取することが、がんの予防につながるとの意見から、いま欧米などでは人気が高まりつつあるそうです。

これはウソでもなんでもなく、抗酸化物質を摂取すると、物質を酸化する「フリーラジカル」の作用を弱める効果が検証されています。フリーラジカル作用は、細胞内でDNAの損傷や破壊につながるので、抗酸化物質でフリーラジカルを除去できれば、がんの予防になるとの考え方が一般的のようですね。

とはいえ、このほど英国ロンドンのKing’s CollegeにあるTumour Plasticity Labで進められた研究を通して、あらゆるがん治療や予防に抗酸化物質が好影響をもたらすのかという疑問に対して、否定的な結果を示す調査データが明らかになりましたよ。

皮膚がんの進行とフリーラジカル

フリーラジカルの減弱効果があるとされる抗酸化物質ですけど、Tumour Plasticity Labでは、フリーラジカルが人体に及ぼす良い影響についての研究が進められたそうです。

単純に考えると、病原体を攻撃する免疫系の働きにも、フリーラジカル作用は欠かせないものがあるでしょう。つまり、フリーラジカルを体内から除去しようとすれば、逆に健康を阻害してしまう悪影響だってあるのでは?

Tumour Plasticity Labの研究チームは、2008年に黒色腫(メラノーマ)細胞の形成や増殖に関する調査論文を発表。メラノーマ細胞は、分子ファミリーのなかでも「RAC」「Rho」という2種類の相反する構成の比率で形を変えていくことが明らかにされました。

同研究によれば、もしもメラノーマ細胞内のRACが多くなり、Rhoが少なくなると、細長く紡錘形に細胞が形作られていきます。逆に、もしRACが少なくなり、Rhoが増えると、メラノーマ細胞は球状に変化していき、体内での移動が容易になることから、皮膚がんの進行速度がアップしていくそうです。

このほどNational Cancer Instituteの研究ジャーナルに掲載された論文によると、Tumour Plasticity Labの研究チームは、メラノーマ細胞内のRACとRhoの構成にフリーラジカル作用が与える影響を調査。研究所内でメラノーマ細胞を培養し、抗酸化物質を投与してみました。すると、メラノーマ細胞は球状への変化を強め、がんの進行速度を高めかねないことが判明しています!

一方、Rhoを弱め、RACを増産させる効果のある薬物を投与したところ、メラノーマ細胞内のフリーラジカルが増えて、細胞は細長い紡錘形に変化。球形状とは異なり、皮膚がんの進行速度を遅らせることに貢献する作用が確認されました。つまり、この研究に関しては、フリーラジカル作用プラスに働いていることが実証されたというわけですね。

また、フリーラジカルが増加すると、がん予防効果がある「p53」遺伝子や、DNAの修復を助ける「PIG3」遺伝子の活性化につながることも発見されたそうです。PIG3には、Rhoを弱める効果があり、皮膚がんの進行を遅らせることにつながりました。皮膚がんの腫瘍をもつネズミでの研究ですが、フリーラジカルが増加してPIG3の存在が高まると、腫瘍の成長速度は遅くなり、がんの進行スピードも落ちたことが明らかにされています。

抗酸化物質はがん治療に役立つのか?

Tumour Plasticity Labの研究チームは、あくまでも研究所内のテスト結果に基づくデータの発表であり、Rhoを弱める効果がある薬物を用いると、どこまで本当に皮膚がんの進行を遅らせることができるのかは、今後の臨床試験を待たねばならないとの見解を出しています。とはいえ、すでにPIG3の値が低い患者は、メラノーマ細胞が球状になる確率が高く、皮膚がんの進行が速まることはわかっているようです。

結論として、健康な人への影響は定かでないものの、すでに皮膚がんを患っている人が、抗酸化剤のサプリメントなどを摂取し、フリーラジカルの作用を減弱させようとすれば、かえって皮膚がんの進行を速めてしまう危険性に警鐘が鳴らされていますよ。逆に、フリーラジカル作用を加速させる薬物を使用したほうが、PIG3の値が高まり、皮膚がんの進行を遅らせることができる可能性が指摘されました。

良い作用をもたらすフリーラジカルの働きを強め、悪い作用をするフリーラジカルを除去できるような物質はないだろうか? 同研究チームは、この課題を解決すべく、引き続き研究を進めていますよ。

Victoria Sanz - Gizmodo US[原文

(湯木進悟)