たまには手作りのお弁当にしません?

2015.11.20 11:00
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なんだかお弁当が食べたくなりました。

6組のクリエイターが映像を公開してそれぞれの人気を競うという企画「ゼロ動」の中で発表された映像の1つ、「HANDMADE HOMETOWN」を見たからなんです。

SEIYUの「プライスロック」というテーマ以外は全くの制約なし、というこのプロジェクト、ドキュメンタリズムにこだわったというのは、1-10HOLDINGSのクリエイティブディレクター富永省吾さんと、プランナーの綿野賢さん。

6人の男女が10年ぶりに実家のお母さんの手作りお弁当を食べ、過去の記憶と再会するという内容で、美しい映像とともに“ガチ”で、ドキュメンタリーとして綴られていきます。なんでドキュメンタリーなんでしょうか? ギズモードは今回、そこに注目しました。

世界最大級とも言われる「カンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバル」の一環として行われた “LIONS Health”でブロンズ賞を受賞するなど、国内外の広告界が注目する気鋭のお2人に、“なんの制約もなし”という依頼にどのように向き合っていったのか、お話を伺いました。


"エラー"を意図的に生んだ


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綿野賢さん(写真左)と富永省吾さん(同右)



ギズモード 最初のオリエンテーションは、どういったものだったんでしょうか?

富永さん 表現するにあたり、言葉なり思想なり何でもいいので訴求してくれ、と。

綿野さん 公序良俗に反するとかはNGだけれども、基本はお任せします、というオリエン内容でした。

ギズモード じゃあ、何をやってもいい?

富永さん そうですね。“どう訴求するか?”というのは任されている状況でスタートしました。

ギズモード そのオリエン後に、2人でどんなことを話されたんでしょうか?

綿野さん 最初に“やらないこと”を考えました。そもそもSEIYUさん本来のイメージも結構あるじゃないですか? そういうのも鑑みつつ、どういう企画はダメか?という判断軸を最初に設定していきました。

富永さん 通常の仕事でもやらないことから決めたりはしますね。

ギズモード ちなみにそのとき決めた“やらないこと”ってどんなことでしょうか?

富永さん この形式自体が、ショーケース的な要素が多分にある企画だと思ったので、従来の訴求方法……そういうことをまんまやっても意味がないと思ったんです。SEIYUという人格は既に培われているので、そのSEIYUがどういう一面を見せたら、良いアテンションになるのか?と考えました。従来のコミュニケーションの一環でお願いしますというのであれば、もちろんそこのブランドマネージメントをしつつ、アウトプットを選ぶんですが、今回はそういう立ち位置のものではないので、そこを逆に利用してというか……。

綿野さん 意図的にそれを選択した感じですかね。ギャグものをやってもしょうがないだろうと。僕らがこの企画をやる意味は、という状況分析から入りました。

富永さん 普段のお仕事でこの話が来ていたらまた違いましたけど、今回に関しては、“まんまのこと”をやっては意味がないし、恐らく違うものを求めてるから、広めにオリエンテーションしていたんでしょうね。今までのSEIYUの類型的な表現は求めてないという。

綿野さん SEIYUが築き上げてきたものの流れに乗っかるものではなく、 “エラー”でありたいと思ったんです。

富永さん エラーを意図的に生んだというのが、分かりやすいかな。


“ザCM”というトーンにはしたくなかった


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ギズモード 100本のアイディアの中で20本に絞ったそうですね?

富永さん 僕らとしては明確に100本というのはなくて(笑)。プレゼンテーションのときに僕らがどういう思考回路でストラテジー、ロジックを組んでいるのか、みたいなものをお見せして共有するために、こんなものを考えているんです、というのを複数お見せしただけです。そういう意味ではいつもの仕事と変わらない感じですね。

綿野さん 提案に値するであろう企画を複数用意しつつも、推し案というか、これでいきたいです、というプレゼンをしました。

富永さん 最後まで悩んだ企画を挙げるとすれば、よりバイラル性に振り切ったもので、再生数をすごく稼ぎそうなプラン。バイラル性とメッセージングの優先順位は少し悩みましたね。

ギズモード ほかの作品も一通りご覧になっていると思いますが?

富永さん すべての作品に関して、予想以上に絵作りのクラフトがしっかりしているなという印象を持ちましたね。

綿野さん 他の作品はフィクションが中心でしたね。僕らはまずノンフィクションであることが重要だと考えていました。


富永さん あと、皆さんお金かかってんなーと思いました(笑)。

ギズモード 「HANDOMADE HOMETOWN」は映画監督を起用していますね?

富永さん CMの仕事もされている方なんですが、前に仕事をしたことがあって、そのときの画がとてもキレイだった。それに“ザCM”というトーンにはしたくなかったので、企画と映像の構成は僕ら中心で考えつつ、画作りは監督中心にお願いする、そういう感じでした。“ザCM”になってしまうとプッシュ感が出てしまうので、よりコンテンツらしい画作りのためにその方を起用したんです。


“記憶との再会”がテーマ


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ギズモード 実際にお弁当を作っていただいているわけですが、何かリクエストはありましたか?

富永さん 撮影だからって気合いを入れないようにと(笑)。残り物を入れていたのであれば、包み隠さず残り物を入れてほしい、特別豪華にしないでくださいというリクエストですね。

綿野さん 当時の感じを出さないといけないですから。

富永さん “記憶との再会”なので、その素材はより精度が高い必要がある。

ギズモード キャストは登場される方が全員ですか?

綿野さん そうです。

ギズモード では、皆さん、きちんと当てられたわけですね?

富永さん そうですね。

ギズモード 当てられない可能性もあったわけですよね?

綿野さん もちろん、そうですね。ドキドキしながら撮影してました。

富永さん 予想以上にお弁当の見た目が似ちゃっていて、“これ、みんな当てられるのかな?”と正直不安でしたね。ただ、みんな当てるんですよ、没個性的なお弁当でさえ。ビックリしましたね。味とか組み合わせとか、いろいろな要素があると思うんですけど。

綿野さん みんなすごく緊張していましたね、当てられるかどうか分からないから。出演者もドキドキしていて。

富永さん モニター見ながら“当てた〜!”って騒いだりして(笑)。5分くらい悩んでいる人もいましたしね。みんな最初は分からない、当てられないって言っているんですけど、結局食べたら…… “記憶の再会”が起こって、そこにスペクタクルがありましたね。


お弁当=プライスロックが持つ価値


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ギズモード 皆さん10年ぶりくらいに食べたわけですよね?

綿野さん それこそ高校生の時に食べてたとかですね。

富永さん 最後の人は緊張してたよね(笑)。前の5人が当てたっていう情報が入ってたから。

ギズモード この作品は、ほかにも何本も見たくなります。

富永さん この映像の特殊なところは、ターゲットが複数あることなんです。お弁当を作っている人はもちろん、作ってもらっていた人も……それぞれの感想があるのが興味深い。

綿野さん 事前にさまざまな人に「お弁当を当てられると思うか」と意見を聞いたら「どうだろうな〜?」という意見が大半だったんです。

ギズモード 各国版があっても面白そうですね。

綿野さん そうですね。確かに。

富永さん 予算があれば……(笑)。

綿野さん お弁当文化が普及してきているんですよね。だからこの映像がより響く状況にはなっているのかなと思います。


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ギズモード 最後に、今回の映像にどんなメッセージを込めましたか?

富永さん プライスロックの持つ日常性継続性に価値を感じてもらうと同時に、コアターゲットである主婦層をエンパワーメントできればいいなと思っていました。日々台所に立つことにより生まれる潜在的な価値をディスカバーできればと。それが「手料理は、もうひとつの故郷になる。」というメッセージです。形を持たないふるさとを作っているんだと。この動画が公開されてから、日本のお弁当のうち何個かはいつもより丁寧に作られているはず。

綿野さん 作る人からするとお弁当は、毎日用意しないといけなかったり、体調が悪くても作らないといけないし...といったネガティブな側面も存在すると思います。でも今回、継続性がもたらす副次的な価値の存在が証明されたので、日々作り続けているお弁当は相手の記憶にしっかりと刻まれているということに、作っている人が誇り喜びを感じてもらえれば嬉しいです。

富永さん SNSでのリアクション率が高いのもそのせいかなと思います。“私は今、将来思い出してもらえる弁当を作れているのか”とかね。

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コンテンツを作るためにやめたこと……

SEIYUは広告なのに、クリエイターの感性にすべてを委ね、細かい意図の伝達や制約の反映をやめました。

一方1-10のお2人は意図的に既存のコミュニケーションをやめました。

お弁当を通じて記憶との再会をする人たち……「HANDMADE HOMETOWN」を見ていると、目頭が熱くなる瞬間があります。自分なら当てられるだろうか? そんなことも考えてしまいました。6人が自分ちのお弁当を当て、歓喜する姿をご覧ください。




source: ゼロ動

(ホシデトモタカ)

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