加工肉の発がん性リスク、どこまで気をつければ良いの?

加工肉の発がん性リスク、どこまで気をつければ良いの? 1

世間の肉食系をドキッとさせたであろうこのニュース、やっぱり心配"しすぎる"必要はなさそうです。

WHOの国際がん研究機関(IARC)の専門研究グループによって発表された、加工肉および赤身肉と発がん性リスクとの関連について。日本人の平均的な消費量からすると影響が小さいとも言われていますが、個人的に漠然とした不安を感じている人もいるのでは。

ホットドッグ、ソーセージ、ベーコンなど、Group1と分類される加工肉は「人に対して発がん性がある」とされ、主に大腸がんの発症リスクが指摘されました。また牛、豚、羊肉などの赤身肉はGroup2と分類され、「おそらく人に対して発がん性がある」と、同機関によって判定されています。

今回の研究結果が大きく報じられたことで、世界中で様々なリアクションが巻き起こるなか、米ワシントンポスト紙では、主要機関がアグレッシブに発表したのは珍しいことだと言及されるほか、専門家たちのあいだでは、研究結果について誇張すべきでないことや、赤身肉や加工肉を早急に排除する必要もないと主張する声も。

では結局、消費者である私たちは日々の食事でどんなことをどう気をつければ良いのでしょうか...?

研究の事実背景

時は、2014年。国際諮問委員会は、国際がん研究機関(IARC)に対して、加工肉および赤身肉の消費に関わる影響について、がん研究における優先度の高い研究領域だと位置づけました。

以前から、一部の肉製品とがんの発症に関連があることは知られていて、Lancet誌の最新レポートのほか、4年前には「ホットドッグはタバコと同じくらい発がん性がある?」と記事になっていることからも、新たな研究による新たな大発見ではないということがわかります。

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Credit: PDPhoto.org/public domain

今回、発がん性リスクを判定したのは、10か国から集まった22人の専門家たち。その背景では、どのような研究が行なわれていたのでしょうか。

そもそも加工肉とは、本来の肉が形質転換され、風味の改善や賞味期限の延長のため加塩もしくは発酵、スモークされたもの。加工肉の消費が腸がんや大腸がんの原因となり得る可能性を指摘するうえで"十分な証拠"を有しているため、発がん性が指摘されるGroup1に分類されています。

胃癌や膵臓がんのように、特定の赤身肉によって"おそらく"起こり得る発がん性リスクは、Group1と比べてその証拠が掴みづらかったようです。そのためGroup2の人間への影響は、"限られた証拠"をベースに論じられました。

ワシントンポスト紙では次のように指摘されています。

がんの原因が食べ物に起因するかどうか見極める実験は、長年にわたって何千もの数の被験者の食事をコントロールする必要があるため困難なものだ。例えば、あるグループは大量の肉を、他のグループは一切肉を食べないように指示するなどといったことは不可能だ。そのような実験はコスト上、また被験者を確保する問題上、滅多に行なわれていない。結果を求める科学者たちは多くの場合、疫学や観察研究など、さほど直接的でない手法を代用している。

また米がん治療センターTisch Cancer Institute at the Mount Sinai School of Medicineで教授を務めるPaolo Boffetta氏は、「今回の研究では、強力な実験データが用いられていないことから、人々が懐疑的になるのは理解できます」と述べたうえで国際がん研究機関の研究結果がきわめて疫学的な証拠が強いものだとコメント。

疫学研究を批判する科学者たちは、疫学は偽陽性(false positives)すなわち誤った判定を導きやすいことを指摘しています。

"発がん性リスク"を紐解く

国際がん研究機関のKurt Straif部長は、「個々人にとって、加工肉の消費が発がん性のリスクに繋がる影響は小さくとどまる。しかし、消費量によってそのリスクは高まる一方だ。世界中に多くの加工肉消費者がいるという点で、公衆衛生上、がん発症は重要な国際問題だ」とコメントしています。

今回、同機関が発表した研究結果によると、50グラムほどの加工肉を毎日食べると大腸がん発症率は最大18%に、赤身肉100グラムの場合は17%ほど高まる可能性があると指摘されています。

がんの原因として喫煙アスベストと同格のGroup1に分類された加工肉。とはいえ背景にあるのは科学的根拠の強さであって、喫煙も加工肉も同じレベルで発がん性があるとは限らず、むしろ大いに異なるといわれます。

最近の調査では、がんによって死亡した世界中の3万4000人/年の人々が、多くの加工肉を消費していたと示されました。赤身肉の場合は世界中で5万人。ただし、赤身肉については明確な論拠が無いため、正確な解を導くことが未だできていません。対して、喫煙が原因で死亡した人は世界中で約100万人、アルコールについては60万人だといわれています。

なぜ特定の肉によってがんが発症するのか、国際がん研究機関は次のように説明します。

肉には、ヘム鉄など多様な栄養素が含まれています。基本的に、肉が化学物質を含み得るのは、加工や調理の段階。例えば、食肉加工中に形成される発がん性化学物質は、ニトロソ化合物や多環芳香族炭化水素とよばれるもの。加工肉や赤身肉を調理する際は、複素環芳香族アミンなどの化学物質を生み出す可能性があります。とはいえこの物質は他の食品にも含まれるほか、大気汚染でも確認されています。

いくつかの化学物質は、発がん性物質であることが疑われていますが、こうしたナレッジは蓄積されているにも関わらず、加工肉や赤身肉によって発がん性リスクがどのように高まるのか、といった点はまだ十分に理解されていません。

結局、どの程度の肉消費が安全?

では日々の食習慣については、改善や調整する必要があるのでしょうか。

リスクの一方で、赤身肉には栄養価があることを認める国際がん研究機関所長のChristopher Wild氏。「より少なく、より良い肉」の消費が良いと述べるミネソタ大学の物理学者David Wallinga氏は次のようにコメントしています。

肉の消費量によって発がん性リスクは高まる。赤身肉、そして特に加工肉の消費量について警鐘を鳴らすうえで、これ以上タイミングを遅らせるのは賢明ではなかったはずだ。WHOが推奨することは、野菜や全粒穀物をより多く摂取し、赤身肉や加工肉の消費を減らすこと。なぜなら食物繊維の摂取は、がんの予防に繋がるのだから。

たしかに健康を志すうえで、大量に、そして頻繁に赤身肉や加工肉を消費するのはおそらく最善ではありません。その一方で、肉はタンパク質、鉄分、そして亜鉛を多く含む食品であることも事実。当然ながら、良識ある食事が健康に繋がるのだと英NPO法人Cancer ResearchのCasey Dunlop氏は述べています。

ちなみに米政府は、1日90グラム以上の赤身肉あるいは加工肉を消費する人は70グラム以下にするよう推奨しているようです。こうした数字がどれくらいの肉量に当たるのか、気になる方は以下に示されている摂取目安量が分かりやすいです。

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Credit: Cancer Research UK

日本人は欧米と比べてそんなに肉を食べない、ともいわれますが、それもあくまで平均的な話。個人的に肉肉しい食生活に心当たりがあるという方々は、その質と量を気をつけるに越したことはなさそうです。毎日、がっつり赤身肉!という日々が続いたら、たまには鶏肉や魚を代用したり、野菜や果物、多くの食物繊維を摂ることを日々の習慣のなかに意識的に取り入れてみたり...結局、昔から耳タコな食習慣に原点回帰するのが良さそうです。

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source: Washington Post, NRDC Switchboard, Cancer Research UK

George Dvorsky - Gizmodo US[原文

(Rina Fukazu)